「家を売るときに買主へ売却の理由をどう伝えたら良い?」
「売却理由には説明義務があるって本当?」
こんな疑問をお持ちの方は、ぜひ本記事をお読みください。
マンション売却にはどんな理由があるのかが把握できるだけでなく、自分が売主側に立った時に買主にどのように売却理由を説明するべきか、実践的な内容もお伝えします。
ぜひ最後までお読みください。
1.マンションを売却した理由ランキングTOP7
まずはマンションを売却した理由ランキングTOP7を紹介します。
- 住み替え
- 売り時だと判断した
- 転勤や転職
- パートナーとの離婚
- 相続関連
- 金銭的な理由
- その他
順に紹介します。
※本章で紹介するデータは、不動産を売却した売主様に向けたアンケート調査を実施した「イクラ不動産」を参考としています。
1-1.第1位:住み替え
マンションを売却した理由の第1位は、住み替えです。
生活スタイルと家族構成の変化から、生活環境と便利な立地を求めて住み替えるために、マンションを売却した方が多いようです。
1-2.第2位:売り時だと判断した
マンションを売却した理由の第2位は、売り時だと判断し売却したようです。
景気や不動産市場が変動し、「購入した時よりも価格が上昇している」「値下がりが続いてしまっている」といった背景から、売り時を検討し売却した人が多いようです。
1-3.第3位:転勤や転職
マンションを売却した理由の第3位は、転勤や転職です。
マンションは不動産の中でも流動性が高く、戸建て・土地と比べると転職や転勤で売却するという方が多いようです。
1-4.第4位:パートナーとの離婚・別居
マンションを売却した理由の第4位は、パートナーとの離婚や別居です。
マンション購入のきっかけとしても多いのが結婚や出産といったライフステージの変化。同様に、パートナーとの離婚や別居が理由で所有マンションを手放すことになる人も多いようです。
1-5.第5位:相続関連
マンションを売却した理由の第5位は、相続関連です。
近年では、「相続した実家がマンションだった」という事例が増えているため、管理費用や管理の手間を考えて、賃貸に出すもしくは売却するというケースが多いようです。
1-6.第6位:金銭的な理由
マンションを売却した理由の第6位は、金銭的な理由です。
環境の変化はもちろん不測の事態に見舞われ、資金繰りが難しくなってしまうケースなどです。住宅ローンの返済に追われたり、手持ち資金が必要となり資産であるマンションを手放す場合があるようです。
1-7.第7位:その他
マンションを売却した理由の第7位は、その他(投資)です。
2.マンションの売却理由には説明しなくてはならないものがある
マンションの売却理由には、説明義務を負うものがあります。
これを説明せずに後から発覚し問題となった場合、売主は「契約不適合責任」があるため、以下の内容を請求されることがあります。
- 追完請求(修理・代替物の請求)
- 代金減額請求
- 損害賠償請求
- 契約解除請求
このように請求をされたり、契約自体が解除されたりすることもあるので注意が必要です。
では、契約不適合責任と説明義務のある瑕疵について詳しく解説していきます。
2-1.契約不適合責任とは
瑕疵(かし)とは、傷や欠点という意味の言葉で、建物の場合は建物の傷や不具合、欠陥を指しますが、不動産売却における瑕疵は物理的な傷や不具合だけではなく、そこに住むことで不安や嫌悪感を抱くような目に見えない欠陥も含まれています。
物件を売却する際に、物件の状態や居住条件などが伝えられ、買主がその条件に納得すれば売買契約が成立しますが、売却後に契約時には伝えられていなかった瑕疵が見つかった場合、売主は責任を負う必要があり、この責任を「契約不適合責任」と言います。
契約不適合責任は売主が個人の場合は1〜3ヶ月ほどの期間で設定されることが多く、この期間の取り決めは契約時に必ず説明されます。
では次から、マンション売却に関係する瑕疵の種類について見ていきましょう。
2-2.心理的瑕疵
心理的瑕疵は、買主に嫌悪感などの心理的な抵抗を生じさせる欠陥のことを指します。
前述した目に見えない欠陥に当てはまりますが、心理的瑕疵は感じ方に個人差があるため、多くの場合は明確な基準がないのが現状です。
6-2-1.人の死に関わる瑕疵
心理的瑕疵として、いわゆる「事故物件」については一定の基準が設けられています。
自殺・殺人・事故死など人の死に関わる事項については説明義務があるため、必ず買主に伝えなければなりません。
しかし、国土交通省が令和3年10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、不動産の売買取引では、以下のような場合には告知しなくてもいいとされています。
- 取引の対象不動産で発生した自然死、誤嚥や転倒などによる日常生活の中での不慮の死(事案発覚からの経過期間の定めなし)
