「中古マンションを購入したいけれど、予算が心配…」「リフォーム費用がかさみそうで不安…」そんなお悩みをお持ちの方に朗報です。
2025年現在、国や自治体では、中古住宅の購入やリフォームに対してさまざまな補助金制度を設けています。これらの制度を上手に活用すれば、費用の負担を軽減し、快適で安心な住まいを手に入れることが可能です。
本記事では、中古マンション購入時に使える補助金や減税制度を紹介します。住宅ローン借り入れの際に補助金などを使うメリットや、活用のポイントについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
早稲田大卒。マスコミ広報宣伝・大手メーカーのWebディレクター・不動産仲介業を経て、ライター業・不動産投資に従事。宅建士の業務の他、物件写真撮影とレタッチ・販売賃貸図面作成・重説契約書作成まで対応していた。実務経験をもとに、不動産の購入・売却、住まいの知恵、暮らしの法令、税金・法律などの幅広いテーマの執筆を行う。法令に則しながら、時流や現状も踏まえた解説を心掛けている。
本記事の内容は2025年5月25日時点の情報に基づいており、不動産市場の状況や関連法規、税制などは将来変更される可能性があります。最新の情報については、公式の情報源をご確認ください。
中古マンション購入時に使える補助金一覧

中古マンションを購入してリフォームする際に使える補助金として、主なものを以下にまとめました。
子育てグリーン住宅支援事業
子育てグリーン住宅支援事業は、2025年から実施されるリフォームに関する支援事業です。子育てと銘打っていますが、リフォームに関しては、子育て世帯・若年夫婦世帯だけでなくすべての世帯が対象となります。

ちなみに、2024年までにおこなわれていた「こどもエコすまい支援事業」は終了しているため、古い制度と混同しないようにしましょう。
子育てグリーン住宅支援事業
対象の工事 | 必須工事1:窓やドアなど開口部の断熱性能向上 必須工事2:躯体の断熱性向上 必須工事3:エコ住宅設備導入附帯工事として、子育て対応改修・バリアフリー改修も認定可能 |
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条件 | すべての世帯が対象 申請者は登録施工業者 |
補助金額 | 必須工事3つ全てを実施する場合(Sタイプ)は上限60万円 必須工事のうち2つを実施する場合(Aタイプ)は上限40万円 |
先進的窓リノベ2025事業
先進的窓リノベ2025事業は、住宅の窓やドアを断熱性能の高いものへ変更する際に、費用の一部を補助する事業です。



ただし、マンションでは、玄関ドアは共用部分です。基本的に管理組合の決議が必要となり、個人の一存ではリフォームできません。
先進的窓リノベ2025事業
対象の工事 | 内窓の設置・外窓の交換・窓ガラスの交換・玄関ドアの交換工事 |
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条件 | すべての世帯が対象 申請者は登録施工業者 |
補助金額 | 窓のリフォーム費用の2分の1を、上限200万円の範囲で補助 |
給湯省エネ2025事業
給湯省エネ2025事業は、高効率給湯機を導入する際に補助金が支給される事業です。年間給湯効率が108.0%以上の性能を満たした、指定された機種のみが対象となります。



リフォームの場合は、それまで設置していた蓄熱暖房機や電気温水器の撤去も対象です。申請手続きは施工事業者が行い、給付された補助金は施主に還元されます。
給湯省エネ2025事業
対象の工事 | ヒートポンプ給湯機(エコキュート)、ハイブリッド給湯機、家庭用燃料電池(エネファーム)などの高効率給湯機の導入を目的とした工事 |
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条件 | すべての世帯が対象 補助の対象は指定機種のみ 申請手続きは施工事業者が行う |
補助金額 | ヒートポンプ給湯機:13万円 ハイブリッド給湯機:10万円 家庭用燃料電池:20万円 ※旧設備の撤去の際に追加補助有り(4万~12万円) |
これまで説明してきた「子育てグリーン住宅支援事業」「先進的窓リノベ2025事業」「給湯省エネ2025事業」は、国土交通省・経済産業省・環境省の3省が連携して「2025住宅省エネキャンペーン」の一環として事業が進められています。このため申請の併用やワンストップ申請も可能です。
参考:公式サイト「住宅省エネ2025キャンペーン」


