不動産買取とは、不動産を売却する方法の1つで、不動産会社の仲介で買主を探してもらうのではなく、不動産会社自身に現金で買い取ってもらうという方法のことです。
通常、不動産を売却するときは仲介を選ぶ人が多いと思いますが、買取の場合は早く確実に現金化できるというメリットがあります。
ただし、売却金額が仲介の場合よりも安くなってしまうという大きなデメリットもあるため、誰にでもおすすめできる方法ではありません。
そこでこの記事では「不動産買取とはどういうものなのか知りたい!」という人に向けて以下の内容を解説していきます。
- 不動産買取と仲介との違い
- 即時買取と買取保証の違い
- 不動産買取のメリット・デメリット
- 不動産買取による売却に向いている人・いない人
- 通常の仲介では売れにくい物件の特徴
しかし「買取だと売却金額が下がってしまうのがどうしても気になる…」という人もいると思います。
「それでも自分の場合は買取の方法で売却するのが最適だ」という人に向けて、買取を成功させるために知っておくべき知識として、以下についても解説します。
- 不動産買取による売却の流れ
- 物件種類別の注意点
- 買取業者を選ぶ際のポイント
- 不動産買取に関するQ&A
この記事を最後までお読みいただくと、自身の不動産を「不動産買取」の方法で売却するのが最良なのかどうかがわかり、失敗せずに売却を進めることができますよ。
自分にぴったりの不動産売却方法を見つけるため、「不動産買取」の基礎知識を学んでいきましょう。
1.不動産買取とは?
冒頭でもお伝えした通り不動産買取とは、不動産会社の仲介で買主を探してもらうのではなく、不動産会社自身に現金で買い取ってもらうという不動産売却方法のことを指します。
不動産を売却しようと考えた時に多くの人が最初にイメージするのは「仲介」の方法だと思いますが、その場合、タイミングよく自分の不動産を気に入ってくれる人があらわれないと、いつまで経っても売却が進まないという事態に陥ってしまいます。
しかし、不動産買取の場合は不動産会社が直接買ってくれるため「すぐに確実に現金化できる」という大きなメリットがあります。
ただしその代わりに発生するデメリットが、売却金額は、相場の6~8割程度になってしまうことが多いという点です。
買取と仲介の違いを表で比較すると以下のようになります。
万人に向いている方法ではなく、「早く現金化できるなら売却金額が多少安くなっても構わない」「高く売ることよりも確実に売りたい」という人に向いている方法だといえるでしょう。
2.不動産買取の種類
仲介との違いについて解説してきましたが、不動産買取の中にもいくつか種類があります。どのような種類があるのか知らずに売却を進めると、「もっと良い方法があったのに」と後で悔やむことになるかもしれません。
そのため、どのような種類があるのかあらかじめ知っておくことで、自分に合わない方法を選び損してしまうのを避けるようにしていきましょう。
不動産買取には以下の2種類があります。
- 即時買取:数日~1週間程度で売却できるが売却金額は市場価格の60~80%程度と低くなる
- 買取保証:最初は仲介の方法で一般の買主を探すため時間がかかるが、市場価格に近い金額で売却できる可能性もある
詳しくは下記で説明していきます。
2-1.即時買取とは
「即時買取」とは、不動産会社に相談をしてからすぐに買取をしてもらう方法です。
そのため、不動産会社にもよりますが、早ければ数日~1週間程度というスピード感で不動産を売却することも可能です。
仲介のように一般の買主を探す必要がないため、内見対応などの手間もかかりません。
しかし買い手が不動産会社であるということは、目的はあくまでも「その後再販して利益を得ること」になります。そのため、気に入れば多少高くても購入してくれる一般の買主と違って、コスト面は非常にシビアに見られます。
例えば「5,000万円で売れそうな広さ・立地だ」と判断されれば、そこからリフォームやクリーニングなどのメンテナンスにかかる費用や、会社として乗せる販売利益を差し引くため、提示金額は3,000~4,000万円程度となります。
一般的には、仲介の方法で売却した場合の60~80%程度の価格になるといわれているため、その点には注意しておきましょう。
2-2.買取保証とは
不動産買取には、もうひとつ「買取保証」という方法があります。
「買取保証」とは、最初は仲介の方法で一般の買主を探し、そこで買主があらわれなかったときだけ不動産会社に買い取ってもらうという方法です。
最初から不動産会社に買い取ってもらうと市場価格よりも割安になってしまうため、少しでも高く売れる可能性を模索したいという場合におすすめの方法です。
ただし、最初に仲介による売却活動を行うことになるため、時間や手間(内見対応など)がかかってしまうというデメリットがあります。
あまり人気のない条件の不動産の場合は、数か月間売却活動をしても結局買主が見つからないということも多いので、「余計な時間と手間がかかっただけだった…」「最初から不動産会社に買い取ってもらったほうが早かった」というケースもあります。
そのため、「数か月程度なら待てるが最終的なデッドラインが決まっている」「少しでも高く売れる可能性があるならチャレンジしてみたい」という場合は、この「買取保証」の方法を選ぶと良いでしょう。
ちなみにこの方法は「最初は仲介の方法で売却を進めていたけれども、最終的に不動産会社に買い取りをお願いした」というケースと、結果としては同じことだと考えていただいて構いません。
仲介で買主を探し始めるときから、最終的には不動産会社に買い取りをしてもらうことを念頭に置いている場合が「買取保証」ということになります。
2-3.即時買取と買取保証の違い
即時買取と買取保証の違いは売却までにかかる「時間」と「金額」です。
即時買取の場合はすぐに買い取ってもらえるため、余計な時間をかけずにすぐに現金化することができます。しかし買取保証の場合は、最初は高く売れる可能性にかけて仲介の方法で買主を探すため、最短でも数か月の時間がかかってしまいます。
