「中古マンションの火災保険相場はいくら?」「築古だと保険料は高い?」
火災保険は、火災や自然災害から住まいを守るための保険です。中古マンションを購入する際、火災保険の相場が気になる方も多いでしょう。特に築年数が古いと「保険料が高くなるのでは?」と不安に思うかもしれません。
しかし築古だからといって、必ずしも火災保険料が高くなる訳ではありません。保険料は築年数だけでなく、所在地や建物の構造、補償内容などで決まります。選び方次第では、保険料を抑えることも可能です。
本記事では、マンションの火災保険相場や保険料の決まり方、金額を抑える方法を解説します。正しい知識を身につけ、最適な火災保険を選びましょう。

宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
大学卒業後、金融機関、生命保険会社での勤務を経て、不動産賃貸会社で20年以上勤務している。また、ライターとしても活動しており、特に不動産・相続・法律(離婚関係)・債務整理に関するテーマを得意とする。不動産や相続分野での実務経験を活かし、専門性と一般の方にも分かりやすい情報提供を心がけている。
本記事の内容は2025年4月15日時点の情報に基づいており、不動産市場の状況や関連法規、税制などは将来変更される可能性があります。最新の情報については、公式の情報源をご確認ください。
マンションに住む場合は火災保険への加入は必須?
火災保険は、火災や自然災害による損害を補償する保険です。
法律で加入が義務づけられている訳ではありませんが、住宅ローンを利用する場合、多くの金融機関が火災保険の加入を融資の条件としています。どんなに自分が気をつけていてももらい火のリスクはあるため、万が一に備え加入を検討しましょう。
ここでは、火災保険の加入が必要なケースと、補償内容について解説します。
住宅ローンを利用する場合は必須
住宅ローンを利用する場合、担保となる不動産の価値を火災や災害から守るために、多くの金融機関が火災保険の加入を求めています。一方、現金で購入する場合は、火災保険の加入は任意です。しかし火災や自然災害のリスクを考慮すると、加入しておいた方が安心でしょう。

なおマンション管理組合が加入している火災保険は、共用部分のみが対象です。ですから、居室(専有部分)は個別に火災保険へ加入する必要があります。
火災保険で補償される内容
火災保険は、火災・風災・水災・水漏れ・盗難・破損などの損害を補償する保険です。補償対象は「建物(専有部分)」と「家財」にわかれます。火災以外の補償や家財補償の選択は任意です。さらに、個人賠償責任保険を付帯すると、火災や水漏れなどによる第三者への損害賠償もカバーできます。
特にマンションでは、もらい火による損害に備えることも必要です。「失火責任法」では、火元に重大な過失がなければ損害賠償を請求できません。つまり、隣室や上下階の火災で被害を受けても、補償を受けられない可能性があります。
また、直接火災の被害にあわなくても、消火活動によって水濡れ被害が発生する場合もあります。こうしたリスクに備えるためには、火災保険の加入が有効です。



