中古マンションの購入は初めてという方は「何をチェックしたらいいか不安」なものです。
管理体制や修繕状況、積立金残高や滞納状況まで見ることで、マンションの本当の健康状態や問題を把握できます。
物件の表面的な状態だけではなく、実際の建物の管理状態をプロの目でチェックする建物検査も大切です。しかし、このような確認をしていない不動産会社も少なくありません。納得のいく中古マンションの購入には、不動産会社選びも重要なポイントとなります。
本記事では中古マンションの購入前にチェックしておくべき注意点を、「資金計画や費用」「物件選び」「契約」「資産価値の検討」の4つの視点で解説します。より良い住まいの購入に向けて、ぜひ参考にしてください。
以下は国土交通省の調査で、これから中古住宅を購入する方が「非常に重要視する」と回答した項目のランキングです。
1位 | 住宅価格 | 78% |
---|---|---|
2位 | 広さ・間取り | 53% |
3位 | 日当たり・風通し | 50% |
4位 | 設備の不具合 | 50% |
5位 | 立地 | 49% |
6位 | 耐震性能 | 43% |
出典:2016年・国土交通省「既存住宅の流通促進に向けて」
上記の結果を踏まえ、専門家の視点から大切なチェック項目をお伝えします。

宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
早稲田大卒。マスコミ広報宣伝・大手メーカーのWebディレクター・不動産仲介業を経て、ライター業・不動産投資に従事。宅建士の業務の他、物件写真撮影とレタッチ・販売賃貸図面作成・重説契約書作成まで対応していた。実務経験をもとに、不動産の購入・売却、住まいの知恵、暮らしの法令、税金・法律などの幅広いテーマの執筆を行う。法令に則しながら、時流や現状も踏まえた解説を心掛けている。
本記事の内容は2025年6月6日時点の情報に基づいており、不動産市場の状況や関連法規、税制などは将来変更される可能性があります。最新の情報については、公式の情報源をご確認ください。
中古マンション購入の資金計画・費用の注意点

まずは中古マンション購入にあたっての、お金に関する注意点です。希望の物件が予算内であっても、本当に無理のない購入が可能かどうかを確認する方法を説明します。
今後のライフプランに見合った資金計画
中古マンション購入で融資を受ける場合、住宅ローンの審査は現在の収入や返済状況に対して行われます。
共働きで高収入、公務員などの安定した職業の場合では、融資の可能額が高額である場合も多いでしょう。しかしそのようなケースこそ、注意が必要です。
今後の状況変化について、以下のような点はある程度想定しておきましょう。
- 車などの高額な買い物
- 教育費の増加
- 勤務先の業績や子育て開始による収入の変化
- 金利の上昇による返済負担の増加
- マンション管理費・修繕積立の値上げや修繕一時金発生
何か大きな状況変化があったときに備え、無理のない返済プランのラインを決めます。
主な指標は「返済負担率」です。
返済負担率は年収に占める年間のローン返済額の割合のことで、融資の審査上は35%までといわれますが、無理のない返済は額面年収の20%以内が目安となります。

また、借り入れの際に自己資金をいくら入れるかも検討要素です。自己資金を多く準備すれば早く返し終わる、借入金利を抑えられるなどのメリットがありますが、不慮の出費に備える手元のお金も大切です。
諸費用をなるべく正確に見積もる
中古マンションの場合、諸費用は物件購入費用の5~10%程度必要です。この諸費用は事前に借り入れ以外から準備が必要なものもあります。
例えば、2,000万円のマンションを購入する場合、別途初期費用として100万円~200万円程度を現金で用意しておくことが望ましいです。主な費用は以下です。
- 契約時の手付金
- 印紙税
- 登記費用
- 司法書士依頼費用
- 管理費・修繕積立金
- 申込証拠金
- 仲介手数料
- リフォーム・リノベーション
- 引っ越し・家具購入費用


中古マンション購入の物件選びの注意点


つづいて、購入する中古マンションをどのように選べばいいかを解説します。この項では主に、住まいとしての適性をはかる基準を紹介します。
適正価格かどうか
検討している中古マンションが、市場価格として適正かどうかを確認しましょう。近隣の類似物件と比較して相応の価格かどうか、やや高いと感じられても家族にとって必要で魅力的な物件であるかをチェックします。
相場に比べてかなり高いと感じられる場合、その理由を確認してみましょう。