金額の面に関しては、即時買取の場合は不動産会社が直接買い取るため、その分市場価格の6~8割の金額になってしまいます。しかし買取保証なら、最初の段階で買主が見つかってしまえば市場価格に近い価格で売却することができるというメリットがあります。
表にまとめると以下の通りです。
「とにかく早く確実に現金化したい」という場合は、最初から「即時買取」を選び、「数か月間は猶予があるためその期間は通常の仲介の方法で売却を狙いたいが、最終的なデッドラインまでには確実に売りたい」という場合は「買取保証」を選ぶと良いでしょう。
3.不動産買取のメリット8つ
不動産買取について基礎的な内容を解説しましたので、概要についてはお分かりいただけたのではないかと思います。
次は、実際に不動産買取に興味があるという人に向けて「不動産買取のメリット」をお伝えします。どんな利点があるのかを正しく知った上で、自分に合っているかどうか判断できるようにしていきましょう。
不動産買取のメリットは、以下の8つです。
詳しく見ていきましょう。
3-1.短期間で確実に現金化できる
不動産買取の最大のメリットは、自分の不動産が「すぐに確実に現金になる」という点です。
仲介で買主を探す方法の場合、早くとも2~3か月は時間がかかります。なぜかというと、買主が一般の人の場合は、ローンの審査や退去日の都合などですぐに購入することができない場合が多いからです。
それだけでなく、以下のような条件の不動産の場合はなかなか「買いたい」と思ってくれる人が見つからない場合も多いです。
- 田舎で周囲にお店がないなど利便性が低い
- 最寄り駅やバス停から遠い
- 物件の間取りが使いにくい
- ゴミ処理場やお墓などあまり好まれない場所に隣接している
売りに出しても何か月も買主が見つからないと、すぐにその不動産を処分したい場合には困ってしまうことでしょう。
しかし不動産買取なら、業者が直接現金で一括購入してくれるため、ローンの審査などを待つ必要がありません。
さらに一般の買主の場合と違って「3か月先の退去日に合わせて購入したい」などの細かい要望をされる心配もいりません。そのため不動産会社にもよりますが、早ければ数日から1週間程度で現金化できることもあります。
「とにかく早く絶対に現金化したい」という人にとっては、この「すぐに確実に現金になる」という点は大きなメリットだといえるでしょう。
3-2.売却金額がすぐに確定する
売却金額がすぐに確定するという点も、不動産買取のメリットのうちの一つです。
不動産を売却するときには、それによって得たお金で別の不動産を購入したり他の人と分けたりと、その次に何かやるべきことを計画しているケースが多いと思います。
しかし仲介の方法で売却を進める場合に困るのが、いくらで売れるのかが最初の時点ではわからないため精度の高い計画を立てにくいということです。
不動産の売却の世界では、希望金額そのままで売れることは稀です。1か月間売りに出していても反応がなければ、不動産会社から「売値を下げませんか」という提案が入ることでしょう。
無事に買主が見つかったとしても、値下げ交渉をされることもあります。人気の物件であれば「値下げはしません」と強気の姿勢をとっても良いかもしれませんが、「やっと見つかった買主を逃したくない」と値下げに応じる人も多いのが現状です。
そのため仲介による売却の場合は、どうしても最終的に契約が完了するまでは「いくらの現金が手元に入るのか?」が確定しないのです。
しかし不動産買取なら不動産会社がすぐに買取金額を見積もってくれるため、後で金額が変動するリスクがありません。
あらかじめ売却金額を確定させて先の見通しをスムーズに立てていきたい!という場合には「売却金額がすぐに確定する」という点は嬉しいポイントになるでしょう。
3-3.仲介手数料を節約できる
「仲介手数料を節約できる」という点も、不動産買取のメリットです。
仲介の方法で不動産を売却するときには、最大で「(取引金額✕3%+6万円)+消費税」の手数料を不動産会社に支払う必要があります(取引金額が400万円を超える場合)。
これは、例えば3,000万円の不動産の場合は以下のように100万円近くなってしまう計算になります。
- (3,000万円✕3%+6万円)+9万6,000円=105万6,000円
意外と大きな出費であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
しかし、不動産買取の場合は仲介ではないので手数料が発生しません。そのため、その分のコストを節約できるというメリットがあるのです。
3-4.契約不適合責任が免除されるため安心
四つ目のメリットは、「契約不適合責任が免除される」という点です。
契約不適合責任とは、引き渡した不動産が契約の内容と合っていなかった場合は売主側がその責任を負うというルールです。
例えば雨漏りが発生してしまう物件なのにそのことが契約書に記載されていなければ、買主は後からでも以下のような要求をすることができます。
- 雨漏りしているから修理してください
- 雨漏りしていては購入した意味がないので契約を解除してください
- 余計な手間がかかったので損害賠償を請求します
そうすると、せっかく売れたと思ったのに後から思わぬ費用がかかってしまったり、売却金額をそのまま返還しなければならなくなったりしてしまいます。
しかし、不動産買取の場合は買主が一般の人ではなくプロの業者であるため、契約不適合責任が免除されるという決まりになっています。
契約に合った不動産を引き渡すというのは取引上当然行うべきことではありますが、充分に調べたとしても建物や土地に思わぬ欠陥がある可能性はゼロにはできません。そんなとき、こうした責任が取引後にも残っていると考えると、精神的に不安なものです。
