マンションを購入する際は、住宅ローンの返済額ばかり意識していないでしょうか?しかしマンションに住む場合、管理費・修繕維持費の合計額は、月に3万円~7万円程度の支出が必要です。特に維持費は築年数とともに高くなるため、ローン完済後や老後も安心して暮らしていくためには維持費の支出額にも気を配る必要があるでしょう。
ここでは、マンション維持費の詳しい内訳から、戸建てとの比較、将来を見据えた対策まで、具体的な金額とともにご紹介します。

行政書士/司法書士/宅地建物取引主任士
大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。
本記事の内容は2025年2月10日時点の情報に基づいており、不動産市場の状況や関連法規、税制などは将来変更される可能性があります。最新の情報については、公式の情報源をご確認ください。
マンション維持費の内訳
マンションを購入すると、毎月の住宅ローン返済に加えてさまざまな維持費がかかります。筆者が情報を精査した結果、主要な費目についての維持費の相場は、おおよそ以下のようになります。(固定資産税評価額1,000万円~2,000万円の中古マンションの場合)
- 管理費・修繕積立金:3万円~5万円/月
- 固定資産税・都市計画税:10万円~20万円/月
- 火災保険・地震保険:1万円~2万円/月
- その他の費用(駐車場代など):1万円~5万円/月
管理費・修繕積立金
マンションの維持費として大きな額を占めるのが、管理費と修繕積立金です。
管理費は共用部分の清掃や電気代、管理人の人件費など、日常的な維持管理に使われます。一方、修繕積立金は、外壁の塗り替えや給排水管の取り替えといった大規模修繕に備えて積み立てる費用です。
管理費および修繕積立金の合計額は、マンションの規模によって変動します。

中古マンションの場合は月に3万円~5万円程度、新築マンションの場合は首都圏を中心にマンション価格高騰の影響で、7万円近くとなることもあります。


固定資産税・都市計画税
土地や建物の所有者は、固定資産税(税率1.4%)と都市計画税(税率0.3%)を毎年納めなければなりません。市区町村は3年おきに定める固定資産税評価額をもとに、金額を算出するため、課税年度によって金額は変動します。マンションの固定資産税と都市計画税の合計額は、1年に10万円〜20万円程度となるのが相場です。
なお、課税額の基準となる固定資産税評価額は、売買価格の80%程度が一般的です。



中古マンションは新築の場合と比べ、建物の評価額が低くなるため、課税額も小さくなります。
火災保険・地震保険
マンションにかかる保険は、共用部分の保険(管理組合加入)と専有部分の保険(個人加入)の2種類が必要です。近年、専有部分の保険について、火災保険だけでなく地震保険にも加入する場合が増えています。ちなみに、令和5年の調査によると、地震保険の加入率は74.9%に及びます。



保険額の相場は、火災保険は1年あたり5,000円~1万円程度、地震保険は5,000円~7,000円程度、両方加入する場合は1年あたり1万円~2万円程度となります。
駐車場・駐輪場などの費用
駐車場代は、立地によって大きく異なります。都心部では月額2万円~5万円程度、郊外で1万円~3万円程度が相場でしょう。なお、機械式駐車場は平置きより高額になりがちです。その他にも、駐輪場(月300円~1,000円程度)、トランクルーム(月3,000円~1万円程度)などが追加で必要となる場合があります。
これらの費用は、自主管理や委託管理といった管理形態によっても異なります。



自主管理は費用が比較的抑えられるのが利点ですが、委託管理であれば人件費などで費用は高めになる一方で、専門的な管理を期待できるでしょう。
中古マンションは築年数で維持費が変わる
中古マンションを購入する際、築年数によって維持費がどれくらい違うのかも気になるポイントではないでしょうか。特に修繕維持費については、建物の老朽化に伴って上昇する費用で、築年数1年目と20年目では倍以上違うこともあります。
実際に、東京カンテイによる調査を見ると、首都圏にある中古マンションの1カ月あたりの管理費・修繕積立金の相場は築年数によって下の表のように変化しています。
築年数 | 管理費 | 修繕積立金 | 合計 |
---|---|---|---|
1年 | 20,213円 | 8,377円 | 28,509円 |
10年 | 15,606円 | 13,422円 | 29,028円 |
15年 | 14,303円 | 15,944円 | 30,247円 |
20年 | 13,000円 | 18,466円 | 31,466円 |



また、築年数が進むと住民の高齢化や空室の増加による、管理費などの未払いリスクも高まります。
その補填のために、さらなる値上げを余儀なくされるケースも少なくありません。このように、物件の将来性に関する見極めは重要です。


マンションと戸建ての維持費の違い
住宅の維持費を考える上で、マンションと戸建ての大きな違いは「費用の自由度」にあります。マンションは管理費や修繕積立金という形で毎月一定額を支払う必要がありますが、戸建ては修繕のタイミングや内容を自分で決められます。
ただし、総額ではそれ程大きな差はありません。30年間の維持費総額は、マンションが約2,000万円、戸建てが約1,300万円程度といわれます。戸建ては自己管理による手間はかかりますが、DIYなどで費用を抑えることも可能です。



