中古マンションを現金一括で購入しようか、それとも住宅ローンを利用しようか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。昨今、中古マンションに目を向ける人が増えています。その背景のひとつには新築マンションの価格高騰があげられます。
とはいえ、中古といっても高額な買い物であるため、住宅ローンを利用する人が多い一方で、「現金一括購入」を検討する声も聞かれます。
本記事では、住宅ローン金利が上昇傾向にある今、中古マンションを現金一括で購入するメリットとデメリットについて考えてみます。

1級ファイナンシャル・プランニング技能士/CFP認定者/証券外務員保有
通関士として通関業務、メーカーにて海外営業事務、銀行にてテラーなど経験し、FPの道へ。2022年「FP事務所MIRAI」設立。「家計の見直しでMIRAIを変える」をモットーに、家計相談、金融記事執筆、書籍監修など、幅広く活動している。
本記事の内容は2026年7月9日時点の情報に基づいており、不動産市場の状況や関連法規、税制などは将来変更される可能性があります。最新の情報については、公式の情報源をご確認ください。
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住宅ローン金利の動向から考える「現金一括購入」が注目される背景
超低金利時代と言われていた頃、多くの人は迷いなく住宅ローンを利用してマンションを購入してきました。ところが、今のように、固定金利、変動金利とも上昇している状況下で、一部ですが「住宅ローンを組まずに現金一括で購入すること」を検討する人もいるようです。
そこで、本記事ではマンションの「現金一括購入」のメリット、デメリットを解説します。
住宅ローンの金利と住宅ローン控除の関係
住宅ローンの金利タイプは、長期金利(10年物国債利回り)に連動する「固定金利型」と、足元の政策金利に連動する「変動金利型」の大きく分けると2種類です。
日本は2000年以降の金融緩和政策により、長きにわたり「変動金利」は歴史的な低水準にありました。住宅ローン控除の還元率よりも変動金利の利率が低いという、いわゆる「逆ザヤ現象」が起こり、ローンは「借りられるだけ借りたほうが得」という考え方をする人もいました。
山﨑しかし時は過ぎ、そうした状況に変化が起きています。
現在、固定金利は3%を超え、変動金利も1%台が主流です。(2026年7月)これからローンを組む場合の住宅ローン控除の還元率は0.7%ですので、「借りたほうが得」という考え方はできなくなっています。
中古マンションを現金一括購入するメリット
まずは、マンションを現金一括購入するメリットを考えてみます。
① 住宅ローン金利を支払う必要がない
最大のメリットは、当然ながら住宅ローンの利息負担が発生しないことです。
仮に4,000万円の中古マンションを金利1.5%、返済期間35年のフルローンで購入すると、総支払額は5,144万円になりますので、1,100万円超の利息がつくことになります。



しかし、現金一括購入であれば、この利息負担がゼロ、つまり、総支払額は4,000万円ですみます。
とくに変動金利では、この先、金利が上がれば毎月の返済額が増えるというリスクにさらされます。現金購入であれば、この先、どんなに金利が上昇しても自分の住まいには何の影響もありません。
総支払額を最も低く抑える方法が「現金一括購入」です。
② 住宅ローン関係の「諸費用」をカットできる
現金購入のメリットは金利負担だけではありません。見落としがちなのが、「ローンを組む」際に生じる諸費用です。



マンション購入の際には次のような諸費用がかかります。しかし、現金購入では、以下の費用がすべて不要です。
- 融資事務手数料(借入額の2.2%程度、4,000万円の借入なら約88万円)
- ローン保証料
- 抵当権設定の登録免許税および司法書士報酬
- 契約書に貼る印紙代(ローン契約書分)
住宅ローンを利用すると、物件価格とは別に数十万〜百万円単位の初期費用がかかりますが、「現金一括購入」ならこれらは不要です。その分、引っ越し代や、新居の家具、家電購入費にあてることもできます。
③ ローン審査が不要なので購入手続きがスムーズ
住宅ローンを利用するには「事前審査」と「本審査」を通過しなければなりません。特に中古物件は、築年数や管理状態によって物件の担保価値が低いとみなされる場合があり、審査が厳しくなったり、希望額を借りられなかったりすることがあります。また、購入者の年齢や健康状態、職歴なども細かくチェックされます。
しかし、 現金購入であればこれらの審査が一切不要なため、収入のあるなしにかかわらず希望の物件を手に入れることができます。



