頭金なしでマンション購入は可能?フルローンの5つのリスクと健全な資金計画

頭金なしでマンション購入を検討しているものの、「本当に購入できるのか」「フルローンにリスクはないのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

かつて住宅購入では「頭金は物件価格の2割」が常識とされていました。しかし近年は、フルローン(物件価格の100%を借り入れる住宅ローン)を利用できる金融機関が増え、あえて頭金を用意せずにマンションを購入する人も少なくありません。

一方で、頭金なしで中古マンションを購入する場合は、オーバーローンや金利上昇、修繕費負担などのリスクにも注意が必要です。

この記事では、頭金なしでマンションを購入する際のリスクや注意点、無理のない資金計画を立てるためのポイントについて解説します。

執筆者プロフィール
山﨑 裕佳子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/CFP認定者/証券外務員保有

通関士として通関業務、メーカーにて海外営業事務、銀行にてテラーなど経験し、FPの道へ。2022年「FP事務所MIRAI」設立。「家計の見直しでMIRAIを変える」をモットーに、家計相談、金融記事執筆、書籍監修など、幅広く活動している。

本記事の内容は2026年5月7日時点の情報に基づいており、不動産市場の状況や関連法規、税制などは将来変更される可能性があります。最新の情報については、公式の情報源をご確認ください。

目次

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頭金についての考え方「昔 vs 現在」

昨今の不動産価格の高騰や住宅ローンを取り巻く環境の変化により、頭金に対する考え方は変化しています。

【昔:貯めてから買う時代】

30年以上前の住宅ローン金利が5%~8%の時代は、借入額を減らすために頭金をできるだけ多く確保することが住宅購入のセオリーでした。金融機関の融資審査も厳しく、一般的に融資最大額は物件価格の8割までとされていたことも、「頭金2割」を常識化していました。

【現在:借りてから運用・温存する時代】

ゼロ金利政策が解除されて以降、住宅ローン金利は徐々に上がってきてはいるものの、いまだ低金利の範疇と捉えられているため、手元資金を頭金として使わずに温存して「運用などで増やせる」というメリットを重視する人が増えています。

金融機関の融資にも変化があり、「フルローン」(物件価格の100%)や、諸費用まで融資額に含める「オーバーローン」も一般的になりつつあります。

また、住宅ローン控除額の拡充や団体信用生命保険加入の安心感から、ローン残高という「借金」に対する負担感も薄らいでいます。

山﨑

このように、現代では「貯金がないから頭金なし」という消極的な理由だけでなく、「戦略的に現金を残す」ために頭金を出さない選択肢が存在します。

しかし、この方法には「落とし穴」と「注意点」があります。これはあくまで「十分な現金を保有している人」の戦略であり、貯蓄がゼロの状態でフルローンを組むことはリスクが大きくなることを認識したほうがいいです。

中古マンション購入時にかかる「諸費用」

中古マンションを購入する際、物件価格以外に物件価格の約7〜10%の「諸費用」がかかります。諸費用をローンに含めた場合、オーバーローンになり、後のライフプランに悪影響を及ぼしてしまうことも考えられます。そのため、諸費用を「現金で払うのか、それとも諸費用を含めてローンで賄うのか」を慎重に検討する必要があります。

主な諸費用の内訳

・仲介手数料: (400万円以上の物件の場合)物件価格×3%+ 6万円(+消費税)

・印紙税: 売買契約書やローン契約書に貼付する印税

・登録免許税: 登記(所有権移転、抵当権設定)にかかる税金

・司法書士報酬: 登記手続きの代行費用

・不動産取得税: 入居後に通知が来る都道府県税

・ローン事務手数料・保証料: 金融機関に支払う費用

・火災保険料: 期間や内容により異なる

・精算金: 固定資産税や管理費・修繕積立金の月割り精算分

例えば、4,000万円の中古マンションを購入する場合、諸費用だけで300万〜400万円程度が必要になります。

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これを全額借り入れる「オーバーローン」は、当然返済負担を増大させてしまいます。

 頭金なし(フルローン)で購入する5つのリスク

中古マンションを頭金なしで購入した場合に生じるリスクを5つあげます。

① 「オーバーローン」による売却不能リスク

マンションの価値は購入直後から、または経年とともに下落するのが一般的です。

中古マンションは新築マンションに比べると、購入直後からの価格の下落幅が小さく安定していると言われますが、市場環境の変化や建物の老朽化により、借入額が大きいほど、住宅ローンの残高がマンション価値を上回るオーバーローンが起きやすいことも事実です。