ただし、住居選択の際には、費用面だけでなく自身のライフスタイルや将来設計も考慮すべきでしょう。


戸建ての維持費の内訳
戸建ての維持管理では、計画的な修繕が重要になります。主な修繕項目と費用の目安を整理すると、下記のとおりです。
- 外壁塗装:15年~20年ごとに100万円~130万円
- 屋根修繕:15年〜20年ごとに80万円〜100万円
- 給排水管更新:20年〜30年ごとに50万円〜80万円
- シロアリ対策:5年〜10年ごとに10万円〜20万円
戸建ての場合、日常的な維持費としては、設備点検費用や庭の手入れ(年3万円~5万円)などがあります。木造住宅も多いので、火災保険料はマンションの2倍~3倍となることが一般的です。



ただし、メンテナンスをDIYで行えば、費用を大幅に抑えることができます。
マンションと戸建ての維持費のシミュレーション
マンションと戸建ての維持費を比較すると、長期的にはマンションの方が割高となる傾向があるといわれています。実際に築30年までに必要な維持費のシミュレーションをしてみると、次のような結果となります。
マンション(築0〜30年)
- 管理費:600万円〜800万円
- 修繕積立金:400万円〜600万円
- 固定資産税・都市計画税:360万円〜600万円
- 火災保険:30万円〜60万円
- その他(駐車場代など):360万円〜600万円
- 合計:約1,750万円〜2,660万円
戸建て(築0〜30年)
- 修繕費用:600万円〜650万円
- 固定資産税・都市計画税:360万円〜600万円
- 火災保険:90万円〜120万円
- その他(庭・設備管理など):90万円〜150万円
- 合計:約1,140万円〜1,520万円
マンションと戸建て、迷ったらどっち?
住まい選びは、ライフスタイルや経済状況によって最適解が違います。マンションは、専門家による定期的な維持管理や24時間セキュリティなど、手間のかからない暮らしを実現できます。一方、戸建ては維持管理に手間はかかりますが、プロに頼まずDIYなどで対応可能で、費用を抑えられる自由度があります。
マンションが向いている人
- 利便性を重視する人
- セキュリティを重視する人
- 共働きで時間に余裕がない人
- 管理や修繕の手間をかけたくない人
戸建が向いている人
- 広さを重視する人
- 複数台の車を所有している人
- 間取りや内装をカスタマイズしたい人
- 上下階や隣接住戸からの生活音を気にする人
近年では、高齢になると一戸建ては管理が大変になるという理由で手間がかからないマンションを選択する人も増えています。



選択の際は、現在の生活スタイルだけでなく、将来の変化も想定しましょう。
マンションの維持費は老後もかかる!
マンション購入者の多くが「住宅ローン完済後は楽になる」と考えがちです。しかし、管理費や修繕積立金などの維持費は、生涯にわたって発生します。老後の住まいとして住居を検討する際には、以下のポイントを押さえましょう。
老後にマンション維持費が負担になることも
厚生労働省の調査によると、高齢者世帯の平均年収は約300万円です。マンションの維持費を月額3万円とすると、年額36万円(年収の12%)が必要になります。老後の年金収入に対する維持費の割合は15%以下が望ましいですが、ほあまり余裕はありません。
すでに述べたように、マンションの維持費はずっと固定のままではありません。特に築年数30年を超えたマンションでは、当初の50%以上も維持費が増加するケースもあります。



こうした可能性があることを念頭において、余裕のある資金計画が必要になることを覚えておきましょう。
参考:厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」
マンションの維持費を減らす方法
維持費を抑えるには、削減効果が持続する固定費の見直しから始めましょう。都市部では、高齢になると車の利用頻度が低下する傾向があります。月数万円かかる駐車場を解約し、カーシェアやレンタカーを活用すれば大幅な節約が可能になるでしょう。火災保険も、ネット型保険に切り替えれば保険料を20〜30%削減できます。



電力会社との契約の見直しや、エアコンのこまめな清掃など、できることから始めることが重要です。
維持費が払えない場合の対策
維持費の支払いが困難になった場合、まずは管理組合へ相談しましょう。多くの管理組合では、一時的な支払い猶予や分割払いにも応じています。
住宅ローンが残っている場合は、金利の低い銀行への借り換えも検討できます。家を手放す前の最終手段として、売却後も同じ物件に住み続けることができる「リースバック」という制度の利用も検討できます。



自治体によっては高齢者向けの住宅費用補助制度もありますので、早めに確認することをおすすめします。
まとめ
管理費や修繕積立金などのマンション維持費は、住宅ローンの返済とは別に住み続ける限り必要です。年齢を重ねてから「思ったよりもお金がかかる」と後悔することがないよう、あらかじめ毎月・毎年の支出を試算しておきましょう。また、老後の住まいとして長期的にマンションを所有する場合は、将来的な維持費の変動も考慮に入れた計画がおすすめです。
マンション維持費を少しでも安くしたい時は、駐車場契約の見直しや火災保険の見直し、管理組合での費用削減提案など、さまざまな方法が考えられます。不安があるなら、マンションのプロに相談するのもおすすめです。