せっかく自分の好みに合ったマンションを見つけても、住宅ローン審査に通過できず購入できない場合があります。住宅ローンの細かい審査基準は金融機関によって異なります。銀行の数だけ審査の基準がある、といっても過言ではありません。しかし、重視されるポイントには共通点があります。なかでも特に重要なのは「将来にわたって安定して住宅ローンを返済できるか」という返済能力の判断です。
不動産仲介会社のなかには、金融機関ごとの傾向と対策方法を理解し、返済能力をわかりやすい資料にできるノウハウを持っていない業者もあります。つまり、住宅ローン審査に通るかどうかは、どの仲介会社を選ぶかによっても左右されるのです。
今は条件を満たしていない場合でも、しっかり将来の住宅ローンの審査に向けて対策を重ねておけば、将来的に審査条件をクリアすることは十分可能です。だからこそ「目の前の審査に通るかどうか」だけでなく、中長期的な視点でサポートできる仲介会社選びが大切になります。
本記事では、住宅ローン審査基準と審査に通らない主な理由、そしてその対策について解説します。

行政書士/司法書士/宅地建物取引主任士
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。
本記事の内容は2025年5月25日時点の情報に基づいており、不動産市場の状況や関連法規、税制などは将来変更される可能性があります。最新の情報については、公式の情報源をご確認ください。
住宅ローン審査の基準

住宅ローンの審査では、申込者が将来にわたって安定して返済できるかどうかという項目に加えて、購入する物件に十分な担保価値があるかどうかも総合的に評価されます。審査基準は多岐にわたりますが、特に重視されるのは年齢や年収、勤続年数、健康状態、そして信用情報などです。
特に中古マンションの場合は、物件そのものの状態や築年数、立地など、担保評価も大きく影響します。さらに、金融機関ごとに独自の基準が設定されているので、同じ条件でも審査結果が異なることも少なくありません。
審査基準となる項目 | 評価されるポイント |
---|---|
申込者の年齢 | 目安として80歳までに完済できそうか |
年収・返済負担率 | 年収に対する年間返済額の割合に無理はないか |
勤続年数・雇用形態 | 勤労状況は安定しているか |
健康状態 | 団体信用生命保険に加入できそうか |
物件の担保評価 | 返済が難しくなった場合、家の売却代金で回収できる見込みがあるか |
自己資金 | 頭金や諸費用を用意できるか |
信用情報 | 過去に支払いが滞ったことはないか |
連帯保証人・収入合算の有無 | 返済について、保証もしくは連帯して負担してくれる人はいるか |
その他 | 日本国籍の有無、勤務先の規模、家族構成など |
住宅ローン審査基準について、 「個人事業主やフリーランスは通りにくい」「何社も落ちたから、もうローンは組めない」と思っていませんか?実は、それらの多くは誤解です。

ローンを組めるかどうかは、不動産仲介担当者の知識や経験のレベルによって、左右される部分があります。上記の表に記載された基準だけにこだわらず、まずは信頼できる不動産会社に相談してみることが大切です。


住宅ローン審査に通らない理由


住宅ローン審査に通らない理由の多くは「完済まで返済を続けられるかどうか」に不安があると見なされた場合です。ここからは、よくある住宅ローン審査落ちの理由を紹介しましょう。
信用情報に問題がある
過去のクレジットカードや各種ローンの支払い延滞や、任意整理や自己破産などといった債務整理の経験がある場合、信用情報機関にその情報が記録されています。これは、いわゆる「ブラックリスト」とよばれる状態です。



住宅ローンの審査の際、金融機関は信用情報機関の情報を必ず確認します。支払い遅延などの記録があれば、住宅ローンの審査では、非常に不利です。
返済負担率が高過ぎる
年収に対して年間のローン返済額が占める割合(返済負担率)が高過ぎると、返済計画に無理があると判断され、審査に通りにくくなる場合があります。



一般的に返済負担率は25~35%以内が目安とされますが、この基準は金融機関によって異なります。また、自動車ローンなど他の借入も合算して計算されるため、希望する借入額が多い場合は注意が必要です。
勤続年数が短い・雇用形態が不安定
勤続年数が短い(一般的には3年未満)場合や、転職直後の人に対しては、収入の安定性が十分に確認できないと判断し、審査が慎重に行なわれます。