その状態で、転勤、離婚、介護や近隣トラブルなど何らかの理由で「今すぐ売らなければならない」状況となっても、売却額でローンを完済できなければ、不足分を現金で補填する必要がでてきます。

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手元に現金を残さずにフルローンを組んだ人にとっては、この「追い金」が以後の生活の足枷になる可能性があります。

② 修繕積立金の上昇と維持費の圧迫

中古マンションは、築年数が経過するほど管理費や修繕積立金が上昇する傾向にあります。

ローンの返済額は一定でも、マンション自体の維持費が月々1万〜2万円上がることは珍しくありません。フルローンで限界まで借りていると、この数万円の上昇が家計を破綻させることにもなりかねません。

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また、築年数が古い中古マンションほど、大規模修繕の際に、積立金不足により数十万円の一時金を請求されることもあります。

③ 金利上昇への耐性が低い

住宅ローン利用者の約8割は変動金利を利用しています。変動金利は上昇傾向にあるものの、固定金利と比較すれば低い水準にあることが要因と考えられます。

また、当初優遇金利などを適用すれば、さらに適用金利を下げられるため、目先の金利と返済額の比較から変動金利を選ぶことも多くなっています。

しかし、金利自体の上昇や優遇金利の適用が終了すると適用金利があがり、月々の返済額が増えてしまい、結果総支払額が増加します。

山﨑

金利の上昇は残債が多いほど、総支払額に与えるインパクトが大きくなります。

④ 老後資金への悪影響

購入時の年齢にもよりますが、フルローンは完済時期が遅くなりがちです。

頭金を入れない分、毎月の返済額が高くなります。ローンの返済が定年後も続く場合、老後の年金生活を圧迫する可能性があります。

山﨑

中古マンションは将来的にリフォーム費用も必要になるため、住居費が年金生活に重くのしかかることも考慮しておいてください。

⑤ 融資条件の悪化

金融機関によっては、頭金の有無で適用金利に差をつける場合があります。

自己資金が10%以上ある場合と、0%の場合では、融資実行時の金利が0.1%〜0.2%ほど異なることがあります。

山﨑

「わずかな差」に見えますが、長期間にわたる返済では数百万単位の総支払額の差となって現れます。

健全な資金計画とは

「頭金なし」が必ずしも悪ではありません。しかし、それは「出せる現金はあるが、あえて出さない」という余裕がある場合に限ります。もし「貯金がないから頭金なし」という状況である場合、フルローンは極力避けたほうが無難です。

どうしても借入額を増やさなければならない場合は、次のステップを検討してください。

STEP
諸費用分だけは現金で用意する

諸費用分として、 物件価格の10%程度の現金は、最低限確保すべきでしょう。これによりオーバーローン状態を回避しやすくなります。

STEP
生活防衛資金の確保

病気や怪我で働けなくなり収入が一時的に途絶えてしまう不測の事態に備えて、半年〜1年分の生活費は手元に残してください。

STEP
資産価値の落ちにくい物件選び

フルローンを組むなら、「出口戦略(売却のしやすさ)」が重要です。将来、売却するときのことを考えて立地や管理状況を見極めるようにしましょう。

中古マンションを頭金なしで購入することは、言うなれば、「将来の自由度を前借りする」行為ともいえます。低金利という恩恵だけに目を向けず、30年後の自分や家族が住宅ローンに苦しめられないか、冷静なシミュレーションが不可欠です。

山﨑

購入は「ゴール」ではなく、そこから始まる長い生活の「スタート」です。予期せぬ修繕やライフスタイルの変化に耐えうる、余裕を持った資金計画が大切です。

資産価値の落ちにくい物件選びや、適正な借入額などについて不安がある場合は、専門家の意見を仰ぐなど能動的な行動が不可欠です。

この記事の制作体制
  • FP事務所MIRAI 代表。通関士として通関業務、メーカーにて海外営業事務、銀行にてテラーなど経験し、FPの道へ。2022年「FP事務所MIRAI」設立。「家計の見直しでMIRAIを変える」をモットーに、家計相談、金融記事執筆、書籍監修など、幅広く活動している。

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