「中古マンションを買う時、仲介手数料ってどのくらいかかるの?」「場合によっては安くなったり、無料になるって本当?」マンションを購入する時、このように思う人も多いようです。
仲介手数料は、購入時に大きな負担となる費用の1つです。宅地建物取引業法では、仲介手数料には上限が定められており、多くの取引では上限額まで請求されるのが一般的です。しかし、条件次第で値引きできたり無料になったりするケースもあります。
とはいえ、安さだけで仲介会社を選ぶと、物件の見極めや手続きのサポートが不十分で大きなトラブルに発展しかねません。中古市場では仲介会社と購入者の情報格差が大きく、納得できる取引を実現するには、不動産会社選びが鍵となります。
本記事では、仲介手数料の基本的な仕組みや相場、計算方法、値引きや無料になるケース、注意点までわかりやすく解説します。
中古マンション購入で後悔しないためにも、ぜひ参考にしてください。

宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
大学卒業後、金融機関、生命保険会社での勤務を経て、不動産賃貸会社で20年以上勤務している。また、ライターとしても活動しており、特に不動産・相続・法律(離婚関係)・債務整理に関するテーマを得意とする。不動産や相続分野での実務経験を活かし、専門性と一般の方にも分かりやすい情報提供を心がけている。
本記事の内容は2025年6月6日時点の情報に基づいており、不動産市場の状況や関連法規、税制などは将来変更される可能性があります。最新の情報については、公式の情報源をご確認ください。
仲介手数料とは?基本的な仕組み

中古マンションを購入する際、物件価格とは別に必要になるのが「仲介手数料」です。これは不動産会社(仲介会社)が物件の紹介や売買契約の成立をサポートした“成功報酬”として支払われます。
そのため、契約が成立しなければ、仲介手数料は発生しません。
仲介手数料を支払うタイミングは不動産会社によって異なりますが、一般的には「売買契約締結時に半額、引き渡し時に残りの半額」を支払うケースが多いようです。

ただし、契約締結時または引き渡し時に一括で支払うケースもあります。事前に確認しておいた方が安心です。
※参考:国土交通省「建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
仲介手数料の相場と計算方法


中古マンションを購入すると、ほとんどの場合仲介手数料が必要になります。この章では、仲介手数料の相場や計算方法について、わかりやすくまとめました。
仲介手数料には上限が定められている
仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限が定められています。物件価格に応じて、以下の割合が適用されます。
物件の税抜き価格 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 物件価格の5%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 物件価格の4%+消費税 |
400万円以上 | 物件価格の3%+消費税 |
各価格帯によって、異なる手数料率が適用されるため、計算の仕組みを把握しておくと良いでしょう。
なお、2024年7月1日からは法改正により、ルールが追加されました。物件の税抜きでの売買価格が800万円以下の不動産については仲介手数料の上限が「一律30万円(税抜)+消費税」と定められました。



低価格帯の物件を購入する場合は、従来と仲介手数料の上限が引き上げられているため、注意が必要です。
仲介手数料の計算方法と目安
仲介手数料は、物件価格を法律で定められた3つの価格帯に分け、それぞれに定められた割合をかけた金額を合算して求めます。
金額は法律で上限が定められ、その金額以下で自由に決められるとされますが、実際は上限額いっぱいで設定されるケースが一般的です。また、仲介手数料には消費税が加算されます。
実務では、簡単に仲介手数料の上限額を計算できる「速算法」とよばれる計算方法が広く使われています。
例えば、売買価格が400万円を超える場合の計算式は、以下のようになります。
【速算法の計算式】
物件価格 × 3% + 6万円 + 消費税
【計算例】
物件価格2,000万円の場合:
2,000万円 × 3% + 6万円 = 66万円(税抜)
66万円 × 1.1(消費税) = 72万6,000円(税込)
なお、速算法の計算式は売買価格が400万円を超える物件に適用される方法です。400万円以下の物件は、区分ごとに割合をかけて計算する必要があります。
物件価格ごとの仲介手数料の上限額を、早見表にまとめたので参考にしてください。
【仲介手数料早見表】
売買価格 | 仲介手数料の上限額(税込) |
---|---|
1,000万円 | 39万6,000円 |
1,500万円 | 56万1,000円 |
2,000万円 | 72万6,000円 |
2,500万円 | 89万1,000円 |
3,000万円 | 105万6,000円 |
3,500万円 | 122万1,000円 |
4,000万円 | 138万6,000円 |
4,500万円 | 155万1,000円 |
5,000万円 | 171万6,000円 |



