相続などで自宅以外の不動産を所有する機会は、誰にでも訪れる可能性があります。
うまく資産運用できれば良いのですが、遠隔地に不動産があったり、資産運用する時間もないので速やかに売却して現金に換えたいと言う方もいるでしょう。
不動産を売却すると、利益の金額により税金の支払いが必要になります。さらに利益が出た場合には確定申告の義務も生まれます。
そこでスムーズに不動産の売却を進めるために、不動産売却に関する税金や確定申告の流れと必要書類を見ていきましょう。
1.不動産売却で発生する税金とは?譲渡所得税以外にもある?
不動産を売却して利益が発生した場合、譲渡所得税(所得税、復興特別所得税、住民税)が課されることがあります。利益にかかる税金は、この譲渡所得税のみです。
ただし、不動産売却に伴う諸費用の中には、印紙税や登録免許税などの税金も含まれています。また、不動産会社に支払う仲介手数料には消費税も発生します。
このように、利益に対しては譲渡所得税がかかる可能性がありますが、売却に伴って印紙税、登録免許税、消費税なども発生するため、費用全体を把握し、資金計画を立てることが大切です。
2.不動産売却時に確定申告は必要?
不動産を売却する場合、利益の状況に応じて確定申告が必要な場合と不要な場合があります。
どのような場合に確定申告が必要になるかを事前に理解しておきましょう。
ここでは、確定申告が必要なケースと不要なケースについて詳しく解説します。
2-1.確定申告とは
確定申告とは、1年間(1月1日〜12月31日)に生じた所得と、その所得に対する所得税額を算出し、納税する手続きのことです。
通常、原則2月16日〜3月15日までの間に前年分の確定申告を行います。日時は土日の関係で1〜2日ずれることもあります。
確定申告をする際には、源泉徴収票や領収書などの書類を準備し、申告書を作成します。提出方法は、e-Tax(電子申告)、郵送、窓口への提出の3通りです。
確定申告が必要にもかかわらず手続きをしなかった場合は、延滞税などが発生する可能性があるため注意が必要です。
2-2.確定申告が必要なケース|売却に譲渡所得が発生した場合
不動産を売却して譲渡所得が発生した場合には、確定申告が必要です。
譲渡所得とは、売却価格から、その不動産の取得費(購入時にかかった費用)と譲渡費用(売却時にかかった費用)を差し引いたものです。
譲渡所得は申告分離課税の対象となるため、他の所得(給与所得、利子所得など)とは別に税額を計算する必要があります。
譲渡所得が発生した場合は、譲渡所得税がかかる可能性があります。譲渡所得税とは、所得税、復興特別所得税、住民税を合わせたものです。
不動産の所有期間に応じて以下の税率が適用されます。
・5年以下:39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
・5年超:20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
課税譲渡所得(譲渡所得から特別控除を差し引いたもの)に上記の税率を掛けて、譲渡所得税額が算出されます。
譲渡所得が発生した場合は、確定申告を忘れないようにしましょう。
参考:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
2-3.確定申告が必要なケース|特別控除を利用する場合
不動産を売却する際、特別控除を利用する場合には確定申告が必要です。特別控除を適用することで、課税譲渡所得額が減り、税負担を軽減できます。
例えば、マイホームの3,000万円特例が適用されると、譲渡所得額から最大3,000万円が控除されます。そのため、売却による利益が3,000万円以下の場合は、非課税となり税金がかかりません。
特別控除は自動的に適用されるわけではないため、確定申告が必要であることを理解しておきましょう。
2-4.確定申告が不要なケース|売却で利益が出なかった場合
不動産を売却して譲渡所得が発生しなかった場合、確定申告は必要ありません。
譲渡所得は「売却価格 −(取得費+譲渡費用)」で計算されるため、売却価格が低く購入時や売却時の費用(仲介手数料、登記費用など)が高い場合は、譲渡所得がゼロとなり、税金は発生せず確定申告も不要です。
譲渡所得が発生した場合は確定申告が必要ですが、発生しない場合は確定申告は基本的に不要であることを覚えておきましょう。
2-5.損失が出ても確定申告はした方が良い
不動産を売却して譲渡損失が発生した場合、基本的には確定申告は不要です。
ただし、以下の特例を適用して損失の損益通算や繰越控除を行う予定がある場合は、確定申告が必要になります。
・マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
・特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
損益通算とは、赤字を他の所得の黒字と相殺する制度です。
また、繰越控除により、損益通算で控除しきれなかった赤字は、翌年以降最大3年間繰り越して控除することができます。
これらの制度を利用することで、課税所得が減少し、税負担を軽減できます。
参考:国税庁「マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
参考:国税庁「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
3.不動産売却時の確定申告のやり方は?