また、リノベーションにかける費用も考慮する必要があります。
立地・生活の利便性
勤務先・通学先へ通う上での交通の便、スーパーや医療機関への距離など生活に不自由がないかなどは、大切な確認対象です。夜間の明るさや周囲の施設、治安状況も注目したいポイントです。
しかし中古マンションの立地や生活の利便性は、家族によって基準がさまざまです。
例えば居住人数が多く、多少駅からの距離があっても、その分、広さや余裕のある部屋数を重視するケースもあるでしょう。家族の要望をまとめ、それに適した物件探しをしましょう。



立地のチェックは、平日・休日・時間帯を変えるなど、現地を複数回見に行くのがおすすめです。
維持管理やリノベーション
部屋の設備や共用部分に生活するうえで不便がないか、専有部分の水回りや給湯を直すのに多額の費用がかからないかなどもチェックポイントです。今は使えていても、近い将来の修繕が必要とならないかを確認しましょう。
また、中古マンションを購入後に家族好みのリノベーションを施す予定の場合、それに適した物件であるかも大切な要素です。
理想の間取りに変更しやすいか、ライフラインの配管はそれに適した状態か、窓断熱性能のアップや高効率給湯機への交換について、管理組合がどのように対応しているかも、必要に応じて調べておきましょう。



仲介とリノベーションサポートを併せて行う会社に依頼すれば、このような点についてワンストップで対応可能なのでおすすめです。
中古マンション契約の注意点


つづいて、中古マンションの契約以降の流れと、売買契約時の書類確認について説明します。契約を交わす際に交付される書類の中で、特にチェックポイントとなるのが、以下の3点です。
- 売買契約書:売買契約について、売主と買主の間での約束の内容を記載
- 重要事項説明書:購入する物件の内容や状況、契約に関するルールなどを記載
- 重要事項調査報告書:マンション管理の状況を記載
この他「付帯設備表」「物件状況報告書」なども含めて、購入について総合的な判断を下します。隠れた不具合が不安な場合、ホームインスペクションを依頼することもあります。
入居までの流れをチェック
購入申込から入居までの標準的な流れは以下です。
- 購入申込み
- 住宅ローン事前審査
- 売買契約(手付金支払い)
- 住宅ローン本審査
- 金銭消費貸借契約
- 決済・物件引渡し
売買契約前に、マンションに対する確認をしっかり行っておく必要があります。
また、売買契約後にローンの本審査が行われます。これは金融機関が借入対象の物件の確実性を求めるためです。契約しても安心せずに、金融機関から求められる本審査用の資料をそろえ、円滑に審査が下りるようにする必要があります。ローンが通らない場合、別の融資先を探すなどを行いますが、融資が得られなかった場合でも売買契約違反にはならず、契約は白紙になります。



物件のリノベーションを別途進めると費用の返済が二重になる、売買側とリフォーム側で物件情報の共有が十分になされないなどが懸念されます。
契約書・重要事項説明書をチェック
まず先にしっかり目を通す必要があるのは、重要事項説明書に書かれた物件説明です。
重要事項説明書は契約の日に宅地建物取引士資格者によって口頭の説明が行われ、質疑応答ののちに記名・押印がされるものですが、事前にコピーをもらって中身すべてに目を通し、不明点を書き出しておきます。
契約書は、どのような状況で契約が無効となるかなどを中心に確認しておきましょう。



