不動産売却をしたい場合の最初のステップは、「査定」で売却金額のイメージや見込みをつけることです。複数社の査定を受けることで、物件の現在の市場価値や、売却金額で住宅ローンを完済できるかどうかが分かり、売却するかどうかの判断基準となります。
しかし、複数社に売却の査定を依頼するもっとも重要な理由は、「自分の物件特性に合った依頼先を選び、どうすれば最も高く、効率的に売れるのか」を見極めることにあります。
近年売却査定額は、手間をかけずにAIでも簡単に出せるようになりました。また依頼先によってかなり金額が異なるので、その金額だけに惑わされてはいけません。その根拠や、不動産を売り切れる道筋がクリアであるかを確認することがとても重要です。査定金額が高いから、大手だから、という理由で依頼先を選ぶのは危険です。
大事なのは、物件特性が十分活かせる売却戦略をとれる会社を探し、高額売却への道筋をつけることなのです。
この記事では、査定が売却の成否を分ける重要なステップである理由と、査定を受けたときに確認するべきポイントを解説していきます。
1.不動産査定は仲介会社選びの判断材料になる
先ほど、査定を受けることが不動産会社選びの判断材料になると述べましたが、それにはどのような理由があるのかを説明していきましょう。
1-1.不動産売却の成功は仲介会社の力量によって変わってくる
不動産売却において、もっとも重要なのは不動産会社選びです。それは不動産売却に成功するかどうかは、不動産会社の力量にかかっているといっても過言ではないからです。
不動産会社は、物件の売り出しから買主との価格交渉まで、売却におけるほぼすべての工程を担ってくれる重要なパートナーといえます。しかし不動産会社の数はとても多く、見極めを誤ると望む結果を得にくくなってしまいます。
例えばマンション売却が得意な不動産会社に戸建ての売却を依頼しても、適切な価格設定ができないかもしれません。また物件の魅力をうまく引き出せずエリアのニーズに応じた販売戦略を立てられなければ、売却に時間がかかったり売却価格が低くなったりする可能性もあるでしょう。
そのような失敗を防ぐためには、力量をしっかりと見極めたうえで売却を依頼する不動産会社を選び、戦略を立ててもらわなければなりません。その糸口となるのが「不動産査定」なのです。
不動産査定サイトの選び方については、詳しく紹介しているこちらの記事をご覧ください。
1-2.査定は信頼できる会社を見極めるためのステップ
実際に不動産を売却するとなった場合、一般的には不動産会社の査定を受けるのがファーストステップです。不動産査定を受けるためには、不動産会社にコンタクトを取り査定を依頼し、実際に物件を見にきてもらいます。
そのうえで仲介を依頼する不動産会社を選びますが、そのときには査定額だけでなく、査定結果の説明や担当者の対応の良し悪しも含めて検討する方がほとんどでしょう。つまり、査定は不動産会社が物件の価値を見極めるための呼び水みたいなもので、売主が不動産会社を見極めるチャンスでもあるのです。
査定は単に売却予想価格を出してもらうものではなく、不動産会社選びの判断材料とするものであると認識したうえで受けることが重要です。
2.ココで差が出る!売却に成功する査定の4つの心構え
繰り返しますが、不動産会社選びにおける最初の判断材料であり、入り口となるのが査定です。売却の成否を決めかねないともいえる査定を受けるときの心構えを、4つご紹介します。
2-1.査定前に自分で相場を調べるべし
査定を受ける前に、自分であらかじめ相場を調べておくことも重要です。不動産会社のなかには、専任系の契約(不動産会社と結ぶ媒介契約のうち、1社のみと契約を結ぶ方法)をとることを目的に、査定額を大幅に盛って提示してくる悪徳業者もいるからです。
そんなとき、自分でも不動産の相場を事前に調査しておけば、業者が出す査定額が適正かどうかを見抜き、悪徳業者に騙されることもありません。過去の売買の取引実績が掲載されているサイトで、売却したい不動産と条件が類似している物件の売却価格を調べておくとよいでしょう
2-1-1.不動産価格の相場を自分で調べる方法
不動産価格の相場を調べるには、過去の取引情報が掲載されている以下のサービスを活用するのがおすすめです。
・REINS Market Information(レインズマーケットインフォメーション)
