「親から相続予定の土地があるけど、遠方に住んでいて管理できない」
「いらない土地は相続放棄できる?」
こんなお悩みをお持ちではないですか?
そのまま土地を相続すると、固定資産税の支払いや空き家のメンテナンス、草刈りなど、年間10万円以上の費用や手間が発生することもあります。そんなリスクがあるなら、相続を放棄したいと思いますよね。
結論からお伝えすると、不要な土地や不動産がある場合、相続の放棄は可能です。ただし相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産をプラスの財産・マイナスの財産含め一切相続しないことです。
相続放棄すると、預貯金や価値のある形見といった他の遺産も相続権を失うことになります。いらない土地だけを相続放棄する制度は存在しません。
また相続を放棄しても、次の相続人が管理を始めるまでは、管理義務が残ることが民法で定められています。
それでは不要な土地の相続権がある場合、どのように対処するのがベストなのでしょうか?
本記事では、以下について詳しく解説します。
- 相続放棄と管理義務について
- 相続放棄以外で土地を手放す方法
- 相続放棄を迷ったときの判断基準
- 相続放棄の進め方
この記事を読めば、自分が相続放棄するべきか判断でき、相続放棄の具体的な方法も分かります。
不要な土地を相続する可能性がある人はぜひ参考にしてみてくださいね。
1.土地の相続は放棄できる
土地や不動産の相続放棄は、家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをして認められれば可能です。
相続を放棄すればたとえ親の所有物でも、誰も住んでいない実家や農地、山林などに対して固定資産税を支払う義務はなくなります。
ただし、相続放棄の申し立てをする前に土地の名義変更や故人の預金を引き出して使用するなど、相続を承認したとみなされる行為をしてしまうと、相続放棄が認められません。
【相続とみなされる行為】
- 土地や建物の名義変更・売却・贈与をした
- 故人の預金口座を解約して、自分のために使用した
- 故人の預金を引き出し、債務返済に充てた
- 遺産分割協議に参加した
一度相続を承認したとみなされると、相続を撤回して放棄することはできないと民法で定められています。
“第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。”
仮に遺産の一部を処分してしまっても相続開始を知らなかった場合は、相続放棄が認められることもあります。しかし、相続放棄するつもりだったのに、該当の行為をしたために申述が受理されなかったケースは多いです。
相続放棄を検討している場合は、相続とみなされる行為をしないように注意しましょう。
2.ただし土地以外の遺産も放棄しなければならない
土地の相続は放棄できるとお伝えしましたが、相続放棄が認められた場合は、土地以外の遺産もすべて相続を放棄することになります。
そもそも「相続放棄」とは、被相続人(亡くなった人)の財産を一切相続しないことです。プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続権を失います。
つまり、土地の相続放棄は可能ですが、土地だけの相続放棄はできません。故人の預貯金や価値のある形見を受け取って、管理できない土地や借金といった不要な遺産のみ相続放棄することはできないのです。
3.相続を知ってから3ヶ月以内に申し立てが必要
相続放棄をする場合は、相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
「相続を知った日」とは、自分が第一順位の相続人の場合は「被相続人の死亡を知り得た日」、第二順位以降の相続人の場合は「先順位相続人が相続放棄した日」です。
法律の不知により相続を知らなかったという理由は認められません。例外については国税庁のHPの「相続の開始があったことを知った日」の意義をご参照ください。
その日から3ヶ月以内に申し立てがなければ、自動的に財産の相続を承認したものとみなされます。
仮に3ヶ月で財産の把握ができない場合や相続放棄するか結論が出ない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し出ることで、3ヶ月の期限延長が可能です。
申請なしに3ヶ月を超えてしまうと相続が成立し、相続放棄できなくなるので注意しましょう。
4.相続放棄しても土地の管理義務は残る