特に特約事項に、今回の物件ならではの約束事が書かれている場合があるので、その部分に不明点があれば確認しましょう。
重要事項調査報告書をチェック
重要事項調査報告書は、マンションの管理状況や居住者の規定に関して書かれています。マンション管理組合には、所定の事項を開示する義務があり、内容も度重なる法令改正に即してあらためられています。
マンションの管理体制や修繕などの状況、積立金の金額・滞納状況などの内容が記載されます。
この重要事項調査報告書をどのように読み解くかで、冒頭にも述べたようにマンションの管理体制や建物の健康状態がわかります。
どのような修繕が行われてきたか、積立金や滞納など、修繕のためのお金の管理に問題がないか、購入者側からの確認が必要です。
重要事項調査報告書がなければ発行を依頼し、内容に不足があれば外観調査で建物の状態や共有部分の使用状況をチェックすることが大切です。その結果を不動産仲介会社が共有してくれると、購入者は安心して検討できるでしょう。しかし、売買取引業中心の一般的な不動産仲介会社では、そこまで行うケースは少ないでしょう。
重要事項調査報告書の提供依頼は、不動産仲介会社によってスタンスが異なります。中古マンション購入の際には、専門的なサポートにより重要事項調査報告書のチェックを行うことをおすすめします。



その他「専有部分の用途制限について」「インターネットやBS、CSについて」「ペットの飼育や楽器の演奏について」「リフォームに関する内容」など、暮らしの上で正確な情報も得られます。
参考:
マンション管理業協会「管理に係る重要事項調査報告書作成に関するガイドライン」
国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」


資産価値が高い中古マンションを購入時するための注意点


不動産は資産でもありますが、購入する中古マンションはどのようにすれば資産としての有効性を見極められるでしょうか?この項では主に、資産価値をはかる基準を紹介します。
立地の良さが資産価値の大きな判断基準ですが、それだけではありません。
築年数
マンションの状態に限っていえば、築年数が同じでも管理状況などによって資産価値はまちまちとなります。しかし価格相場ではおよそ共通して、これまで築年数に応じて下がってきた価格が25年目で横ばいになる=下げ止まるタイミングとなります。
つまり築25年前後の中古マンションが、価格が安定していて、かつもっとも新しめの物件となるのです。
以前は築25年を超えた物件は住宅ローン減税の恩恵を受けられなくなるため、25年以内が購入の1つの指標でしたが、2022年の税制改正でこの要件は変更され、1981年以降の新耐震基準適合物件が対象となり、指標ではなくなりました。



中古マンションの良し悪しは築年数ではなく、建物の実際の健康状態です。スムナラはプロのノウハウで必要なチェックをすべて行います。
管理状況
前述の重要事項調査報告書による管理状況の確認も、資産価値の指標となります。
いつ、どこの箇所に大規模修繕が行われたのかを示す、一種のカルテであるため、以下の2点をチェックできるのです。
- これまで正しい管理が行われ、建物の寿命を正しく延ばせているか
- 今後大きな修繕の必要性から、修繕積立金の値上げや一時金徴収の可能性がないか
今後建物の寿命が短かったり、維持管理のコストが増えたりする場合、よほど駅近などの好立地でない限り、建物の朽廃や住民の質の低下から、資産価値は落ちてしまいます。



これまでの管理状況と、これからの管理体制についての専門的な確認は、資産価値の高いマンション購入には必要不可欠です。
大規模地震への対応力
マンションの耐震診断結果や、耐震の改修・修繕履歴があれば、確認しましょう。耐震等級は1~3の3段階で、等級2で阪神大震災クラスで倒壊しない耐震性の証明となります。1981年5月31日以前の旧耐震基準では、中規模の地震=震度5強に対して倒壊を防ぐことが目的となっています。
また、マンションで築浅・大規模の建物は、耐震構造の他「免震構造」「制振構造」などの方式で地震に強い構造となっているものもあります。
マンションの建っている地盤については、自治体で開示されているハザードマップで必ず確認しておきましょう。ハザードマップは水害の際の浸水リスクについても調べることができます。



上記のような点のチェックが、将来の資産価値があるかの判断に繋ります。
参考:国税庁「No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
まとめ
本記事では中古マンションの購入前にチェックしておくべき注意点を、「資金計画や費用」「物件選び」「契約」「資産価値の検討」の4つの視点で解説しました。マンション購入は専有部分=部屋の中の状態に目を奪われがちです。しかし、末永く共にする住まいなので、より良い暮らしのため、最初にチェックすべき情報は丁寧に押さえておきましょう。
魅力的な価格の物件を、魅力的な住まいにするために、ぜひスムナラのサービスをご検討ください。