しかし不動産買取ならこの責任を免除された状態で買い取ってもらえます。売却後は余計な心配をすることなく安心して過ごしたいという場合には、この点は嬉しいメリットだといえるでしょう。
3-5.近隣の人や親族などに知られずに売却できる
「近隣の人や親族などに知られずに売却できる」という点も一つのメリットです。
家庭のトラブルやあまり知られたくない事情などで不動産を売却する場合、近隣の人や親族に知られたくないと思うこともあると思います。
しかし、一般の人を相手に不動産を売却する場合はどうしても情報を隠し通すことが難しくなります。
なぜかというと、スムーズに買主を見つけるためには「こんな不動産を売り出していますよ」ということを広く宣伝する必要があるため、インターネットの物件サイトやチラシのポスティングなどを活用して情報を拡散するからです。
また、購入希望者があらわれた場合は実際に土地や物件を目で見て確認したいというケースがほとんどですので、現地で訪問者への案内などの対応をすることになります。
そうすると、その不動産を売却しようとしていることが近隣の人や親族などにわかりやすくなってしまうのです。
その点不動産買取の方法であれば、不動産会社が1~2回見に来るだけで契約が完了するため、不特定多数に向けた広告を出したり、買主候補の人たちを何度も現地案内したりする必要がありません。
周囲の人に知られずに売却を済ませてしまいたい!という場合には、この点もメリットとなります。
3-6.手間のかかる内見対応が不要
「内見対応が不要」というのも不動産買取のメリットのうちの一つです。
内見というのは「内部見学」の略で、不動産購入希望者が購入前に実際に物件の内部を見ることを指します。
更地だけを売る場合は家の中を見せる手間はかかりませんが、マンションや戸建てなどの部屋を売る場合は、基本的には内見対応が必要です。
その際、その物件に住みながら売却をする場合は、内見の予約が入ったら以下のような事前準備が必要となります。
- 全ての部屋を綺麗に片付ける
- 清潔感をアピールするために業者にクリーニングを依頼する
- 質問されそうな内容を想定して回答を考えておく
- タバコやペット、生活臭などを消すために臭い対策をする
もちろん当日もその時間帯に内見者を迎え入れなければならないため、手間と時間がかかってしまいます。
また、誰も住んでいない物件だとしても、いずれにしても一度綺麗に片づけてクリーニングをしないといけないのでその分の費用はかかってしまうでしょう。
しかしその点、不動産買取なら一般の人が見に来ることはありません。そのため、片付けやクリーニングなど余計なことに手間をとられずにすみます。
「忙しくて手間をかけられない」というときにはこれも嬉しいポイントだといえるでしょう。
3-7.リフォームなどの余計な費用がかからない
不動産買取では「リフォームなどの費用がかからない」というメリットもあります。
中古のマンションや戸建てを売る場合、築年数が古かったり設備に故障している箇所があったりすると、多くの場合は仲介を担当する不動産会社からリフォームをすることを薦められます。
これは、通常の仲介では「購入したらそのまま住みたい」という買主を想定しているため、そのまま売りに出してもなかなか買い手がつかないと考えられているからです。
「綺麗にリフォームすればその分売れる確率が高まる」というのは自然なことですが、その一方でリフォームには数十万~数百万円ほどの費用がかかるというデメリットがあります。
しかも、綺麗にリフォームをしたから絶対にその分高く売れるかというと、そうとは限りません。
買主が見つからなければ、いくらリフォームのためにお金をかけていたとしてもどんどん値下げをしていかなければならないので、リフォームをしたことで結局損をしてしまった…なんていう事態に陥ってしまうことも考えられます。
その点、不動産買取ならリフォームせずとも現況のままで買い取ってくれるため、「かけた費用を回収できるのだろうか」などと悩む必要がありません。この点は大きなメリットとなるでしょう。
3-8.条件が悪い不動産でも買い取ってもらいやすい
不動産買取の最後のメリットは「条件が悪くても買い取ってもらいやすい」という点です。
一般の人を対象に不動産を売る場合、「住みにくそう」「使いにくそう」と思われると購入を渋られてしまいます。
しかし不動産会社が買い取る場合は、以下のような個人には人気のない条件の不動産の場合でも、問題なく話を進めてもらえる可能性があります。
- 周囲にコンビニやスーパー、学校などがない
- 駅から遠く交通の便が悪い
- 間取りが使いにくい
- 築年数が経過している
- 設備が古い
- 広すぎる、もしくは狭すぎる
なぜかというと、不動産の素人である個人の購入者とは異なり、不動産会社であれば大幅にリフォームをしたり、マイナス点をカバーするような付加価値をつけたりと様々な活用方法を考えることができるからです。
そのため、一般の人を相手に売ろうとしても人気がないような条件の不動産でも、不動産買取の方法であれば買い取ってもらえる可能性が残っているのです。
4.不動産買取のデメリット3つ
不動産買取のメリットについて詳しく解説してきましたので、どんなところが良いのかという点についてはご理解いただけたのではないでしょうか。
ただし、「そんなにいい方法ならすぐに買い取ってもらおう!」と話を進めていってはいけません。メリットがあると必ずデメリットもあります。デメリットを知らないままでは「こんなはずじゃなかった…」と後悔してしまうかもしれません。
悪いところもしっかりと理解した上で、それが自分にとって許容できるものなのかどうかを判断するようにしていきましょう。
不動産買取のデメリットは、以下の3つです。
詳しく見ていきましょう。
4-1.売却金額が市場価格の6~8割程度に下がる
いくつかの利点もある不動産買取ですが、その最大のデメリットは売却金額が市場価格よりも安くなってしまう点です。主流である仲介の売却方法と比べると、60~80%程度の価格になってしまうことが多くなります。