相続放棄すれば、土地の固定資産税を支払う必要はないと述べました。ただし、相続放棄が成立した時点ですぐに土地の管理義務が消えるわけではありません。
民法には以下のような条文があり、相続放棄後の管理義務についてルールが定められています。
“第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。”
自分が相続を放棄しても他の誰かが相続しない限り、土地の名義は被相続人(亡くなった人)のままです。
その状態で例えば、老朽化した空き家が倒壊して事故が起きたとしましょう。すると、すでに相続を放棄していても損害賠償請求を受ける可能性があり、トラブル対応をしなければなりません。
また、空き地に生えた雑草により近隣住民に迷惑をかけた場合、行政から指導を受けることも考えられます。
【管理義務により発生する可能性のある負担の例】
- 倒壊する恐れのある空き家の修復
- 空き地の雑草処理
- 不法投棄されたゴミの撤去
- 繁殖した害虫が近隣住民に危害を加えた場合の対応
- 放火による火災被害
- 近隣住民に迷惑が及んだ場合の損害賠償請求
管理義務は、次の土地管理者が決まり、管理を開始するまで続きます。
もし相続権のある兄弟や親戚の全員が相続放棄した場合、最終的には土地を国庫に帰属させるための手続きが必要です。しかし、この手続きにはかなりの時間と費用がかかります。
このように、相続放棄しても管理義務だけが長く残る可能性があるのです。そのため、まずは相続放棄以外の方法で土地を手放せないか検討してみることをおすすめします。
5.相続放棄できない土地の国庫帰属はハードルが高い
相続放棄以外の方法で土地を手放す方法として「国庫帰属」があります。これは土地の所有権を国に帰属させるものです。
国庫帰属の新たなルールとして、2021年4月28日に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)」が公布されました。
この国庫帰属制度は2023年4月27日より開始されます。しかし次の理由から、相続した土地の所有権を国庫に帰属させるにはハードルが高いです。
- クリアすべき要件が厳しい
- 申請時に手数料がかかる(土壌汚染調査が必要な場合は数十万円単位)
- 10年分の管理費用を一括で支払う必要がある(200m²の宅地で約80万円)
国庫帰属制度がスタートしても、相続した土地を国庫帰属で手放す方法はあまりおすすめできません。
条件を満たすのが難しく、まとまった費用も必要となるため、国庫帰属は土地を手放すための最終手段と考えておきましょう。
次章では、相続放棄と国庫帰属以外で土地を手放す手段を紹介します。土地を手放したいと考えている人は、しっかりとチェックして検討してみてくださいね。
6.「相続放棄」以外で土地を手放す方法
ここまでお読みいただき、土地の相続を放棄することで
- 土地以外の財産も放棄しなければならない
- 次の管理者が決まるまでは管理義務があり、管理費用を負担しなければならない
などマイナス面もあることが分かったはずです。
そこでここでは、相続放棄以外で土地を手放す方法として次の2つを紹介します。
- 相続した土地を売却する
- 相続した土地を寄付する(自治体・個人・法人)
不要な土地を売却や寄付で手放せれば相続を放棄する必要はないので、よく確認してみてくださいね。
6-1.相続した土地を売却する
いらない土地を手放す方法として、まずは売却を検討してみましょう。
相続放棄せずに土地を売却できれば、少なからず収入を得られ、固定資産税の支払いや管理義務もなくなるため一石二鳥です。ちなみに、建物が建っていない更地なら、比較的買い手が見つかりやすい傾向にあります。
売却の依頼は、売りたい土地の周辺にある不動産会社にすることをおすすめします。地元の情報に詳しく、買い手が見つかりやすいためです。
6-2.相続した土地を寄付する(自治体・個人・法人)
売却が難しい土地は寄付するという方法もあります。寄付先としては、自治体や個人、法人などが考えられます。
■自治体への寄付
「いらない土地は国や自治体に寄付すればいい」と聞いたことがあるかもしれません。しかし、先ほど土地を国庫に帰属させるのは難しいとお伝えしたように、地方自治体も土地の利用目的がなければ、寄付を受け付けてくれないのが現実です。
市町村にとって、土地の所有者から徴収する固定資産税は大きな収入源となります。そのため、使い道のない土地を引き取って、税収を減らすことはしたくないのです。