職種、年収、年齢に関係なく、資金さえあれば確実に購入できます。
④ 住居負担が軽くなる
マンションにかかる住居費は「住宅ローン」だけではありません。毎月「管理費・修繕積立金」、年1回の「固定資産税」が必要です。



もし住宅ローンがなければ、毎月の負担は「管理費・修繕積立金」のみになるため、住居費としての月々の支出は劇的に抑えられます。
万一、何らかの理由で住宅ローンの返済が滞ってしまうと、マンションを売って返済しなければならないケースも出てきますが、「現金一括購入」であれば、「家を奪われる」という最悪の事態は避けられます。
⑤ 精神的な安心感が得られる
日々の生活を送るうえで「借金がない」という安心感は決して小さくありません。



住宅は生活の基盤です。住まいを完全に自分の資産として保有できれば、老後の安心感や精神的なゆとりは各段に大きくなります。
中古マンションを現金一括購入するデメリット
つぎに、「現金一括購入」のデメリットを考えてみます。
① 手元資金が大幅に減る
数千万円という大金でマンションを購入することで、手元の現金が一気に減ります。
例えば5,000万円の金融資産を持つ人が4,000万円の中古マンションを購入すると、手元資金は1,000万円になってしまいます。たとえ、ライフプランを立てたうえでの現金購入という選択であったとしても、想定外のことが起こるのが人生です。
急な病気や怪我による医療費、想定外に必要になる教育費、親の介護、中古マンションの突発的な修繕やリフォームなど、まとまった資金が必要なイベントは突然やってくるかもしれません。



手元資金を減らしすぎてしまうと、こうした事態への対応力が低下します。
住宅は現金化するのに時間がかかる資産です。いざというときに対応できる余力がなくなることに注意が必要です。
② 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の恩恵が受けられない
住宅ローン控除は、借入期間10年以上の場合に利用できる制度で、年末のローン残高の0.7%の金額が最大13年間にわたって所得税や住民税から還付される制度です。
住宅ローンを利用している人のための制度ですので、現金一括購入では、この税制優遇は受けられません。



還付される金額は人によって異なりますが、還付金の累計が数百万円になることもあります。


③「団体信用生命保険(団信)」に加入できない
多くの金融機関では、住宅ローンを組む際、「団体信用生命保険」の加入が義務付けられます。
団体信用生命保険とは、契約者の死亡や高度障害などの理由で住宅ローンが返済できなくなった場合にローンの残債を保険金で一括返済してくれるもの。貸付側の金融機関は貸付金を保険により回収することができ、借入側は、以後ローン返済なしでそのままマンションに住み続けることができます。



現金購入では団信に入ることはできないため、購入直後に万一のことがあっても、当然支払ってしまった現金は戻りません。


④ 投資機会を失う可能性がある
現金を住宅購入に充てることで、その資金を運用する機会を失う可能性があります。



数千万円の手元資金をマンション購入ではなく、投資運用資金に回し、住宅ローン金利以上の利回りを得ていたら、長期的に大きな資産拡大につながった可能性はあります。
中古マンションは現金一括購入と住宅ローンどちらがいい?
住宅ローン金利が上昇している状況下でマンション購入を考えるとき、「ローン」か「現金一括」の2択ではなく、リスク回避の観点から一定の頭金を入れて、ローン金額を抑えるような折衷案が現実的でしょう。
たとえば、住宅ローン控除の恩恵を受けるために必要最低限のローンを組み、控除期間の終了後、繰上げ返済をすれば総返済額は抑えられます。
あえてローンを組んでも資金に余力があれば、金利が上昇した場面で、繰上げ返済をするなどの選択もできます。
重要なのは、「現金で買えるか」ではなく、「現金で買った後も資金に一定の余裕があるか」という視点です。「生活防衛資金」「教育費」「老後資金」などを確保した上で、マンション購入に使っていい「現金」を計算することが大切です。



年齢や家族構成、今後のライフプランを見つめなおし、「手元資金」と「ローン」の最適なバランスを見極めてください。