契約社員、派遣社員、パート・アルバイトといった非正規雇用も、正社員に比べて審査が厳しくなる傾向があります。
年齢や健康状態に問題がある
住宅ローンには申込時や完済時の年齢制限が設けられています。例えば完済時年齢が80歳を超えるような長期のローンは審査が通りにくいでしょう。



また、多くの住宅ローンでは、死亡や重度後遺障害に備えて借入残高分の保証を行う「団体信用生命保険」(団信)への加入が必須とされています。加入にあたっては、健康状態の告知と審査が必要です。
申告内容に不備や虚偽がある
申込書類の記載ミスや必要書類の提出漏れといった不備があると、審査に時間がかかったり、追加の確認を求められたりすることがあります。年収や勤続年数などの誤りには注意が必要です。



内容に虚偽があるとみなされると審査に通らない可能性が高くなるだけでなく、契約後に一括返済を求められるリスクもあります。
物件の担保評価が低い
購入予定の物件は、金融機関にとって融資の担保となる資産です。中古マンションは、評価額の幅が大きく融資額を左右し、審査の大きなポイントになります。



築年数が古い、立地条件が悪い、管理状況が良くないなどの場合には担保評価が低くなり、希望する借入額の融資を受けられないことがあります。
自己資金(頭金)が少な過ぎる
物件価格に対して自己資金(頭金)が少ない、あるいはまったくない場合、金融機関は貸し倒れ(返済してもらえないままになる)のリスクが高いと判断する場合があります。



一般的には、物件価格の10~20%程度の頭金を用意しておくのが望ましいでしょう。


住宅ローン審査に通らない時の最終手段


住宅ローン審査に一度通らなかったとしても、そこで諦める必要はありません。
審査に落ちた原因を分析し適切な対策を講じれば、再挑戦への道はあります。ここでは、審査通過の可能性を引き上げるための具体的な「最終手段」を6つ紹介します。
収入や事業計画について書類を追加する
提出した書類だけでは収入について証明しきれなかったと感じたのであれば、任意で返済能力や信用力など収入を補足する資料を追加してみましょう。具体的には、次のような書類が効果的です。
- 納税証明書や預金残高証明書
- 追加の収入証明(給与明細など)
- 詳細な事業計画書や決算書(個人事業主や会社役員の場合)
収入合算・ペアローンを活用する
1人だと返済負担率などに無理がある場合、配偶者や親などと収入を合算して借入可能額を増やす「収入合算」という方法があります。また、夫婦それぞれで契約して1つの物件を購入する「ペアローン」も条件によっては選択肢に入るでしょう。
■収入合算のポイント
収入合算は、一定の収入のある親族の収入を申込者(主債務者)の収入と合算して、借入可能額を増やす方法です。収入合算には、以下の2つのタイプがあります:
- 連帯保証型:主債務者の返済が滞った場合に、もう一方が保証する形
- 連帯債務型:双方がローンの返済義務を負う



同じ収入合算でも、それぞれ契約上の責任が違います。 内容をよく理解してから選びましょう。
■ペアローンのポイント
ペアローンは、一定収入のある同居親族と一緒にそれぞれが住宅ローンを組む方法です。それぞれが相手の連帯保証人となり、次のような特徴があります。
- 諸費用(保証料や登記費用など)がそれぞれにかかるため、コストが増える
- それぞれが「住宅ローン控除」を受けられるという節税メリットがある
ペアローンは借入額を増やすだけでなく、税制面でのメリットもあります。


保証人を用意する
一般的に、住宅ローンでは保証会社を利用する場合が多いのですが、審査が厳しい場合には信頼できる保証人(連帯保証人)を立て、金融機関の信用を得やすくすることもあります。
ただし、連帯保証人は住宅ローンが返済できなくなった場合には、本人のかわりに返済責任を負う立場となります。非常に重い責任をともなうため、誰に依頼するかは慎重に検討しなくてはなりません。



また、連帯保証人を依頼する方には、その責任の内容を、あらかじめ十分に伝えておく必要があります。
借入条件や物件を見直す
審査に通らなかった原因が借入額や物件そのものにあると考えられる場合には、条件の見直しが効果的です。例えば、借入希望額を減らす、返済期間を長くして月々の返済額を抑える、といった資金計画の調整が審査の通過率を向上させる場合があります。