- 取引の対象不動産の隣接住戸や、日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した1以外の死、または特殊清掃等が行われた1の死(事案発覚からの経過期間の定めなし)
つまり、マンションに一人暮らしをしていた親族が孤独死をし、そのマンションを相続したので売却する場合などは、告知義務のある心理的瑕疵には当てはまらないということです。
ただし、2については事件性、周知性、社会に与えた影響等が高い場合においては心理的瑕疵となることもあります。
また、人が亡くなったかどうかを買主から問われた場合には、1や2に該当する場合でも事実を告げなければいけません。
2-2-2.その他の心理的瑕疵
人の死に関わる心理的瑕疵は、判断基準を設けるためにガイドラインが策定されましたが、その他の心理的瑕疵には明確な基準がありません。
心理的瑕疵に当てはまるとされているのは、以下のような事案です。
- 周辺に暴力団事務所や反社会組織の拠点がある
- 周辺に墓地・葬儀場・火葬場がある
- 周辺に騒音や悪臭を発生させる嫌悪施設がある
- 長期間、性風俗特殊営業に使用されていた
- 隣接住戸や近隣住民から迷惑行為を受けている
嫌悪施設として小学校や保育所が当てはまることもありますし、人の主観に左右されるためかなり個人差が大きいのが心理的瑕疵の特徴です。
当てはまるかどうかの判断が難しい場合には、必ず不動産会社に相談するようにしましょう。
2-3.環境的瑕疵
環境的瑕疵は、物件自体には問題がなくても物件を取り巻く環境が要因となり、買主が嫌悪感や不快感を感じる欠陥のことです。
環境的瑕疵は心理的瑕疵と似ている部分が多く、心理的瑕疵として扱われる場合もあります。
例えば、以下のようなものは環境的瑕疵に含まれます。
- 周辺に嫌悪施設がある
- 鉄道や高速道路が近くを通っており、騒音や振動がある
- 工場や飲食店など異臭を発生させる施設がある
- 近隣にゴミ屋敷がある
周辺環境により快適な生活を送ることが困難になる恐れがある場合は環境的瑕疵に当てはまります。
嫌悪施設とは、墓地や工場や風俗営業など、心理的瑕疵で解説したようなものと同じです。
心理的瑕疵と同様に買主の感じ方に大きく左右されるため、環境的瑕疵も判断が難しい欠陥と言えます。
こちらも、判断に迷ったら不動産会社に告知すべきかを相談した方がいいでしょう。
2-4.物理的瑕疵
物理的瑕疵は、その名の通り建物や土地そのものの物理的な欠陥を指します。
マンションの場合は、以下のように土地ではなく建物の物理的瑕疵が当てはまります。
- 雨漏りや水漏れ箇所がある
- 給排水設備に故障がある
- 壁にひび割れの箇所がある
- アスベストが建材に使用されている
- シロアリの被害がある
- 耐震強度が不足している
- 水害などによる床下浸水
- 構造物の破損
物理的瑕疵の中には、雨漏りなど説明されなければ住み始めるまで気づかない「隠れた瑕疵」も多く、これらを説明して納得してもらってから売買契約を結ばなければ、後から修繕費用を請求されたり、契約が解除となったりする恐れがあります。
ただし、物理的瑕疵は築年数も考慮されることがあり、築古マンションの場合は必ずしも告知が必要というわけではありません。
実際に、築38年を超えるマンションで雨漏りがあり買主が賠償請求をしたところ、「築38年のマンションが通常有する程度のもの」として棄却された事例もあります。
築古マンションの場合には、あらかじめ売主が責任を負わない契約にできないか、不動産会社に相談してみましょう。
3.ネガティブに捉えられるマンションの売却理由の伝え方
前述したランキングでもあるように、売却理由によってはネガティブな印象を与えてしまうものもあります。そうした場合は、どのように伝えればよいのでしょうか。ネガティブな売却理由として、代表的なものは以下のとおりです。
- 離婚
- ローンの返済が困難
- 近隣トラブル
- 立地が不便
- 家の間取りへの不満
これらの理由を伝える際に、悪印象を与えない上手な伝え方を紹介していきます。
3-1.売却理由①離婚
離婚が理由である場合、そのまま理由を伝えると以下のようなことが懸念されます。
- 離婚した人が住んでいたマンションは縁起が悪いと思われる
- 財産分与のために早く売りたいはずだからと足元を見られる
例えば、マンションの購入希望者が新婚夫婦だったとすると、なんとなく「離婚」というワードは縁起が悪い気がしてしまう可能性があります。
また、離婚に伴いマンションを売却する場合、離婚問題を片付けるために早く売却したいと思う人が多いと思いますが、買主がそれに気付けば足元を見られて値引き交渉をされるかもしれません。
しかし、離婚という理由は物件自体に問題があって売却するわけではないということが説明できる理由でもあります。