REINS Market Informationは、国土交通省が指定する不動産流通機構が運営している不動産流通準情報システムです。全国に4つある指定流通機構が保有する、実際の成約価格などの取引データを検索・閲覧できます。ただし土地には対応していません。
土地総合情報システムは、国土交通省が運営している不動産の取引価格情報を検索できるサイトです。実際に取引をおこなった人が質問に回答したアンケート結果がもとになっているため、情報の精度はREINS Market Informationよりはやや劣ると考えられますが、REINSでは調べられない土地の取引情報を調べるのに役立ちます。
一括査定サイトのすまいステップでは、都道府県別の相場をチェックできるデータベースを提供しています。トップページからスクロールすると日本地図が表示されるので、物件種別や都道府県、エリアを絞り込んでいくことで相場が確認できます。
上部に表示される「無料査定スタート」から進めると一括査定の依頼に進んでしまうので、まずは相場を確認したいだけの場合には注意しましょう。
2-2.売却査定は必ず複数の会社に依頼すべし
不動産売却で査定を受けるときにもっとも重要なのは、複数社に依頼することです。
そもそもですが、査定額の出し方は法律で決まっているものではありません。各社が独自に設けたルールや基準に沿って算出します。そのため同じ不動産の査定を受けたとしても、出される査定額は会社によって異なるのが一般的で、場合によっては数百万円もの差があることも。
しかし1社の査定しか受けていなければ、その査定額が相場感から大きく外れていないか判断しようがありません。また査定額を出すスピード感や担当者の丁寧さ、説明のうまさなど、査定額以外の部分についても、複数社に依頼しなければ比較自体ができなくなってしまいます。そのため不動産査定においては、複数社に依頼することが定石です。
なお査定を受ける場合、一度の申し込みで複数社に依頼を出せる一括査定サイトを活用すると便利です。ただし一括査定サイトは相見積もりが前提となっているので、契約を取るために価格を高く見積もる不動産会社も少なくありません。
コストがかかる一括査定サイトを利用していない優良な不動産会社も多いので、気になる会社には個別で査定を依頼することも検討しましょう。
2-3.物件特性が合う会社や特徴ある物件を扱う会社に査定を依頼すべし
不動産会社には、それぞれ「都心部のマンションが得意」「〇〇市の土地取引がメイン」など、得意不得意としている地域や物件種別があります。
そのため過去の売買実績などの情報から、対象の不動産があるエリアや物件種別に強い会社を選ぶと、適正な査定が期待できるのはもちろん、その後の売却もスムーズに進む可能性が高くなります。
とくに集合住宅であるマンションと、個別性が高い戸建てでは、査定で見るポイントや売り出し時にアピールするべきポイントが大きく異なるため、物件種別ごとの実績は必ずチェックしましょう。
さらに他とは異なる特徴を持つ会社も要チェックです。例えばリノベーション会社が運営している不動産サイトなら、リノベするために購入する中古物件探しから依頼したいと考える顧客が相談に来ます。どのエリアにどれくらい物件需要があるのかや、リノベしたい顧客層のデータが溜まっているため、一般の不動産会社とは異なる角度からの売却活動が期待できるでしょう。
2-4.仲介を依頼する会社は査定額ではなく、”信頼できるか”で選ぶべし
査定を受けた不動産会社のなかから売却を依頼する会社を決めるときには「査定額が高いから」という理由だけで選ぶのは避けましょう。
不動産売却は、査定から売却活動を経て決済・引き渡しに至るまで、平均で3カ月もの長い時間がかかります。それらすべてのステップで、総合窓口となるのは不動産会社です。
だからこそ、売却活動に熱心に取り組んでくれそうか、根拠を持って誠実に説明をしてくれるかなど、担当者が信頼できる人物かどうかを査定時に見極めることが大切です。いくら査定額が高くても、担当者の熱意が欠けて結果的に買主が見つからなかったり、値下げすることになったりすれば元も子もありません。
不動産会社を選ぶときには、査定額や目先の特典・オプションなどに釣られて契約し、後悔しないよう注意しましょう。
3.査定の基礎知識|種類と特徴
ここからは、不動産査定を受けるときに押さえておくべき基礎知識を紹介していきます。まずは査定の種類と特徴を確認しましょう。
3-1.気軽に大まかな査定額を調べるなら「机上査定」