中古マンション購入では、仲介手数料だけでなく、登記費用や住宅ローン手数料など、諸費用も必要になります。支出全体を見据えた資金計画を立てることが大切です。
※参考:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」
※参考:国土交通省「建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
※参考:e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法第46条 」
仲介手数料の値引きはできる?


中古マンションの仲介手数料は、不動産会社との合意があれば、値引きすることも可能です。ここでは、仲介手数料の値引き交渉が可能なケースや注意点、さらに不動産会社選びのポイントについて解説します。
仲介手数料は値引き交渉できるが慎重に
仲介手数料は宅地建物取引業法で上限額が定められていますが、上限額を必ず支払う義務はありません。
不動産会社との合意があれば、法律の範囲内で仲介手数料の値引き交渉は可能です。
ただし、仲介手数料は不動産会社にとって物件の紹介や調査、契約手続きなどの業務を支える大切な収益源です。そのため、安易な値引き交渉は、サービスの質に影響しないとも限りません。
特に強引な値引き交渉には、担当者との信頼関係を損なうリスクがあります。対応を後回しにされたり、十分にサポートが受けられなくなったりする可能性も考えられます。



値引き交渉を行いたい時は、慎重かつ丁寧な姿勢を心がけましょう。不動産会社の立場に配慮すれば信頼関係も築きやすくなります。
仲介手数料の値引き交渉が成功しやすいケースと難しいケース
仲介手数料は交渉によって減額される場合もありますが、値引きに応じてもらえるかどうかは物件や契約条件によって大きく異なります。
交渉が成功しやすいのは、以下のようなケースです。
- 売り出してから長期間経過している物件
- 需要が少なく買い手がつきにくい物件
- 売主と不動産会社が「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」を結んでいる物件
- 不動産会社が売主からも仲介手数料を受け取れるため、買主側の負担を軽減できる場合



このようなケースでは、不動産会社も早期の成約を優先したいため、値引き交渉に前向きに応じてもらえる可能性が高くなります。
特に「専属専任媒介契約」や「専任媒介契約」では、売主が特定の不動産会社に売却を一任されています。売買契約が成立すれば売主から仲介手数料が直接得られるため、不動産会社が買主の値引き交渉に応じやすくなる傾向があります。
一方で、以下のような物件は、値引き交渉が難しいかもしれません。
- 人気エリアや築浅など、需要が高い物件
- 売り出されて間もない新規物件
- 売主が複数の不動産会社と「一般媒介契約」を結んでいる物件
- 複数の購入希望者がいるなど競争率の高い物件
このような物件は、不動産会社が値引きに応じる必要性が低いため、交渉が難航する可能性が高いでしょう。
特に「一般媒介契約」では、売主は複数の不動産会社に同時に売却を依頼しています。不動産会社は成約できなければ手数料がまったく入りません。このため、買主からの値引き交渉には慎重にならざるをえないのです。
値引き交渉が成功するかどうかは、物件の状況だけでなく不動産会社との信頼関係にも大きく左右されます。