なぜそんなに安くなってしまうのかというと、自分で居住するために購入を検討している一般の人と異なり、不動産会社の場合は「その後再販して利益を得ること」が目的だからです。
一般の人の場合は、その不動産を気に入れば多少高くても購入してくれる可能性もありますが、業者の場合はあくまでもビジネスであるため、会社として再販した時に利益が確実に出る金額でないと買い取ってくれません。
不動産を再販するためには、土地の整備費や、部屋のクリーニングやリフォーム費用、広告宣伝費、人件費などが必要になります。
こうした費用を回収しつつ利益も上乗せする必要があるため、不動産会社に買い取ってもらう場合の相場は、仲介の場合よりも必ず安くなってしまうのです。
そのため、通常は不動産の売却方法として優先的に選択されることはありません。特別な事情で「得られるお金よりもスピードや確実性、手間の少なさを重視したい!」というニーズがある方に向いている方法だということになります。
4-2.どんな人が買うのかわからない
「どんな人が買うのかわからない」というのも不動産買取のデメリットのうちの一つです。
「売った後は誰に渡ってもいい」という場合はそこまでネックにはならないデメリットですが、先祖から引き継いだ土地や建物を売る場合、自分の希望に沿わない使い方をするような人には買ってほしくないという考えの人もいると思います。
その他、自分が住んでいる土地に隣接する区画の土地や建物を売りたいというような場合も「これからご近所さんになるのであればある程度買う人を選びたい」という気持ちになるでしょう。
そんなとき、仲介の方法で売却する場合であれば、売主側が「こんな買主は避けたい」と思えば自由に断ることができます。
しかし不動産買取の方法で売却する場合は、不動産会社は元の売主の関与しないところで買主を探して売却の契約をします。
そのため、売却後にその不動産がどんな人にどのように使われるかわからないのは嫌だという場合は、この点はデメリットの一つとなるでしょう。
4-3.プロとの交渉になるため不利になる可能性が高くなる
不動産買取の方法で売却をするということは、売却相手は不動産のプロである業者となります。
そうすると、こちら側には専門知識がない分、相場とかけ離れた金額を提示されてもそれが適切な価格なのかどうかわかりません。そのため、結果的に不利な条件で契約をしてしまう…という事態を招いてしまう可能性があります。
また、この売却方法を選ぶ人は「離婚の慰謝料に充てるために早く現金が欲しい」「財産分与を急ぎたいのでさっさと処分したい」というように特別な事情を持っていることが多いです。
そうすると「多少損をする条件でもいいや…」と、不本意な条件であっても受け入れてしまう人もいるでしょう。
そのため、できるだけ損せずに買い取ってもらいたいという場合は、相場を事前に調べておいて知識武装したり、複数の業者に見積もりをとって比較したりするなどの工夫をすると良いでしょう。
5.不動産買取による売却に向いている人
不動産買取のメリットとデメリットをお伝えしてきました。この方法はかなり特殊な不動産売却方法だということをご理解いただけたのではないでしょうか。
「売却金額が60~80%に下がってしまう」というのはあまりにも大きなデメリットです。そのため、今不動産買取に興味を持っている人も「自分が本当にこの方法を選ぶべきなのかどうか」についてはよく考えるべきでしょう。
そこでこの章では、不動産買取による売却に向いている人の特徴を紹介します。
基本的には適正価格で売ることができる仲介のほうがおすすめではありますが、以下に当てはまるようであれば、不動産買取を検討してみても良いでしょう。
「不動産買取」に向いている人の特徴は、以下の通りです。
具体的には、以下のような特別な事情を抱えている人が当てはまります。
- 相続や離婚などの理由でとにかく早く売却を済ませて現金化する必要がある
- 転勤や子供の進学時期などのリミットがあり、今の物件の売却にどうしても時間をかけられない
- 借金の返済期日が迫っていて、現金を入手したい時期が決まっている
- 近隣の方や親戚などに、今の住まいを売り出していることを知られたくない
- 既にかなり割安な価格で売りに出して数か月経過しているのに買い手が見つからない
上記のように基本的には、現金化を急いでいる、タイムリミットがある、売却に手間をとられたくない、という人が選ぶ方法となっています。
6.不動産買取による売却に向いていない人
不動産買取に向いている人の条件を解説しましたので、次は逆に「どんな人には向いていないのか?」をお伝えします。
両方の条件を知ることで、自分の場合はどちらに当てはまるのか、納得できる最終判断ができるようにしていきましょう。
不動産買取による売却をおすすめしない人の条件は以下の通りです。
まず、不動産買取の最大のデメリットは売却金額が安くなってしまうことですので、「少しでも高値で売却したい!」と考えている人におすすめしません。
多少時間はかかってしまいますが、仲介の方法を選択して買主を探すほうが良いでしょう。
また、「自分の希望に沿わない使い方をするような人には買ってほしくない」「どんな人が購入するのか選定したい」という気持ちを持っている人の場合も、不動産買取の方法は向きません。
不動産会社に買い取ってもらった後は、その会社が誰に売っても、新しい所有者がどのような使い方をしても、文句は言えなくなってしまうためです。
さらに、駅や商業施設に近くて利便性が高い築浅マンションなど、多くの人から人気の条件を持った不動産を売却しようとしている場合も、不動産買取の方法は選ばないほうが良いでしょう。
仲介の方法でも早めに買主が見つかる可能性が高く、その方が高値で売却可能となるからです。
7.通常の仲介では売れにくい物件の特徴5つ