不動産売却時の確定申告の進め方を事前に理解しておくことで、スムーズに手続きを行うことができます。確定申告には期限があるため、早めの準備が大切です。
ここでは、不動産売却時の確定申告の方法と進め方について見ていきましょう。
3-1.①確定申告に必要な書類を準備する
まず、確定申告に必要な書類を準備しましょう。
申告に必要な主な書類は、以下のとおりです。
・確定申告書 第一表・第二表
・確定申告書第三表(分離課税用)
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
・不動産譲渡時の資料(売買契約書、固定資産税精算書、領収書など)
・不動産取得時の資料(売買契約書、固定資産税精算書、領収書など)
特に初めての場合、確定申告書の作成に時間がかかることがあるため、早めに準備することをおすすめします。
3-1-1.確定申告書はどうやって手に入れる?
確定申告書の第一表・第二表や、第三表(分離課税用)は、税務署の窓口や国税庁のサイトで入手できます。いずれも無料で取得可能です。
3-2.②譲渡所得の内訳をまとめる
売却した資産の詳細を記載する書類が「譲渡所得の内訳書」です。
譲渡所得の内訳書には、売却した不動産の所在地や面積、利用状況、売買契約日、引き渡し日、売却価格、共有者の情報、買主の情報、経費、譲渡所得などを記載します。
手書きで作成することもできますし、国税庁のサイト「確定申告書作成コーナー」で必要事項を入力して作成することも可能です。
譲渡所得の内訳書を作成することで、譲渡所得や経費の金額をしっかりと把握できます。金額に誤りがないよう、領収書などを参考にして正確に作成しましょう。
3-3.③確定申告書等の書類を記入する
確定申告書の第一表・第二表や第三表(分離課税用)を作成します。申告書を作成する際には、国税庁が提供している手引きを参考にすることをおすすめします。
手引きは、国税庁のサイトで取得が可能です。
また、状況によって記載内容が異なることがあるため、不明点や疑問があれば税務署に問い合わせましょう。
確定申告は重要な手続きですので、金額に誤りがないように注意してください。
3-4.④税務署に確定申告書等を提出する
確定申告に必要な書類を準備し、申告書などの作成が完了したら、税務署に提出します。
確定申告書の提出方法は、以下のとおりです。
・e-Tax
・郵送
・窓口
e-Taxは国税電子申告・納税システムで、オンラインで手続きを完了することができます。近くに税務署がない方でも安心です。また、管轄の税務署に郵送するか、窓口に持参して提出することもできます。
確定申告の期間内に提出できるよう、しっかりとスケジュール管理を行いましょう。
3-5.⑤算出された所得税を納税する
不動産売却によって所得税などが発生する場合は、期限内に納税を完了しましょう。税金は以下の方法で納付できます。
・振替納税
・ダイレクト納付(e-Taxの口座振替)
・インターネットバンキング納付
・クレジットカード納付
・スマホアプリ納付
・コンビニ納付
・現金納付
所得税や復興特別所得税の納期限は3月15日ですので、忘れないようにしましょう。
4.不動産売却時の確定申告で必要な書類一覧
不動産を売却した際の確定申告で、必要な書類と入手方法は以下のとおりです。
書類の準備に時間がかかることもあるため、手元にない場合は早めに取得するようにしましょう。
5.不動産の売却で特例や控除を受けるときに必要な書類一覧
不動産を売却する際、特例や控除を受ける場合には確定申告が必要です。特例や控除を受けることで、所得税などの税負担が軽減され、手元により多くの資金を残すことができます。
特例や控除によって必要な書類が異なるため、事前に確認しておくことで、準備や手続きをスムーズに進めることが可能です。
ここでは、不動産売却に伴う特例や控除に必要な書類について見ていきましょう。
5-1.マイホームの3,000万円特例を利用する場合
マイホームを売却した場合、所有期間に関係なく3,000万円の特別控除を受けることができます。この特別控除により、譲渡所得が3,000万円以下であれば税金はかかりません。
3,000万円の特別控除を受けるには、確定申告書に加え、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)が必要です。また、売買契約日の前日においてマイホームの所在地と住民票の住所が異なる場合は、戸籍の附票の写しなどの書類も必要となります。
必ず提出が必要な書類一覧は以下のとおりです。
・譲渡所得の内訳署(確定申告書付表兼計算明細書)
参考:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
5-2.居住用財産を売却した場合の軽減税率の特例
居住用財産を売却した場合の軽減税率の特例(10年超所有軽減税率の特例)とは、マイホームの所有期間が10年以上で一定の要件を満たす場合に適用される特例です。マイホームの3,000万円特例と併用することも可能です。
必ず提出が必要な書類は以下のとおりです。
・確定申告書
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
・登記事項証明書
また、売買契約日の前日にマイホームの所在地と住民票の住所が異なる場合は、戸籍の附票の写しなどの書類も必要です。
参考:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
5-3.相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例
相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例は、相続で取得した不動産を、相続の開始日から3年10ヶ月以内に売却した場合、相続税のうち一定額を取得費に加算でき、税負担を軽減することができる制度です。