また、購入する物件の価格帯を下げたり、築浅、好立地などより担保評価の高い物件に変更したりするのも審査通過の可能性を高めます。
審査基準が異なる金融機関へ申し込む
金融機関によって住宅ローンの細かな審査基準は異なります。銀行の数だけ審査の基準がある、といっても過言ではありません。都市銀行、地方銀行、ネット銀行、信用金庫など、それぞれに特徴や得意分野があります。1つの金融機関で審査に落ちても、別の金融機関では承認される可能性は十分にあります。



他にも、比較的基準がゆるやかとされるフラット35を選択肢として検討するのも1つの方法です。
住宅ローン以外の借入を整理・完済する
カードローンや自動車ローン、クレジットカードのキャッシングなど、住宅ローン以外の借入があると、返済負担率が高くなり審査の際には不利に働くことがあります。これらの借入を可能な範囲で減らしたり・完済したりしておけば、返済能力への懸念材料を減らすことが可能です。借入件数を減らすだけでも印象が変わり、評価が改善することもあります。



なお、完済してから信用情報に反映されるまでには、ある程度の時間がかかる場合もあります。住宅ローンを申し込むタイミングにも、注意が必要です。
住宅ローンの審査に通るためのポイントと注意点


住宅ローンの審査は、事前準備と的確な対策によって通過の可能性が高まります。やみくもに無計画に申し込むのではなく、自分の状況を客観的に把握し、金融機関が重視するポイントについて対策をしておきましょう。ここでは、審査通過のために特に意識しておきたい3つのポイントを挙げ、注意点を解説します。
返済負担率を下げる
審査で重視される返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)は、工夫しだいで下げられます。まず借入希望額が収入に見合っているかをチェックしてみましょう。
その他には、以下のような方法も考えられます。
- 住み替えによって売却益が出た場合、その分を頭金に充てる
- 親から住宅資金の援助を受けられるなら、自己資金を厚くする
- ボーナスが出るタイミングで、自動車ローンなど大きな借入を優先して返済する
このように、返済負担率を下げるための工夫は複数あります。状況に応じて調整してみましょう。
信用情報の確認・借入状況の整理を行う
住宅ローンの審査では、申込者の信用情報が必ずチェックされます。過去に延滞や事故情報があると、審査に不利になることがあるので、事前に確認しておきましょう。
ご自身の信用情報は、信用情報機関(CIC、JICC、KSC)に開示請求すれば確認が可能です。過去の延滞や事故情報がないか、事前に把握しておくと安心です。
万が一、信用情報に問題が見つかった場合には、原因を解消し、情報が更新されるのを待つ必要があります。



他には、不要なクレジットカードの解約やキャッシング枠の削減も有効な対策です。
物件の担保評価を意識する
住宅ローン審査に通るかどうかを左右するのは、多くの場合「物件の担保価値」です。融資額が大きい場合でも、物件に魅力があれば審査で有利に働きます。これは、将来的に売却しやすく、価値が下がりにくいと判断されるからです。
まとめ
住宅ローン審査は、年収や勤続年数、信用情報、物件価値などさまざまなポイントを総合的に判断します。たとえ、一度審査に通らなかったとしても、原因を分析し、収入合算や借入条件の見直し、金融機関の変更などを行えば、道が開ける可能性はあります。
そのためには、金融機関ごとに審査基準が異なる点には注目しましょう。欲しい物件が買えないという背景には、マンション市場特有の複雑さや、金融機関・不動産仲介業者・購入希望者とのあいだに情報格差が潜んでいることも少なくありません。しかし、どの金融機関が自分に合っているのか、どうすれば審査に通りやすくなるのかを、個人で見極めるのは決して簡単ではありません。だからこそ、信頼できるパートナーに相談し、ベストな方法を考えていきましょう。
スムナラでは、各金融機関の特色を熟知した専門家が、お客様一人ひとりの状況に合わせて最適なローン戦略をご提案いたします。「住宅ローンを組むのは、今は難しいかもしれない」と感じている方や、個人事業主の方も諦める前にスムナラにご相談ください。将来を見据えた具体的なアドバイスや、長期的な計画の立案まで、私たちがしっかりとサポートします。