机上(きじょう)査定とは、物件の所在地や種類、建物の構造、築年数などの書類上の情報と、近隣の類似物件の成約価格など定量データをもとに、文字通りデスク上で「大まかな」査定額を出す方法です。査定する不動産を実際に見ることなく簡便的におこなわれるため「簡易査定」とも呼ばれます。
机上(簡易)査定について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
3-2.精度の高い査定額を希望するなら「訪問査定」
訪問査定は、簡易査定の情報に加え、実際に物件を訪問して現地調査し、劣化状況や日当たり、周辺環境なども加味して正確な査定額を出す方法です。不動産売却するときには、簡易査定は受けなくても構いませんが、訪問査定は必ず受けなければなりません。
訪問査定について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
3-3.売却が決まっているならまずは「一括査定」
売却すると決めているなら、まずは一括査定サイトを利用するのがおすすめです。一括査定サイトとは、物件情報を一度入力するだけで、登録している複数の不動産業者に査定依頼が出せるサイトを指します。
大手不動産会社はもちろん、中小も含めて数多くの不動産会社があるなかから、どこに査定を依頼すれば良いのか分からない場合には、ある程度絞り込まれたなかから選べるので効率的です。
おすすめの一括査定サイトについてまとめたこちらの記事もあわせてご覧ください。
4.査定の基礎知識|流れ
不動産の査定を受けるときには、まず複数社の机上査定を受けて市場相場を把握してから訪問査定に進むのが一般的です。不動産売却において机上査定は必須ではありません。しかし不動産会社の対応スピードを見極めたり比較検討したりすることで、訪問査定を依頼する会社を絞り込むのに役立つので、段階を踏んで進めることをおすすめします。
机上査定は、以下の手順で進めます。
査定を受けたい不動産会社がすでに決まっている場合は、直接電話やメールで問い合わせたり、サイト上の査定依頼フォームで必要情報を伝えたりして、机上査定を依頼しましょう。とくに念頭にない場合には、一括査定サイトを利用すると便利です。机上査定の結果は、早ければ30分から1時間、遅くとも1〜3日以内に届きます。
査定結果が届いたら、査定価格や不動産会社の対応などを比較したうえで、訪問査定に進みます。
訪問査定は実際に物件を見に来てもらう必要があるので、不動産会社の担当者と日程をすりあわせる、実際に訪問を受けるなど、ステップは複雑になり時間も長くかかります。しかし担当者とのコミュニケーションが密になるため、より信頼性や相性を見極めやすくなるのがメリットです。
訪問査定の結果が出るのにかかる期間、1週間程度を目安としておくとよいでしょう。
5.査定の基礎知識|査定額の計算方法
不動産会社は、査定額をどのように算出しているのでしょうか。ここでは主となる3つの計算方法をご紹介します。
3つの査定方法は物件種別によって異なるため、基本的に同じ不動産であれば会社によって算出方法が変わるということはありません。
5-1.取引事例比較法(マンション・土地)
取引事例比較法は、主にマンションの住戸や土地の査定額を出すときに用いられる方法です。取引事例比較法では、査定する物件と条件が近い成約事例を集め、特殊なケースは排除し、必要に応じて補正。さらに立地条件や物件が持つ個別の事情、市場の変化などを考慮したうえで査定額を算出します。
なお取引事例比較法は、比較する事例の選定や比較項目を不動産会社が自由に設定できるので、不動産会社によって査定内容に違いが出やすいことは留意しておきましょう。
5-2.原価法(戸建ての建物部分)
原価法は、主に個別性が高い戸建ての建物部分に対して用いられる方法です。原価法では、不動産の再調達原価(同じ建物を同じ場所に建てる場合にかかる費用)を求め、法定耐用年数と経過年数に応じた価値の低下分を減額して建物の価値を推定します。
5-3.収益還元法(投資用物件)
収益還元法は、主に投資用物件に対して用いられる査定方法です。査定する不動産が、今後どれだけの収益を生み出すことができるのかを計算し、それをもとに査定額を算出します。収益還元法には、1年間の純利益を還元利回り(不動産の資産価値を評価する指標)で割る「直接還元法」と、一定期間内に不動産から得られる収益と売却益を定められた割引率で割る「DCF法」があります。