無理に値引きを求めるのではなく、状況を見極めたうえで、できるだけ契約前の早い段階から相談することが大切です。
仲介手数料の安さだけで不動産会社を選ばない
中古マンションの購入では、仲介手数料の安さが魅力的に感じられることもあるでしょう。
しかし「安さ」だけを理由に不動産会社を選ぶのはおすすめできません。
仲介会社ごとに、担当者の知識や経験、サポート体制には大きな差があります。
物件の見極めや住宅ローンの手続き、リフォーム相談、各種制度の活用まで、中古マンションの購入には幅広い専門知識が求められます。知識や経験が不足している担当者に依頼してしまうと、物件選びや契約手続きなどで重要なリスクを見落とし、将来的にトラブルになるおそれもあります。
中古マンションの取引は複雑で、仲介会社と購入者とでは持っている情報量に大きな格差があるのが実情です。だからこそ、仲介手数料の安さだけにとらわれず、知識と経験を備えた信頼できる不動産会社を選ぶことが、中古マンション購入の成功の鍵といえるでしょう。



例えば、物件のデメリットも正直に伝えてくれるか。住宅ローンや各種制度について具体的な提案ができるか。こうした対応は、信頼性を見極めるヒントになります。
※参考:国土交通省「建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
※参考:e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法 | 宅地建物取引業法第34条の2」
※参考:e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法施行規則第15条の8」
仲介手数料が無料になるケースと注意点


中古マンションを購入する際、多くの場合は仲介手数料が発生します。ただし、すべての取引において必要とは限りません。ここでは、仲介手数料が無料になる代表的なケースと、注意すべきポイントについて解説します。
仲介手数料が無料になるケース
中古マンションの購入では、仲介手数料が発生するのが一般的ですが、場合によっては無料になるケースもあります。
仲介手数料が無料になる主なケースには、以下のようなものがあります。
- 不動産会社が所有している自社物件を購入する場合
- 売主から仲介手数料の上限額を受け取れるため、買主側の負担を無料にしている場合



他にも買い取ってリフォーム後に再販する「買取再販物件」を購入するケースでは、仲介会社を介さずに契約が成立するため、買主に仲介手数料がかからないのが一般的です。
仲介手数料無料の注意点
仲介手数料が無料なのは一見魅力的ですが、注意すべき点もあります。
具体的には、表向きは仲介手数料が無料であっても、実際には別の名目で費用が請求されている場合です。
例えば「事務手数料」や「コンサルティング費用」などが、仲介手数料のかわりに別途請求されるケースです。他にも、物件価格にあらかじめ仲介手数料相当分が上乗せされていたり、本来は値下げされているのに、値下げ前の価格で販売されていたりすることもあります。
これらのケースでは、結果として仲介手数料を払うより支払総額が高くなる可能性もあります。不明な点があれば確認しましょう。
さらに、仲介手数料が無料である分、物件調査や契約手続きなど、購入時に必要なサポートが十分に受けられないケースもあります。
重要事項の説明が不十分だったり、契約後のフォローが手薄だったりすることもあるため、どのようなサポートが受けられるか事前に確認しておくと安心です。
仲介手数料が無料というだけで判断せず、まず以下の点をチェックしましょう。そのうえで、納得できるかどうか判断することが大切です。
- 別の名目で費用が発生していないか
- 物件価格が適正か
- サポート体制が十分か
特に、不動産取引は専門性が高く、購入者が気づきにくいリスクも多い分野です。



「仲介手数料無料」という言葉に惑わされず、本当に信頼できる仲介会社かどうかを見極めることが、後悔しない住まい選びに繋がるでしょう。
参考:e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法第46条」


まとめ
仲介手数料は、中古マンションの購入において大きな費用の1つです。
中古マンションの売買時には仲介手数料が発生するのが一般的ですが、交渉によっては値引きできたり、物件や取引条件によっては無料になったりするケースもあります。ただし、「無料」や「割引」という言葉だけに惹かれてしまうと、別名目での費用請求がある場合や、必要なサポートが受けられないといった落とし穴があるため注意が必要です。
中古マンション市場では、仲介会社と購入者との間に大きな情報格差があるのが実情です。だからこそ仲介手数料の安さだけで判断するのではなく、幅広い知識と丁寧なサポートを提供できる仲介会社を選ぶことが納得のいく住まい選びに繋がります。
中古マンション購入に不安がある方は、ぜひ一度スムナラにご相談ください。