お伝えしてきた通り、借金返済や家庭のトラブルなど「とにかく急いで不動産を現金化したい」という事情があるわけでないなら、価格が60~80%になってしまうというデメリットが大きすぎるため、基本的には仲介の方法で売却を進めていくほうがおすすめです。
それでも「自分の物件は仲介の方法で売れるのか心配…」「最終的に仲介では売れず、不動産会社に買い取ってもらうことになる可能性も高いのかな」という不安を持っている人もいるのではないでしょうか。
そんなときでも、時間に余裕があるのであればまずは仲介で売り出すのがおすすめではありますが、確かに物件によってはなかなか売れにくいことがあるというのも事実です。
そのためこの章では、通常の仲介では売れにくい物件の特徴を紹介します。これに当てはまるからと言ってすぐに不動産買取の方法を選ぶことはありませんが、最後の手段として不動産買取などの方法を選ぶ可能性があるという心づもりをしておくために役立つでしょう。
通常の仲介では売れにくい物件の特徴は、以下の5つです。
早速見ていきましょう。
7-1.築年数が経過している
築古の老朽化が進んだ建物やマンションは、通常の仲介では売れにくいと考えられます。その主な理由は以下の2点です。
- 日本人は新築への憧れが強い
- 築年数が古い物件は買主側の住宅ローンの審査が下りにくい場合がある
まず、海外では歴史のある築古物件のほうが高額で取引されることが多いのですが、日本人の場合は逆に新築や築浅物件の人気が高いため、築年数の古い物件だとそれだけで購入希望者が減ってしまう傾向があります。
実際に国土交通省の調査によると、「今後どんな家に住み替えたいか」という質問に対して「新築住宅」と回答したのが全体の4~5割前後であるのに対して「中古住宅」という回答は2割前後だったという結果が出ています。
また、金融機関によっては住宅ローンの条件として「戸建ての場合は築年数30年以内のものに限る」などの制限があることもあります。
そのため、築年数が古い物件の場合は「ローンの審査に通らなければ購入はできないから…」と購入を避けようとする買主もいるでしょう。
もちろん、綺麗にメンテナンスされていれば築古であっても買い手がつくことはあります。しかし、あまりにも老朽化が進んでいるような物件の場合は、仲介で売却を進めても買主探しは難航することが考えられます。
そのため、あまりにも築年数が経過していて「そのままでは誰も欲しがらないだろうな…」というような物件の場合は、すぐには買い手が見つからないことを覚悟しておきましょう。
7-2.交通の便が悪い
交通の便が悪いというのも、普通の仲介では売れにくいことがあります。
築古物件と同様に、以下のような条件の場合は買主がスムーズに見つからないと考えられるためです。
- 最寄駅やバス停から徒歩で15~20分以上かかる
- 日常の買い物や病院に行くのが遠い
実際に、2016年に行われたマンションマーケットのアンケート調査によると、「物件選びの際に最も重視したポイントは何ですか?」という質問に対して最も多かった持ち家派の回答は「最寄り駅からの所要時間」で、以下のように3割近くを占めていました。
さらに、上位5位以内に「周辺施設」「通勤・通学手段や所要時間」の2項目が入っていたことから、買い物や通勤・通学に不便であると好まれにくいということもわかります。
(出典:マンションマーケット「物件選び」に関する実態調査 )
このように、交通の便が悪い物件を所有している場合は、普通の仲介の方法では買主がスムーズに見つからない可能性が高いということを知っておきましょう。
7-3.旧耐震基準で建築された物件
旧耐震基準で建築された物件も、通常の仲介では人気がありません。
旧耐震基準とは1981年5月末まで適用されていた耐震基準のことで、それ以降に適用されている基準と比べると地震に弱いという特徴があります。
具体的な違いは以下の通りです。
- 旧耐震基準(建築確認日が1981年5月31日までのもの):震度5強の地震でも倒壊しない水準
- 新耐震基準(建築確認日が1981年6月1日以降のもの):震度6強~7くらいの地震でも倒壊しない水準
実際に1995年に発生した阪神・淡路大震災でも、新耐震基準を満たしていた建築物は3割弱しか被害を受けなかったのに対して、それよりも前に建築された建物は、65%近くが被害を受けたというデータもあります。
そのため、新耐震基準を満たしていない物件の場合は、地震の時に倒壊するリスクが高いと考えられるため買主が尻込みする場合があり、通常の仲介では売却しにくいと考えられるのです。
7-4.訳あり物件である
いわゆる「訳あり物件」の場合も、なかなか一般の人から「欲しい」と思ってもらえないため、売却活動は難航します。
訳あり物件の例としては以下のようなものがあります。
- 室内や同じ建物内で自殺や殺人事件などが発生した
- 反社会的勢力の事務所が近隣にある
- 台風などの自然災害で損壊した
- 老朽化が余りにも進んでいてそのままでは住めない
- ゴミ屋敷になっていた
- 周囲に火葬場や墓地がある
- 高速道路の近くで建物の防音性も低く騒音がひどい
- 近隣にごみ処理場があり臭いが届く
こうした物件は、そのまま一般の人を相手に売ろうと思っても敬遠されやすいのでなかなか売れにくいものです。
しかし、不動産に詳しくない素人の場合は、どこを改善すれば売れるのかを考えるのも難しいことでしょう。そんなときは、まずは不動産会社に売り方を相談してみると良いでしょう。
不動産会社はプロであるため、過去に同じような物件を取り扱った経験があったり、同業他社の事例などを知っていたりと経験や情報を持っています。
そのため、多少訳あり物件だったとしても適切な改修を施したり売値を下げたりすることでうまく売却できる可能性を高めてくれるかもしれません。
そこで割安な価格で長期間出しても売れなかったときは、最終手段として不動産買取を検討していくと良いでしょう。
7-5.物件の状態があまりにも悪くリフォームが必須である
物件の状態があまりにも悪い場合も、通常の仲介ではスムーズに売却することは難しくなります。