なお、地震による火災や建物の損壊は、火災保険では補償されません。補償を受けるには、火災保険とセットで地震保険に加入する必要があります。地震リスクが高いとされる地域では、地震保険を付帯しておくと安心です。
参考:フラット35「【フラット35】ご利用条件:長期固定金利住宅ローン」
参考:住宅金融支援機構「火災保険・地震保険のご案内」
参考:e-Gov法令検索「明治三十二年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)」
参考:財務省「地震保険制度の概要」
マンションの火災保険料相場シミュレーション
マンションの火災保険料は、築年数や所在地、保険会社などによって違います。以下の基本条件に対して、これらの要因がどれくらい保険料に影響するのかについてまとめ、解説します。
基本条件(i保険でシミュレーション)
建物構造 | マンション(M構造) |
---|---|
建物保険金額 | 1,000万円(地震保険500万円) |
家財保険金額 | 500万円 |
契約期間 | 5年 |
建物構造や保険金額、契約期間については、基本条件をもとに試算した数字です。
築年数別の火災保険料相場
築年数が増すと、建物の老朽化や設備の劣化によって火災や水漏れなどのリスクが高まり、保険料が高くなる傾向にあります。今回のシミュレーションでは、築20年以降は保険料の上昇幅が小さくなる傾向が見られます。
築年数が経過しても、必ずしも保険料が高くなる訳ではありません。
築年数 | 火災・風災 | 火災・風災・水漏れ・盗難など | 火災・風災・水災・水漏れ・盗難など・汚損・破損 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
地震保険なし | 地震保険あり | 地震保険なし | 地震保険あり | 地震保険なし | 地震保険あり | |
築5年 | 19,700円 | 106,930円 | 28,650円 | 115,880円 | 66,450円 | 153,680円 |
築20年 | 22,000円 | 109,230円 | 43,050円 | 130,280円 | 80,850円 | 168,080円 |
築30年 | 23,000円 | 110,230円 | 47,250円 | 134,480円 | 85,050円 | 172,280円 |
築35年 | 23,000円 | 110,230円 | 47,250円 | 134,480円 | 85,050円 | 172,280円 |
※東京都新宿区 日新火災で算出
エリア別の火災保険料の相場
保険料は、地域ごとの自然災害リスクによっても違います。例えば、沖縄は台風による強風や豪雨の影響を受けやすいので、保険料が高く設定されています。
また、東京は首都直下型地震のリスクが考慮されているので、地震保険料が割高です。
エリア | 火災・風災 | 火災・風災・水漏れ・盗難など | 火災・風災・水災・水漏れ・盗難など・汚損・破損 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
地震保険なし | 地震保険あり | 地震保険なし | 地震保険あり | 地震保険なし | 地震保険あり | |
宮城 | 19,400円 | 56,230円 | 42,250円 | 79,080円 | 58,570円 | 116,880円 |
東京 | 23,000円 | 110,230円 | 47,250円 | 134,480円 | 85,050円 | 172,280円 |
大阪 | 24,000円 | 60,830円 | 47,450円 | 84,280円 | 86,650円 | 123,480円 |
沖縄 | 30,700円 | 67,530円 | 57,050円 | 93,880円 | 96,150円 | 132,980円 |
※日新火災 築35年で算出
主要保険会社4社の火災保険料比較
同じ補償内容だとしても、保険会社によって保険料が違います。これは、各社のリスク評価や契約条件が異なるためです。
免責金額や特約の有無でも保険料が変わるため、契約前には複数の保険会社を比較する方が賢明でしょう。
保険会社 | 5年契約 | |
---|---|---|
地震保険なし | 地震保険あり | |
東京海上日動 | 60,880円 | 148,110円 |
日新火災 | 85,050円 | 172,280円 |
セコム損害保険 | 67,540円 | 154,770円 |
損保ジャパン | 78,460円 | 165,690円 |
※東京都新宿区 築35年 マンション(分譲) 補償内容:火災・風災・水災・水漏れ・盗難など・汚損・破損 で算出
参考:i保険「火災保険料シミュレーション」
参考:内閣府「特集 首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」
参考:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」
火災保険料は何で決まるのか
火災保険料は、実際のリスクに基づく「純保険料」と、保険会社の運営費や利益を含む「付加保険料」の2つで構成され、各保険会社によって計算方法が異なります。
保険料を決める主な要因は、次の3つです。
- 所在地
- 建物の構造
- 補償内容
これらのポイントについて、解説します。
所在地
自然災害のリスクが高い地域程、火災保険料は高くなります。例えば、台風が多い九州や沖縄では、保険料が高めです。また、洪水や土砂災害のリスクが高い地域では、水災補償を追加すると保険料が高くなります。



ハザードマップでリスクを確認し、保険料が高くなっても補償を追加する必要があるのかどうか、検討してから補償を設定しましょう。
建物の構造
耐火性能が高い建物程火災リスクが低くなるため、火災保険料は安くなります。火災保険の保険料は、建物の構造に応じて以下の3つに区分されます。
構造区分 | 特徴 | 保険料の傾向 |
---|---|---|
M構造 | 鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)。耐火性が高い。 | 安い |
T構造 | 鉄骨造(S造)・準耐火建築物。一定の耐火性がある。 | 中程度 |
H構造 | 木造(W造)、非耐火建築物。耐火性が低い。 | 高い |



