「マンションには大規模修繕が必要だと聞くけれど実際はどうなの?」
マンションにお住まいの方やマンションの購入を検討する場合、過去の大規模修繕の履歴や、未来の計画を確認することが大切です。なぜなら、大規模修繕が適切に行われているかどうかが、表面的な築年数だけではわからない、「マンション自体の健康寿命」を知る上で非常に重要だからです。大規模修繕は管理状態の良し悪しを判断する上で大切な要素と言えます。
この記事では、マンションの大規模修繕についてわかりやすく解説します。大規模修繕の内容から費用、期間、起こりうるトラブルとその対処法までお伝えするので、ぜひお役立てください。

宅地建物取引士(合格)
熊本大学を卒業後、不動産デベロッパーで勤務する傍ら、ライターとして活動している。不動産贈与、相続、売買、リフォームなど幅広いジャンルの執筆を行い、特に、不動産、金融系の分野を得意とする。「ロジカルでわかりやすい文章により情報を届け、人生が良い方向に進むきっかけをつくる」ことをモットーに掲げている。
本記事の内容は2025年1月16日時点の情報に基づいており、不動産市場の状況や関連法規、税制などは将来変更される可能性があります。最新の情報については、公式の情報源をご確認ください。
マンションの大規模修繕とは?
マンション大規模修繕とは簡単にいえば、高額な工事費用や長期の工事期間が必要な修繕工事のことです。マンションを維持するために必ず必要な工事になります。
建築基準法第二条では、大規模修繕について「建築物の主要構造部の一種以上を、1/2超にわたって修繕すること」とされています。なお、建築物の主要構造部とは、壁、柱、床、はり、屋根、階段を指します。間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段、その他これらに類する建築物の部分は主要構造部にはあたりません。

マンションの大規模修繕は、住民から構成される管理組合が主体となって実施します。
大規模修繕が必要な理由
マンションの大規模修繕は、「居住環境」と「資産価値」の2つを守るために必要不可欠です。築年数を重ねるごとに劣化が進めば、設備などを交換しなければなりません。
具体的には、外壁が剥がれ落ちる、鉄筋が露出・腐食する、給排水管が老朽化するなど、経年劣化による不具合が生じやすくなります。こうなると、マンションの住民および近隣の住民の日常生活や生命、財産に影響を及ぼしかねません。大規模修繕を実施して、劣化した部分を補修し不具合を未然に防がなければ、安心して住むこともできなくなるでしょう。



住みやすく資産価値のあるマンションであり続けるには、日々の管理に加えて、適切な時期に適切な大規模修繕が必要になります。
大規模修繕と改修工事の違い
修繕とは、設備などの修理や取替えを行って、問題なく使用できる状態まで戻すこと。改修は、修繕と機能のグレードアップを同時に実施して、マンションの性能を今までより改善する工事です。例えば、鍵をオートロックにする、耐震性をアップする、バリアフリー化するなどが改修工事にあたります。
マンションの資産価値を維持する大規模修繕には、修繕工事だけでなく改修工事が含まれます。



劣化した箇所を元に戻す修繕に加えて、防犯意識の高まりや設備の電子化など、社会情勢やニーズの変化にあわせたバージョンアップを実施しなければ、資産価値の低下はまぬがれないでしょう。
参考:国土交通省「マンションの改修・建替え等について」
参考:e-GOV 法令検索「建築基準法 令和6年11月1日 施行」
参考:独立行政法人 住宅金融支援機構「大規模修繕の手引き」
参考:国土交通省「マンションの改修・建替え等について」
大規模修繕の費用
マンションの大規模修繕にかかる費用と、その資金について説明します。
大規模修繕にかかる費用の目安
マンションの大規模修繕にかかる費用は、マンションの戸数や工事内容によって異なります。1戸あたりの工事費用も25万円以下の場合もあれば200万円以上必要になることもあるでしょう。大規模修繕の回数を重ねる程、1回の修繕費用は安くなる傾向にあります。
調査によると、大規模修繕工事の実施回数ごとの費用は、平均では以下のとおりです。
- 1回目: 151.6万円/戸
- 2回目:112.4万円/戸
- 3回目以上: 106.1万円/戸
また、工事回数別の、もっとも割合の多い修繕費用の価格帯は以下のようになります。
- 1回目:100~125万円/戸
- 2回目:75~125万円/戸
- 3回目以上:75~100万円/戸


大規模修繕の資金
多くのマンションの大規模修繕には、区分所有者、すなわち住民が積み立てる修繕積立金が利用されます。修繕積立金とは、長期修繕計画に基づいて各住民が支払い、積み立てているものです。



地上階数が20階未満のマンションの場合、修繕積立金の1カ月あたりの平均額は1平方メートルあたり300円前後のようです。
なお、地上階数が20階以上のマンションは、積立資金が少し高くなる傾向があります。また、機械式駐車場がある場合はさらに加算されます。加算額は駐車場1台で、1カ月あたり4,000円~8,000円とばらつきがあります。
大規模修繕にあたって修繕積立金が不足する場合も起こりえます。その場合は、工事を先送りして修繕積立金を貯める、公的助成制度を活用する、金融機関から借り入れる、修繕積立金を増額するなどの方法を取ります。
参考:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
参考:独立行政法人 住宅金融支援機構「大規模修繕の手引き」