そのまま住もうと考えている買主にとっては印象が悪く、どうしても魅力的に映らないためです。
そのため、かなり老朽化が進んでいたり、故障が多かったりするような物件を売却したいという相談を不動産会社にすると、リフォームをすることを薦められると思います。
しかし、そのリフォーム費用である数十万~数百万円は売り手側の負担になります。しかもその費用は、買主が決まり売上の金額が手に入るよりも前の持ち出しになるため、お金を事前に準備できない場合にはそもそもリフォームをすることができません。
また、もしお金を用意できたとしても、それが無駄になる可能性もあります。というのは、リフォームをした分必ず売れるのであれば良いのですが、そんな保証はないからです。売る前にリフォームをするのは大きなリスクだといえるでしょう。
しかし最近では、「自分で好きなようにリフォームしたいからそのまま売ってほしい」「リフォームしていない物件を自分でリノベーションしたい」と考える人も増えています。
そのため、リフォームが必須であるほど物件の状態が悪い場合は、先走って売却前にリフォームをするよりも、そのまま買い取ってくれる買主を探すほうがおすすめです。
詳しくは、リフォームやリノベーション向けの中古物件を扱うサイト「sumnara(スムナラ)」をご覧ください。
8.不動産買取による売却の流れ
通常の仲介ではスムーズに売れない不動産を、できるだけ高く売る方法をお伝えしました。
しかし「自分の場合は特別な事情がありどうしても時間がない」「割安になってしまってもいいからすぐに買い取ってもらえる方法を選びたい」という人もいると思います。そんな人は、不動産買取の方法で売却を進めていきましょう。
不動産買取の具体的な流れは以下の通りです。
詳しくは以下で解説していきます。
8-1.複数の不動産会社に査定を依頼する
まずは、複数の不動産会社に査定を依頼します。査定は大抵無料で実施してもらえますので、気になる不動産会社には声をかけると良いでしょう。
1社にしか査定依頼をしていないと他に選択肢がないため「あまりにも希望金額と乖離しているけれど、時間もないし仕方ない…」とその条件を受け入れるしかなくなってしまいます。
通常、不動産の売却という行為は人生の中で何度も経験するようなものではありません。そのため、買い取る不動産会社側と売りたい私たちの側には、知識量や経験に大きな差があります。
そのため、相場よりもかなり安い金額を提示されてもこちらにはその妥当性がわからず「そんなものか」と話を進めてしまうことになります。
そんな事態を避けるため、査定は必ず複数社に依頼しましょう。そうすれば以下の2つの利点が生まれます。
- あまりにも相場より低い見積もりを提示する会社はすぐにわかるので、比較して除外することができる
- 複数社に査定を依頼しているということを不動産会社側に伝えれば、競合に負けないようにしよう、と多少高めの金額を提示してくれる可能性が生じる
ただし依頼する不動産会社が多すぎると、その分現地案内などをする手間も増えてしまいます。大体2~3社程度にしておくと良いでしょう。
近隣の不動産会社であれば小回りのきいた対応をしてくれることが期待できますので、「不動産のある地域名 不動産買取」などのワードで検索をして、買取も行っている不動産会社を探してみて下さい。
8-2.納得のいく条件を提示してくれた会社と売買契約
複数の会社の査定金額が明らかになったら、その中から良い条件の会社を選んで契約を行います。
その際は「査定金額が高いかどうか」だけでなく「入金の時期」や「引き渡し日」「家の中に物を残したままでも良いかどうか」なども含めて、自分の希望に合う条件で買い取ってもらえるかどうかを比較し、契約する不動産会社を決定しましょう。
どのような観点で不動産会社を選べば良いのか、というポイントは「10.不動産買取の業者を選ぶ際のポイント」で解説します。
8-3.入金・引き渡し
契約した後は、あらかじめ決められた日にちに正式に手続きを行い、代金の入金と不動産の引き渡しを行います。司法書士に立ち会ってもらって、書類の確認と鍵などの受け渡しを行うのが一般的です。
9.不動産買取の種類別の注意点
不動産買取を進めていく場合の具体的な流れについて解説しました。仲介の場合と比べると非常にシンプルで売却側の負担が少ないという点が安心ですね。
ただし不動産買取は、マンションを売却したい場合なら大きな問題は生じないことが多いのですが、戸建てや土地の場合には、種類によってそれぞれ注意すべき点があります。
自分の不動産の場合の注意点を把握しておくことで、スムーズに売却を完了させていきましょう。
9-1.戸建てを不動産買取してもらう場合の注意点
戸建ての場合は、マンションに比べると比較的買い取りをしてくれる会社が少ないという特徴があります。
理由としては以下のようなものが挙げられます。
- 販売価格や需要を的確に予測するのが難しいため転売できないリスクがある
- 建物が古くそのまま転売できない場合は大掛かりなリフォームなどの費用がかかる
マンションの場合は、同じ建物内の別の部屋など、近い条件の物件の過去の取引結果を参考にすることができるため、いくらくらいで売れそうかという予測を立てやすいという特徴があります。
しかし戸建ての場合は、全く同じ条件の物件は存在しないため、売れそうな金額を想定するのがプロでも難しくなります。
実際に首都圏の不動産の取引結果を調べたデータによると、戸建ての場合、「売り出した時の金額」よりも「実際に成約した金額」が15%近く安くなっていたというデータもあります。
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構:首都圏不動産流通市場の動向(2021年07~09月)
そのため、仕入れても損をしてしまうリスクが高い戸建ては、不動産会社が買い取りに応じてくれないリスクも高いということがいえるでしょう。
9-2.土地を不動産買取してもらう場合の注意点