長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、住宅を長年大切に使用するために必要な工事に給付される補助金です。まさに中古マンション購入に適しているので、利用をおすすめします。



ただし、この事業はメンテナンスの計画も含めて認定されるため、ランニングコストがかかる点には、留意しましょう。事業の概要は以下のとおりです。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
対象の工事 | 耐久性・耐震性・省エネ性能・維持管理性能など性能の確保を目的とした工事 |
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条件 | 工事前に住宅診断を実施する 工事後に基準以上の耐震性、劣化対策がされている 改修工事履歴と維持保全計画を作成する |
補助金額 | 上限:対象となる工事費用の3分の1 上限額:100万円〜200万円 |
省エネリフォームや浴室改修の場合、費用は100万円前後が目安です。長期優良住宅化リフォーム推進事業を利用すれば、大きな工事でも給付金の範囲で収めることも可能です。


次世代省エネ建材支援事業
次世代省エネ建材支援事業は、2025年最新の事業内容が発表されていません。しかし予算の閣議決定は済んでいるので、実施されると考えられます。



例年、次世代省エネ建材支援事業は5月~11月末頃までに、2~3回に分けて公募が実施されています。過去には公募期間中に予算額に達して、予定期間の終了を待たず、受付を終了するケースもありました。
参考として2024年の制度内容を紹介します。(変更の可能性あり)
次世代省エネ建材支援事業(2024年の例)
対象の工事 | 高性能な断熱材や、蓄熱や調湿性能が高い次世代省エネ建材を使用した工事 |
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条件 | マンションの場合には「内張り断熱」による改修が対象 高性能断熱材や蓄熱・調湿建材などの次世代省エネ建材の効果の実証を支援する=効果測定が必要 |
補助金額 | 費用の50%が補助される 上限:125万円 |
自治体独自の補助金
国の事業とは別に、地方自治体が独自の予算で実施している補助金事業があります。例として、東京都で実施しているリフォーム補助金事業を紹介します。
東京都・既存住宅における省エネ改修促進事業
対象の工事 | 高断熱窓・高断熱ドアの導入、壁・床などの断熱改修、高断熱浴槽の設置に要する材料費・工事費 |
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条件 | 既存戸建・集合住宅の所有者又は管理組合など 上記と共同で申請する事業者 |
補助金額 | 【高断熱窓】 :材料費・工事費の1/3(上限100万円/戸) 【高断熱ドア】 :材料費・工事費の1/3(上限16万円/戸) 【壁/床など断熱】:材料費・工事費の1/3(上限100万円/戸) 【高断熱浴槽】 :材料費・工事費の1/3(上限9.5万円/戸) |
自治体で実施する補助金事業は、省エネルギー住宅の推進以外にも、移住による地域活性化や雇用の促進を目的に実施されているものもあります。



お住まいの地域の補助金を、幅広くチェックしてみるのをおすすめします。
補助金以外で中古マンション購入時に使える減税制度


省エネリフォームで、減税も受けられます。この項では、中古マンション取得にかかる減税制度を紹介します。
住宅ローン控除
中古マンションを住宅ローンを利用して購入した場合、要件を満たせば一定期間の所得税や住民税が控除されます。
控除額はリフォームで達成された住宅性能などで異なります。例えば、中古住宅で省エネリフォームを一定基準以上で行った場合には、10年間にわたって控除率0.7%・合計最大210万円の金額が控除されます。



借り入れ限度額(対象となる購入金額の範囲)についても、下記のようにリフォーム住宅は、その他の住宅に比べて優遇されます。
住宅の種類(中古・リフォーム) | 借入限度額 |
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省エネ住宅(認定住宅、ZEH、省エネ基準適合住宅) | 3,000万円まで |
その他の住宅 | 2,000万円まで |


住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
住宅購入時に両親や祖父母からの資金援助を受けることもあるでしょう。本来なら贈与税が発生しますが「住宅取得等資金に関する贈与税非課税措置」で一定の要件を満たせば、父母や祖父母などの直系尊属から住宅資金の贈与が、一定額まで非課税となります。非課税限度枠は、省エネ住宅の場合で1,000万円、一般住宅で500万円までと、省エネ住宅が有利です。
この制度では、マンションの取得後から6ヶ月以内の耐震改修を行った物件に対しても贈与税の非課税限度額の対象となります。