大規模修繕の期間
マンションの大規模修繕はどのくらいの周期で行い、工事にどのくらいの期間を要するのかについて説明します。
大規模修繕の周期:12年~15年程度
マンションの大規模修繕の7割は、12年~15年の周期で実施されます。統計を見ると、13年が2割超ともっとも多く、次に12年、14年、15年の順で続きます。
全体の傾向を見ると、1回目は築12年〜15年程度、2回目は築24年〜30年程度、3回目は築36年〜45年程度で行われます。



修繕周期は回数を重ねる程、しだいに短くなる傾向があります。
大規模修繕の所要期間
マンションの大規模修繕は、準備から完了まで1年〜3年程度を要します。30戸〜100戸程のマンションの場合、以下のようなスケジュールで進むことが多いでしょう。
大規模修繕の最初に行われるのは、専門委員会の設置です。これはマンションの管理組合のなかに設置され、修繕の10カ月前には必要になります。専門委員会のメンバーは、建築や設備、法律などの知識を持っている人が望ましく、住民のなかから希望者を募ります。
専門委員会は大規模修繕の計画を進める中心的組織です。最初に管理組合は、マンションの管理状況の確認、管理会社や設計会社、コンサルタントなどのパートナーの選定、工事の発注方式の決定などを行います。
大規模修繕の6カ月〜9カ月以上前には、マンションの調査・診断、基本計画と資金計画の検討、施工会社の選定が必要になります。。設計図面の確認や建物調査の結果をもとに、工事費や工事内容を精査のうえ資金との折り合いがつくと確認し、施工会社を決めます。
工事の着工前には、住民の意思決定の最終確認となる総会を実施します。総会の決議をうけて、施工会社と契約を結びます。着工の1カ月前程に住民への工事説明会を開催したのち、いよいよ着工です。
大規模修繕工事の期間は3カ月〜6カ月程度のことが多く、工事期間内には定例会議で、進捗や問題が発生していないかを確認します。



工事が終了し、竣工検査と費用の精算を終えれば、大規模修繕は完了です。
参考:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
参考:独立行政法人 住宅金融支援機構「大規模修繕の手引き」
参考:独立行政法人 住宅金融支援機構「大規模修繕の手引き」
購入前に大規模修繕で確認すべきこと
マンションを購入する前に、重要事項調査報告書を入手して、大規模修繕に関する情報を事前にチェックしておきましょう。「重要事項調査報告書」はマンションの管理組合や管理会社が発行する書類で、マンションの管理状況や修繕履歴などを詳細に記載したものです。重要事項調査報告書から、築年数や見た目など表面的な建物の年齢だけでなく、管理状況(マンション自体の健康寿命)を把握することができます。重要事項調査報告書で確認すべき事項をお伝えします。
大規模修繕の実績と計画
まず、過去の大規模修繕の実績と今後の計画を確認しましょう。
重要事項調査報告書のなかに「大規模修繕計画関係」といった項目が設けられており、長期修繕計画の有無、共用部分等の修繕実施状況、大規模修繕工事実施予定、予定されている工事の概要などが一般的に記載されています。大規模修繕はマンションを維持するために欠かせない工事です。計画的かつ適切な周期で実施されているかチェックしておいた方が良いでしょう。



また大規模修繕中は騒音や振動などが発生し日常生活にも影響するため、心づもりをしておく意味合いでも、いつ頃に実施予定なのか把握しておきましょう。
修繕積立金の積み立て状況
修繕積立金の積み立て状況も確認しましょう。前述したとおり、マンションの大規模修繕には住民によって積み立てた修繕積立金が利用されます。修繕積立金が不十分であれば、大規模修繕を実施する際に多額の修繕一時金を徴収される可能性があります。
修繕積立金の積み立て状況も、重要事項調査報告書にて確認できます。修繕積立金の収入総額、支出総額、繰越額などが記載されています。資産総額と負債総額も記載されているため、負債が膨らんでいないかチェックしておきましょう。



重要事項調査報告書では、売主が支払っている修繕積立金の額と滞納額、今後の金額の変更有無も確認できます。
重要事項調査報告書を確認する方法
重要事項調査報告書は、購入者が管理会社などに直接請求することは難しく、不動産仲介会社を通して入手する必要があります。マンションを購入する際は、重要事項調査報告書の取得を仲介会社に依頼しましょう。
なかには不動産仲介会社が重要事項調査報告書を確せず、物件の表面的な情報だけで紹介していることも少なくありません。



購入後のトラブルを避けるためにも、建物全体の価値の見方のノウハウを持った仲介会社を選ぶようにしましょう。
参考:一般社団法人 マンション管理業協会「管理に係る重要事項調査報告書」


まとめ
マンションの大規模修繕は、マンションの「居住環境」と「資産価値」を守るために必要です。大規模修繕の実績と計画、修繕積立金の状況などが確認できる重要事項調査報告書は、中古マンションの建物全体の良し悪しを判断する重要な指標の1つです。購入前に必ず重要事項調査報告書を確認するようにしましょう。
仲介会社によっては表面的な築年数だけを見て物件を紹介する会社もあります。購入後に建物の資産価値が低いことに気づくということもあります。そうならないためにも、築年数や見た目など表面的な建物の年齢だけでなく、管理状況(マンション自体の健康寿命)を把握するノウハウを持った仲介会社を選ぶことがマンション選びの成功のポイントです。
スムナラでは、大規模修繕の履歴や計画をきちんと確認した上で物件の紹介を行っており、各物件を紹介するページから重要事項説明書をダウンロードできるようにしています。マンション選びに失敗したくない方は、ぜひお気軽にご相談ください。