「土地の上に古い家があるけれど、そのまま売りたい」「ゴミや残置物のある土地の売却を検討している」という場合は、以下の点に注意しておきましょう。
- 古い家の取り壊し費用や残置物の撤去費用を差し引いた金額が提示されるため、その分買取価格が安くなる
- 取り壊し費用が更地価格を上回る場合は、買い取ってもらえない可能性もある
不動産買取では、自分で古い家や残置物の処理をせずに土地をそのまま売却できるという点がメリットの一つにはなりますが、当然ながらその処分費用の分、買取価格は安くなってしまいます。
また、更地にととのえるための費用があまりに高額になることが想定される場合は、転売しても利益が出ないリスクがあるため、不動産会社が買い取ってくれないということも考えられます。
土地を買い取ってもらう場合には上記のような事態に陥る可能性もあるため、心の準備をしておきましょう。
10.不動産買取の業者を選ぶ際のポイント
不動産買取を進めていく際に知っておくべき、全体の流れと物件別の注意点を解説してきました。次に、不動産買取で最も重要だと言っても過言ではない「業者の選び方」についてお伝えします。
業者選びのポイントを知らずに適当に選んでしまうと、後で「他の不動産会社ならもっと高値で買い取ってくれたかもしれないのに…」と悔やんでしまうかもしれません。
そんな事態にならないよう、この章では実際に業者を選ぶ際のポイントを2つにまとめました。
詳しくは以下の通りです。
10-1.買取に慣れている業者を選ぶ
不動産会社にもそれぞれ得意分野と不得意分野があります。特に不動産取引で主流の「仲介」なら多くの不動産会社が経験したことがあると思いますが、買取の場合は、業者によっては「一度もやったことがない」というケースも考えられます。
そんな経験のない業者に依頼してしまうと、査定金額の妥当性が低かったり、入金までに時間がかかったりしてしまう可能性があります。
そのため、不動産買取の専門業者など、慣れている業者を選ぶと良いでしょう。市場に流通しにくい不動産でも買い取ってくれたり、こちらの事情を察してスピーディに入金対応してくれたりする可能性も高くなります。
専門業者でなくても、ホームページに買い取りの事例が豊富に掲載されていれば、その業者は買い取りに対して積極的だということもわかります。
ただし買取専門業者を選ぶ場合は、最初に一定期間だけ仲介も行う「買取保証」の方式をとれない可能性もあります。仲介での売却にもチャレンジしてみたいという場合は、仲介と買取、どちらも行っている業者を選ぶと良いでしょう。
10-2.自分の物件を得意とする業者を選ぶ
買取に慣れているかどうかに加えて、物件の種類にも会社ごとに得意不得意があります。例えば、マンションに強い、戸建てに強い、土地に強い、といった具合です。
見分けるポイントは「所在地」と「ホームページに掲載されている買い取り事例」です。
例えば周囲に戸建てが多いエリアで古くから事業をしている不動産会社であれば、戸建ての売買に慣れていると考えられますし、土地の売買が盛んなエリアに支店が多い会社であれば、土地の買い取りに積極的であると推測できます。
また、ホームページに掲載されている買取事例がマンションばかりなら、戸建てと土地にはあまり強くなさそうだという予想もできます。
このようにして、自分と同じ種類の不動産に強い業者を選ぶようにすると、向こうも経験豊富であるため、安心して任せることができるでしょう。
11.不動産買取に関するQ&A
不動産買取を進めていく上で知っておくべき基礎知識を一通り解説しました。最後に、その他の気になる点をQ&A形式でまとめてお伝えしていきます。
不動産買取についての不安点を全て解消し、安心して売却活動を進めていくことができるよう、このQ&Aを活用していただければと思います。
それでは早速見ていきましょう。
11-1.住宅ローンが残っていても買い取ってもらえるの?
→A.住宅ローンが残っていても買い取ってもらえます。
ただし、売却によって得たお金などを活用して住宅ローンを完済する必要があります。
つまり、売却金額がローン残債を下回ってしまう場合は、差額を自分で工面しなければなりません。
また、住宅ローンが残っている場合は「抵当権抹消登記」を行う必要があるため、その費用がかかる点にも注意しておきましょう。抵当権抹消には「登録免許税」と「司法書士への報酬」で1~2万円程度がかかります。
さらに、金融機関によっては繰り上げ返済の際に手数料がかかる場合もあります。金額は契約内容によりますが数万円かかる場合もあるため、事前に把握しておきましょう。
11-2.既に仲介で売却活動をしている場合でも別の業者に買い取りを依頼できるの?
→A.仲介で結んでいる契約が「一般媒介契約」の場合は別の業者に買い取りを依頼することができます。
通常、仲介の方法で不動産を売却するときには、不動産会社と以下のいずれかの契約を結ぶことになります。
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
このうち、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」の2つは「その不動産の売却を1社だけに任せる」という内容の契約になっています。そのため、契約期間中の場合は、なかなか売れないからといって別の業者に買い取ってもらうことはできません。
それに対して「一般媒介契約」は、何社に売却を依頼しても問題ないという内容の契約であるため、途中で他の会社に買い取りを依頼することも可能になります。
既に「専属専任媒介契約」もしくは「専任媒介契約」を結んでしまっているけれども、やっぱり買い取りの方法で売却したい、と思ったら、まずは現在契約をしている不動産会社に相談してみると良いでしょう。その会社で買い取りに対応してくれたり、別の方法を提案してくれたりする可能性もあるためです。
11-3.売主側にはどんな費用がかかるの?