他にも間取り変更など区分所有者(個人)でのリフォーム工事も控除の対象ですが、これらの改修は管理組合が主体となって行うことが多いので、該当要件に注意が必要です。
固定資産税・登録免許税の軽減措置
マンションを所有すると、毎年、固定資産税が発生します。もともと購入からの5年間は、固定資産税が通常の半額に減額される制度があります。
そのうえ、所有した物件が認定長期優良住宅の場合は、減額期間が延長されて7年間になります。購入物件には毎年、固定資産税額(および都市計画税)がかかりますので維持費を把握するためにも確認しておいた方が良いでしょう。
また、購入後マンションの所有権移転登記の申請時に発生する登録免許税(登記申請書に貼る収入印紙の金額)についても、通常の税率よりも軽減されます。



この他に、住宅ローンの借り入れの際の金利によって、省エネリフォームが優遇される制度もあります。
【フラット35】は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する、最長35年の長期固定金利の住宅ローンです。
【フラット35】リノベは、中古住宅の購入とあわせて一定の要件を満たすリフォームを実施すると、借入の金利が一定期間引き下げられる制度です。中古住宅を購入後に自らリフォームを行う場合(リフォーム一体タイプ)が本記事の場合の対象です。
【フラット35】リノベ・金利Aタイプは、当初5年間の借入金利が年1.0%引き下げられるプランで、要件を満たすリフォームの場合利用可能です。また、リノベ・金利Bタイプは、借入当初から5年間の金利が0.25%引き下げられます。(当初の予算金額に達した場合は、受付終了となります。)
参考:住宅金融支援機構「フラット35リノベ」
補助金を活用する時のポイントと注意点


補助金を活用する場合、注意した方がいいポイントが2つあります。まず、情報集めを確実に行うこと、そして素早い対応をすることです。詳しく説明していきましょう。
最新情報を確認して早い対応を
補助金の事業や税制は、年度ごとに少しずつ違います。そもそも、実施されるかどうかや対象となる工事、スケジュールなど確認して対応する必要があります。また、事業間で併用できるかどうかも異なるので確認しましょう。



事業は予算内で実施されるため、先着順で予算消化次第終了となる事業もあります。毎年3月のうちには来年度の実施概要がわかるので、公式Webサイトや事務局の問い合わせ先を確認し、最新情報をチェックしましょう。
パートナーの業者探しは早めに
リフォーム関連の補助金事業の申請は、登録済みの施工業者が実施する場合が多くあります。
補助金を使おうと思っていても、依頼予定の業者が補助金事業に未登録だった場合には、業者の登録から必要になり時間がかかります。できれば、申請の経験が豊富な業者を探して、依頼すると安心です。



補助金を申請するつもりであれば、締め切りに間に合うように、施工業者探しも早めに行いましょう。
申請から給付までの順番に注意
補助金事業の申請のタイミングは補助金によって違います。リフォームを完了し、代金支払い後に申請すればいいケースと、工事請負契約前に補助金申請が必要なケースがあるので、申請のタイミングを事前に確認しておけばミスが防げます。例えば、子育てグリーン住宅支援事業の場合は、申請から給付までの順番は、以下のとおりです。
- 工事請負契約
- 着工
- 引き渡し・精算
- 補助金交付申請
- 交付決定



補助金や減税などを前提で工事をする場合は、順番に注意してください。
まとめ
中古マンションの購入の際に使える補助金や減税制度を紹介しました。現在、国や自治体は、中古住宅の省エネルギー性能や耐震性・耐久性を向上させる工事について補助金事業や減税制度を行っています。
中古マンション購入時に活用できる補助金や減税制度は、制度の数も多く、条件やタイミングによって内容が大きく変わることもあります。「使える制度がわからない」「申請の準備が面倒」と感じるのも無理はありません。
実際、補助金の申請には、対象となる工事内容や期間、予算の調整など、専門的な知識が求められる場面もあります。一方で、うまく活用すれば、住まいの性能や快適性を高めながら、将来的な資産価値もアップできる魅力的な制度です。