取得費加算の特例を適用する場合、必ず提出が必要な書類は以下のとおりです。
・確定申告書
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
・相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
参考:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
5-4.被相続人の居住用財産を売却した場合の3,000万円控除の特例
被相続人の居住用財産を売却した場合の3,000万円控除の特例は、相続した居住用財産を特定の期間(平成28年4月1日〜令和9年12月31日まで)に売却し、一定の要件をクリアしている場合に、最高3,000万円控除される特例です。
要件には「昭和56年5月31日以前に建築されたこと」「区分所有建物登記の建物ではない」などがあります。
この特例を受ける場合、必ず提出が必要な書類は以下のとおりです。
・確定申告書
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
・登記事項証明書
・被相続人居住用家屋等確認書
参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
5-5.特定居住用財産の買換え特例
特定居住用財産の買換え特例は、所有期間や居住期間が10年以上あるなど、一定の要件をクリアする不動産を売却した場合に、利益を将来に繰り延べることができる特例です。利益を繰り延べることで、売却した年にかかる税負担を軽減できます。
この特例を受ける場合、提出が必要な書類は以下のとおりです。
・確定申告書
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
・売却資産に関する書類(家屋の敷地や借地権が記載された書類等)
・登記事項証明書
・売買契約書の写し
参考:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」
5-6.マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、マイホームを売却して損失が生じ、一定の要件を満たす場合に損益通算や繰越控除ができる特例です。
要件には「所有期間が5年を超える」「新しく購入する家で10年以上のローンを利用する」などがあります。
この特例を受ける場合、提出が必要な書類は以下のとおりです。
・確定申告書
・住宅ローンの残高証明書
・登記事項証明書
参考:国税庁「マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
5-7.譲渡所得から最高 5,000万円までの特別控除を差し引く特例
譲渡所得から最高 5,000万円までの特別控除を差し引く特例は、公共事業のために不動産を売却し、一定の要件をクリアする場合に適用されます。
要件には、「買取の申し出があってから6ヶ月以内に売却する」などがあります。
この特例を受ける際は、以下の書類が必要です。
・確定申告書
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
・買取り等の証明書
・収用等の証明書
参考:国税庁「収用等により土地建物を売ったときの特例」
6.不動産売却時の確定申告でよくある質問
ここには不動産売却時の確定申告でよくある質問をまとめました。疑問点がはっきりしている場合はこちらをご覧ください。
6-1.不動産売却の確定申告にはどんな書類を添付しますか?
申告に必要な主な書類は、以下のとおりです。
・確定申告書 第一表・第二表
・確定申告書第三表(分離課税用)
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
・不動産譲渡時の資料(売買契約書、固定資産税精算書、領収書など)
・不動産取得時の資料(売買契約書、固定資産税精算書、領収書など)
詳しく知りたい方は「3.不動産売却時の確定申告のやり方は?」をご覧ください。
6-2.不動産売却で確定申告が必要な場合は?
以下の場合には、確定申告が必要となります。
・売却に譲渡所得が発生した場合
・特別控除を利用する場合
詳しく知りたい方は「2.不動産売却時に確定申告は必要?」をご覧ください。
売却して利益が出た場合は確定申告及び納税の義務が発生します。
6-3.不動産売却の確定申告は自分でできますか?
確定申告は自身で行うことが一般的です。ただし、税理士に依頼して作業を代行してもらうこともできます。
相場としては個人の場合5〜10万円ほどです。必要資料や金額計算は自身で用意が必要ですが、それを税理士に渡して書類に取りまとめてもらえるので忙しい方は検討してみても良いでしょう。
6-4.不動産の譲渡所得の確定申告に必要な書類は?
「4.不動産売却時の確定申告で必要な書類一覧」では、必要書類の一覧と入手方法をまとめています。
これから確定申告が必要な方は、ぜひ参考にしてみてください。
7.最後に
不動産売却時の確定申告は、手順を一つ一つ押さえていけば決して難しいものではありません。恐れることなく疑問を解消して、しっかりと確定申告を行っていきましょう。
納税は国民の義務ですので、確定申告及び納税を行わない場合には、重加算税など追徴課税が課されてしまい、思わぬ金額になることもあります。
申告漏れがないようにあらかじめ必要書類や申告の時期を確認しておきましょう。
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