建物の構造は、登記簿謄本や不動産パンフレットなどで確認できます。
補償内容
火災保険は、火災補償に加え、水災、盗難、不測かつ突発的な事故などの補償を追加すると、保険料が高くなります。家財補償の保険料も、補償額や対象範囲によって保険料に違いが出ます。
つまり、補償や特約を減らせば、保険料を抑えることが可能です。しかし必要な補償が不足すると、損害が発生した時に補償を受けられない可能性があるため、注意が必要です。



補償を選ぶ際は、建物の立地やリスクを考慮し、適切なものを選びましょう。
参考:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」
参考:東京海上日動火災保険「構造級別 | トータルアシスト住まいの保険(火災保険)」
火災保険の保険料を安く抑える方法
火災保険料を抑えるには、次の3つの方法があります。
- 保険会社を比較し最適なプランを選ぶ
- 不要な補償を見直し保険料を抑える
- 長期契約の割引を活用し負担を軽減する
それぞれ、詳しく解説します。
保険会社を比較し最適なプランを選ぶ
火災保険料は、保険会社ごとに算出方法が異なります。同じ補償内容でも保険料に差があるため、中古マンションを購入する際は、複数の保険会社の見積もりを比較することが大切です。
耐震補強が施されたマンションでは、補強内容や必要な証明書類が適用基準を満たせば、地震保険の割引を受けられる場合があります。割引制度は全国共通ですが、必要な証明書類の取り扱いや審査基準は保険会社によって異なります。そのため、より有利な条件で契約できるよう、複数の保険会社の見積もりを比較することが重要です。また、ダイレクト型火災保険なら、代理店を通さず申し込めるため、中間コストを削減できます。保険料が安くなるケースもあるので確認してみましょう。



築古物件だからといって、過剰な補償を付ける必要はありません。見積もりを比較し、想定するリスクに応じた適切な補償を選びましょう。
不要な補償を見直し保険料を抑える
不要な補償内容を見直せば、保険料を抑えられます。例えば河川から離れた立地や高層階のマンションは、水災リスクが低く、水災補償が不要な場合があります。ハザードマップを活用し、補償が必要かどうかを判断しましょう。
また防犯設備が整ったマンションでは、盗難リスクが低いため、盗難補償を外せる可能性もあります。家財補償も家具や家電の価値を考慮し、適切な補償額を設定すれば、保険料を抑えられるかもしれません。



保険料を低く抑えたいのであれば、複数の補償がセットになっているパッケージ型ではなく、必要な補償だけを選べるカスタマイズ型の火災保険を選ぶのがおすすめです。
長期契約の割引を活用し負担を軽減する
火災保険は、長期契約すると割引が適用され、契約期間全体の保険料負担を軽減できます。特に5年契約は、1年ごとの更新よりも保険料総額を抑えられます。
また、支払い方法によっても保険料が異なり、月払いより年払い、年払いより一括払いの方が割安になるのが一般的です。保険料をできるだけ抑えたい場合は、一括払いを検討すると良いでしょう。ただし一括払いは、契約時にまとまった費用を支払う必要があります。また、途中で解約すると返戻金が少なくなるケースもあるため注意が必要です。



長期契約の割引を活用し、自分に合った契約方法を選びましょう。
参考:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」
参考:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況」
参考:財務省「地震保険制度の概要」
参考:国土交通省「ハザードマップ」
まとめ
本記事では、中古マンションの火災保険相場や保険料の決まり方、金額を抑える方法について解説しました。
火災保険料は築年数やエリア、保険会社などによって異なります。火災保険料は、築古マンションだからといって必ずしも高くなる訳ではありません。適切な補償内容を選べば、無駄のない契約が可能です。
築古マンションは、今や一般的な選択肢です。築年数だけにとらわれず、補償内容やコストのバランスを考慮し、自分に合った火災保険を選びましょう。