とはいえ、自治体によっては条件を満たせば無償で引き取ってくれる場合もあります。条件は自治体によって異なりますが、一例として新潟市の要件を紹介します。
【土地を寄付するための要件(新潟市)】
- 法定等に違反しないもの
- 行政の中立性、公平性等が確保できるもの
- 宗教的又は政治的団体からの寄附でないもの
- 将来に紛争や苦情が発生する恐れがないもの
- 将来に多額の維持管理費を要す恐れがないもの
- 市で管理することが不適当でないもの
- 新潟市公有財産規則第13条(注1)に規定する、取得前の措置が済んでいるもの
- 行政活用価値又は換価価値が見込まれるもの
- 農地にあっては、宅地への転用許可が受けられるもの
※寄附した土地を返還請求できる期間は、用途廃止した物件に限り寄附後20年以内です。
(国有財産法第28条第3号ただし書き(注2))
<寄付できない土地>
- 建物等が付属する土地
- 自治会・町内会が使用する土地・建物(ごみステーション・自治会館などは、地縁団体として自主管理すべきものであるため。)
【出典】土地の寄附について|新潟市役所
自治体への土地の寄付は、以下の手順で進められます。実際に寄付できるかどうかは、各自治体に相談して確認してみましょう。
【土地を自治体に寄付する手順】
- 自治体の担当窓口(総合窓口で確認)で寄付について相談する
- 担当部署による土地の調査が行われる
- 審査に通ったら必要書類を提出する
■個人への寄付
土地の近隣住民や知人など、土地を引き取ってくれそうな人がいれば、個人への寄付も可能です。
自分が相続したくない土地なので、土地を欲しがる人は少ないと思われます。それでも隣地の所有者なら、もともと所有している土地と合わせて有効活用しやすいメリットがあります。
近隣に土地を譲り受けたい人がいないか探してみましょう。
ただし個人に土地を寄付する場合、贈与税や印紙税、登録免許税などの費用が発生します。この費用をどちらが負担するかは、あらかじめ話し合って決めておくことが大切です。
■法人への寄付
自治体や個人の他に、法人への寄付も検討の余地があります。法人であれば、支店や保養所としての利用も考えられるため、現時点で周辺に社屋を持っていない企業でも引き取りを検討してくれる可能性もあります。
法人を持つ知り合いに声をかけたり、SNSで募集してみたりすると、興味を持つ人が現れるかもしれません。
ただし法人への寄付は、寄付先が営利法人か公益法人かによってかかる税金や手続きが異なるため、注意が必要です。営利法人に寄付すると、譲渡所得税がかかる場合があります。
一方、公益法人(社会福祉法人・学校法人・更生保護法人・NPO法人など)への寄付は、譲渡所得税などを非課税とする制度が設けられています。土地の寄付を受けるハードルが低いと考えられるため、公益法人を中心に当たってみるとよいでしょう。
7.「相続放棄」を迷ったときの判断基準
不要な土地を手放す方法は、相続放棄だけではないことを説明しました。そうなると、相続を放棄するべきか迷う人もいるでしょう。
ここでは相続放棄を迷ったときの判断基準として、次の4つを紹介します。
プラスの財産まで相続放棄して損をしたり、親族間のトラブルに発展したりしないために、よく確認して相続放棄を決めてくださいね。
7-1.売却できる見込みはあるか
まずは土地を売却できる見込みがあるかを確認しましょう。
売却できそうか確認する方法は、主に次の2つです。
- 不動産売買の物件検索サイトで相場や売却の状況を確認
- 売りたい土地周辺の不動産会社に相談
インターネットで検索し、売りたい土地と似た条件の土地が売り出されていたり、売却の事例が見つかったりする場合は、土地の需要があると考えられます。
また周辺地域に詳しい不動産会社に相談してみると、買い手が見つかる見込み・売却価格の相場・売却に要する期間の目安など、より具体的な情報が得られるでしょう。
もし土地を売却できる見込みがあるなら、相続放棄せずに他の遺産も受け継ぎ、不要な土地は売却するのが最善の対応である場合が多いです。
売却の進め方についてより詳しくは、土地の売却について書かれたこちらの記事をご確認ください。
7-2.寄付先が見つかりそうか
土地の売却が難しい場合は、寄付先の有無が相続放棄の判断基準となります。
「6-2.相続した土地を寄付する(自治体・個人・法人)」で紹介したように、自治体・個人・法人の寄付先が考えられます。次の3つの方法を試して、寄付先を探してみてください。
- 自治体の窓口に相談
- 近隣住民で土地が欲しい人がいないか聞いて回る