6.査定の基礎知識|査定書の見方
不動産会社の査定を受けると、次のような「査定書」が提出されます。
ここからは査定書で見るべき4つのポイントを解説します。
①査定価格
まずは査定価格を確認します。複数社の査定を受けている場合は、他の会社と比較して高すぎたり安すぎたりしていないかチェックしましょう。
②査定額の根拠
査定額を出すためにどのような計算式が使われているのか、増加や減価がされている場合にはどういった要素が影響しているのか確認します。
③類似物件の事例
取引事例比較法で査定額が出されている場合には、記載されている事例が査定を受けた物件と本当に類似しているかを確認しましょう。
④コメントが丁寧か
不動産会社が記載しているコメントの内容も、重要なチェック項目です。使い回しのコメントではなく、物件に応じた内容が詳細に記載されていればいるほど信頼性は高いと考えられます。ただし特筆すべき内容がないときには、コメントが未記入の場合もあります。コメントがないからといって、必ずしも信用できないとは限らないので、実際の対応も考慮して判断しましょう。
査定書の見方について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
7.査定結果から読み取る良い不動産会社の見極め方
査定結果が出ると、つい「一番高い査定額をつけた不動産会社に依頼して高く売ろう」と考えてしまいがちです。しかし売却を依頼する会社を査定額だけで選んでしまうと「査定額は高かったけど、結果的に成約価格はお幅に値下げした」という後悔に繋がってしまいかねません。
そうならないためには、「どこまで本気で不動産の売却に向き合ってくれるのか」を査定結果から読み取り、会社・担当者レベルで見極めることが重要です。そこで、ここでは査定結果のどこに着目すればよいのか、見極めポイントをご紹介します。
7-1.査定額が相場とかけ離れていない
出された査定額が、あらかじめ自身で調べておいた相場と明らかにかけ離れた金額を提示してきた会社は、相場感の知識や実績が乏しいと考えられるので遠慮なく切りましょう。
とくに相場よりも大幅に高い査定額を出す不動産会社は「高く売れる」と印象づけて、媒介契約を結んでもらおうとしている可能性が高いため要注意です。媒介契約を結んだあとに、あれこれ理由をつけてどんどん値下げされてしまうかもしれません。
査定の時点で誠実でないと思われる会社に、大切な不動産の売却を任せることは避けましょう。
7-2.査定額の根拠が明確で納得できるものである
頼れるプロかどうかを見極めるためには、査定額の根拠を説明してもらうのがおすすめです。
多くの人にとって、不動産売却は初めての経験になるはずです。不安を抱えるなか多くの手続きを踏まねばならず、しかも専門的な知識が必要です。それにもかかわらず「これは知らなくても大丈夫です」とうやむやにしたり、理解が難しい専門用語ばかりで説明したりするような相手とは、信頼関係を築けないので遠慮なく断りましょう。
不動産売却は高額な取引となるうえ、売却期間は平均で3カ月にも及びます。その間、信頼してお願いできる相手であるかどうかが、会社選びにおいてはもっとも重要です。
7-3.担当者がしっかりした販売戦略を描けている
査定額に納得がいき、査定額の根拠が明確で納得できるものである場合、最後は担当者の人柄や誠実さを見極めて選びましょう。
会社自体に信頼と実績があり、問題がないのであれば、実際に売却に取り組むのは担当者である以上、あとはその人が信頼に値するかどうかです。本当に売ろうとしてくれるかの本気度は、販売戦略に現れます。優秀な担当者なら、査定の段階でもどんな販売戦略なら売れそうかまで考え提案してくれているはずです。
机上査定から訪問査定を通してコミュニケーションを取るなかで「この人なら安心して任せられる」と思える担当者がいる会社に任せましょう。
8.まとめ
不動産売却は、自分の物件をもっとも高く、効率的に売却してくれる依頼先選びが成功のカギを握ります。
査定額が高いから、大手不動産会社だからといった理由だけで、大切な不動産の売却を依頼する会社を選んではいけません。
安心して任せられる不動産会社選びの最初の判断材料となり、入口となるのが「査定」なのです。本記事の内容を参考に、あなたが最も信頼できる一社を査定によって見極めてくださいね。
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