→A.売却に伴って納める義務が生じる税金や、登記事項の変更費用、土地の測量費用、本人証明書類の取得費用などがかかります。
具体的な費用の詳細は以下の通りです。
- 印紙税:不動産取引に対してかかる税金
- 譲渡所得税:売却により利益が発生した場合にかかる所得税と住民税
- 抵当権抹消登記費用:住宅ローンの残っている不動産を売る場合にかかる登記内容変更の手数料
- 測量費用:土地付きの不動産を売る場合にかかる、土地の境界をはっきりさせるための測量にかかる費用
- 印鑑証明書:売却手続きにおける本人確認のために取得が必要
詳しくは下記で解説します。
11-3-1.印紙税
印紙税とは、不動産の売買を行う際に支払うことが義務付けられている税金です。売買契約書に記載されている売却金額によって以下のように金額が異なります。
- 100万円を超え 500万円以下のもの:本則税率 2千円(軽減税率 1千円)
- 500万円を超え1千万円以下のもの:本則税率 1万円(軽減税率 5千円)
- 1千万円を超え5千万円以下のもの:本則税率 2万円(軽減税率 1万円)
- 5千万円を超え1億円以下のもの:本則税率 6万円(軽減税率 3万円)
※令和4年3月31日までの間に作成される契約書の場合は()内の軽減税率が適用される
具体的には、不動産会社とのやり取りの中で指示されると思いますので、確認すると良いでしょう。
11-3-2.譲渡所得税
譲渡所得税とは、売却で利益が発生した場合にのみかかる税金です。計算方法は下記の通りです。
- 譲渡所得税 = 課税譲渡所得(譲渡所得-特別控除) × 税率
少し計算が複雑なので、ひとつずつ解説していきます。
まずは「譲渡所得」の計算方法です。
これは、「不動産の売却で得られた金額」から「最初その不動産を購入したときにかかった費用」と「売却のためにかかった費用」をマイナスすることで算出することができます。
次に「特別控除」についてです。
これは、状況によってどんな控除が適用できるのか異なります。よく利用されるのは、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という制度です。
マイホームや親から相続した物件など、居住用の不動産を売却する場合に最大3,000万円までが非課税になります。
売却時に自身が居住していなくても、居住しなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する場合であれば適用となります。
その他の特例については国税庁のホームページに詳しく記載されているため、気になる方はご覧下さい。
最後に「税率」についてです。
ここでかかる税率は、不動産を所有していた期間に応じて「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」のどちらかに分けられ、それぞれ以下のように異なる税率が適用となります。
- 長期譲渡所得:売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている場合
所得税 15%
住民税 5%
復興特別所得税 所得税の2.1%
- 短期譲渡所得:売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合
所得税 30%
住民税 9%
復興特別所得税 所得税の2.1%
出典:国税庁:長期譲渡所得の税額の計算 / 国税庁:短期譲渡所得の税額の計算
さらにこれ以外に、住宅ローンが残っている場合は抵当権抹消登記費用として1~2万円が、土地の測量が必要な場合は測量費用として10~80万円程度かかります。
その他、売却手続きの際の本人確認のために印鑑証明書も必要となります。取得費用は300円です。
不動産を売却するときの費用についてより詳しく知りたい場合は、以下の記事もご確認ください。
→マンション売却にかかる費用について知りたい方はこちらの記事へ
11-4.室内にある古い家電や家具も引き取ってもらえるの?
→A.引き取ってもらえることがほとんどです。
不動産買取の場合、通常は不動産会社が残置物の撤去まで請け負ってくれるため、古い家電や家具が家の中に残っていたとしても、そのまま売ることができます。
ただし処分にかかる費用を差し引いた金額が提示されますので、少しでも高い金額で売りたい場合は、自分であらかじめ処分しておくほうが良いでしょう。
11-5.共有名義の物件も買い取りしてもらえるの?
→A.買い取りしてもらえます。
夫婦でマイホームを購入した場合や、親の土地を兄弟で相続した場合など、不動産の名義が複数人になっていることもあると思います。そんな不動産でも買い取りをしてもらうことは可能です。
ただしその場合は、共有名義人全員が売却に同意している必要があるため、不動産の処分方法について事前に関係者で話し合って合意しておくことが大切です。
11-6.不動産買取は断られる場合もあるの?
→A.断られる場合もあります。
転売しても利益が出ないような土地や、転売するために大規模な手直しが必要となるような物件の場合は、不動産会社の判断で買い取りを断られてしまう場合もあります。
特に、土地価格の安い田舎の古い戸建てや、再建築不可の築古の建物などの場合は、買主が見つからない可能性が高いため、買い取ってもらえないかもしれません。
ただし不動産会社によって得意不得意がありますので、1社から断られたとしても諦めずに色々な会社に相談してみるのが良いでしょう。
12.まとめ
不動産買取について知っておきたい情報を整理してお伝えしました。
不動産買取とは、不動産を売却する方法の1つで、不動産会社の仲介で買主を探してもらうのではなく、不動産会社自身に現金で買い取ってもらうという方法のことでした。
この記事で解説した内容をまとめると以下のようになります。
【不動産買取の種類】
- 即時買取:数日~数週間程度で売却できるが売却金額は市場価格の6~8割程度と低くなる
- 買取保証:最初は仲介の方法で一般の買主を探すため時間がかかるが、市場価格に近い金額で売却できる可能性もある
【不動産買取のメリット8つ】
- 短期間で確実に現金化できる
- 売却金額がすぐに確定する
- 仲介手数料を節約できる
- 契約不適合責任が免除されるため安心
- 近隣の人や親族などに知られずに売却できる
- 手間のかかる内見対応が不要
- リフォームなどの余計な費用がかからない
- 条件が悪い不動産でも買い取ってもらいやすい
【不動産買取のデメリット3つ】
- 売却金額が相場の6~8割程度になってしまう
- どんな人が買うのかわからない
- プロとの交渉になるため不利になる可能性が高くなる
【不動産買取による売却に向いている人】
- 現金化を急いでいる人
- タイムリミットがある人
- 売却自体に極力手間をかけたくない人
【不動産買取による売却に向いていない人】
- 極力高値で売却したい人
- 自分で買い手を選びたい人
- 条件の良い物件を所有している人
【通常の仲介では売れにくい物件の特徴】
- 築年数が経過している
- 交通の便が悪い
- 旧耐震基準で建築された物件
- 訳あり物件である
- 物件の状態があまりにも悪くリフォームが必須である
自分には不動産買取が向いているから実際に進めていきたいという人に向けて、以下の内容も解説しています。
- 不動産買取の流れ
- 不動産の種類別注意点
- 買取業者を選ぶ際のポイント
- 不動産買取に関するQ&A
最後までお読みいただいたことで、自分の不動産は「不動産買取」の方法で売却するべきなのかどうか判断することができ、具体的な売却イメージもつけることができたのではないでしょうか。
自分の納得のいく方法を選択し、最良の売却を実現させていきましょう。
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