- 法人の寄付先を人づてやSNSで探す
土地の引き取り手が見つかった場合は、相続放棄せずに土地を寄付するのがおすすめです。
7-3.土地以外の遺産も手放して大丈夫か
土地の売却と寄付のどちらも難しい場合は、相続放棄が有力です。
ただし相続放棄すると、土地以外の預貯金や株券などのプラスの財産も相続できなくなります。引き続き土地の固定資産税や管理にかかる費用を負担するよりもプラスの財産が大きい場合は、相続を放棄すると損してしまうかもしれません。
遺産の中にどうしても手放したくない形見や別の不動産などがある場合は、相続放棄せずに不要な土地を手放す方法を考える必要があります。
他の遺産もしっかりと把握した上で、相続放棄を進めるか検討しましょう。
7-4.他の相続人との関係は問題ないか
プラスの財産を考慮しても相続放棄したい場合は、他の相続人との関係もクリアにしておきましょう。
仮に自分が相続を放棄しても、他の相続人は相続人のままです。自分が相続を放棄すると、土地の相続権は次の順位の法定相続人(親・兄弟姉妹・子など)に移ります。
しかし自分が相続放棄したときに相続権の移行について次の相続人に役所から連絡が入るわけではありません。
他の相続人にとって、プラスの相続分が増えるのは嬉しいですが、マイナスの財産の負担が突然降りかかるのは避けたいもの。黙って相続放棄をしてしまうと、親族トラブルにつながる可能性も否めません。
相続放棄を考えている場合は、兄弟や親戚といった他の相続人にも意思を伝えておくことをおすすめします。できれば親戚一同で話し合っておくのが賢明です。他の相続人との関係が問題ないことも確認した上で、相続放棄を進めましょう。
8.「相続放棄」の方法
売却や寄付を検討した上で相続放棄を決定しても、相続放棄の手続きや進め方はよく分からないですよね。
ここでは、相続放棄の流れや必要書類、費用について解説します。相続放棄の申し立ては相続を知ってから3ヶ月以内にしなければなりません。必要なタイミングでスムーズに行動できるように詳細を理解しておきましょう。
8-1.相続放棄の流れ
相続放棄を進める際の流れは次の通りです。
「相続放棄申述書」の記入例は、裁判所ウェブサイトの「書式の記入例」をご参照ください。また、管轄の家庭裁判所は「裁判所の管轄区域|裁判所ウェブサイト」から確認できます。
申述書を提出してから相続放棄の完了までの期間は、スムーズに進んで1ヶ月程度が目安です。
もし相続放棄の手続きについて不明点があれば、管轄の家庭裁判所に直接相談してみてください。記入方法などの簡単な内容であれば、回答をもらえる場合が多いです。
ただし、手続き関連以外の相談は、家庭裁判所では受け付けていません。相続放棄を迷っている場合や相続人と揉めている場合は、専門の弁護士に相談しましょう。
8-2.相続放棄の必要書類
相続放棄の申述に必要な書類とは次の通りです。
ただし、被相続人と申述人の続柄によっては、追加の戸籍謄本が必要になります。詳しくは「相続の放棄の申述|裁判所ウェブサイト」でご確認ください。
相続放棄申述書は「相続の放棄の申述書|裁判所ウェブサイト」からダウンロードできます。
8-3.相続放棄の費用
相続放棄の申述に必要な費用は以下の通りです。
- 収入印紙代:申述人1人につき800円
- 郵便切手代:数百円から1,000円程度(家庭裁判所によって異なる)
- 戸籍謄本等の交付手数料:戸籍謄本1通につき450円・除籍謄本1通につき750円(自治体によって異なる場合もある)
費用は家庭裁判所や必要な戸籍謄本の枚数などによって異なりますが、トータルで5,000円程度かかると考えておきましょう。
9.まとめ
不要な土地の相続を放棄したい場合、家庭裁判所に申し立てをして認められれば相続放棄が可能です。しかし相続放棄をすると、土地だけでなく、その他の遺産もすべて相続を放棄することになります。
つまり、いらない土地だけを相続放棄することはできません。
また相続放棄しても、次の管理者が決まり管理を始めるまでは、引き続き土地の管理義務が残ります。その間に老朽化した空き家倒壊などにより問題が発生した場合は、損害賠償請求される可能性もあります。
このように、相続放棄すれば面倒なことが全て解決するわけではありません。不要な土地を手放す方法には、相続放棄以外に売却や寄付などもあります。安易に相続放棄を決める前に、不動産会社に売却を相談したり、寄付先を探したりと、他の可能性を探ってみましょう。
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