そのため「離婚」という直接的なワードを使わずに伝えるのがおすすめです。
- 離れて暮らすことになったから
- 家族構成が変わったから
上記のような伝え方にするのが良いでしょう。
3-2.売却理由②ローンの返済が困難
ローンの返済が困難でマンションを売る場合、金銭的な事情まで詳しく説明する必要はありません。
また、離婚などの理由のように「物件に問題がない」ということを表せる理由ではありますが、マンションを売ってもローンの完済が難しい場合は「任意売却」をおこなう必要があります。
任意売却とは、住宅ローンの残高が物件の価値を上回る、オーバーローン状態のときに、債権者である金融機関へ事前に相談し、特別に抵当権を解除することを承諾してもらったうえで物件を売却する手続きのことです。
任意売却は一定期間内に売れなければ競売となってしまいます。
任意売却であることを伝えれば、売却期限があることで足元を見られて買主の交渉力が強まってしまう可能性が高いため、ぼかした伝え方がおすすめです。
- 住み替えるから
- 経済的な理由で
3-3.売却理由③近隣トラブル
近隣トラブルと言っても、近隣に迷惑行為を働くような人がいる場合は「心理的瑕疵」に当てはまるため、説明義務が発生します。
しかし、個人的な問題で近隣の住民と揉めただけであれば、わざわざそれを伝える必要はありません。
「隣人と合わなかった」とやんわり伝えてもいいですが、「お隣さんが変な人だったらどうしよう……」という不安を持たれる可能性があります。
住み替えるから、などと伝えた方が無難でしょう。
3-4.売却理由④立地が不便
「駅までが遠い」「近くにスーパーやコンビニがなくて不便」など、マンションの立地に不便を感じて引っ越す場合、言い方を工夫する必要があります。
自分にとっては不便と感じても、買主にとっては逆にメリットだったりするケースもあるので、客観的にマンションの立地を捉えて伝えることが大切です。駅から離れている場合には、静かさを求める人や、テレワークで駅の利用頻度が少ない人には大きなデメリットにならないこともあります。
しかしこれでは売却理由にはならないため、売却理由を聞かれたら下記のように理由づけすると良いでしょう。
- 会社の近くに引っ越すから
- 住み替えるから
3-5.売却理由⑤家の間取りへの不満
家の間取りに不満があって引っ越す場合は、あくまで家族構成や自身のライフスタイルに合わないという個別の事情に過ぎないので、わざわざ間取りの不満を伝える必要はありません。
間取りの不満が売却理由だと聞けば、「使いにくい家なんだ」という印象を持たれてしまいます。
売却理由を聞かれたら、手狭になったから住み替えるなどと伝えるのが無難でしょう。
4.マンションの売却理由を伝える際のポイント
前述したとおり、ネガティブな売却理由をストレートに伝えると、相手に悪印象を与えたり、足元を見られて交渉が買主に有利な流れになったりする可能性があります。
ただし、すべてを嘘の理由で説明するのはやめましょう。あくまで表現を変えて伝えるのがよいでしょう。例えば、離婚なら「離れて暮らすから」「家族構成が変わったから」といったように理由をぼかして遠回しに説明することをおすすめします。
また、ぼかすのも難しい場合は引っ越し先の条件などを考えてみましょう。
- 現在よりも職場に近い場所
- 子供がより通学しやすい場所
- 子育てに力を入れている地域
- 親の家の近く
上記を引っ越す理由として伝えるとよいでしょう。
5.マンションの売却理由やネガティブなポイントを伝える3つの手順
マンションの売却理由やネガティブなポイントの伝え方を考える場合に、大切なのは不動産会社に相談することです。
不動産会社ならプロなので、どの程度であればしっかりと伝えるべきかの判断をしてくれます。
伝え方を考える手順は以下のとおりです。
- 伝えにくい売却理由や問題となりそうなことをピックアップ
- 不動産会社と売却理由の説明を考える
- 内覧時に聞かれたら考えたとおりに答える
各手順について、ひとつひとつ紹介していきます。
5-1.伝えにくい売却理由や問題点をピックアップする
不動産会社と話す前に、売却理由や内覧時に説明するとマイナスになりそうなポイントをピックアップしておきます。
マイナスになりそうなポイントとは、下記が挙げられます。
- 上階の人の足音がうるさい
- 方角的に日が入りにくい
- マンション周辺は街灯が少なく暗い
住んでいて不満に思うことを一覧にして書き出しましょう。
5-2.不動産会社と売却理由の説明を考える
不動産会社には、売却理由を隠す必要はありません。
瑕疵があれば隠すのは問題となりますし、瑕疵にならないネガティブな売却理由の場合は理由が影響して査定額が下がるということもありません。
むしろ正直にすべて伝えることで、不動産会社の担当者に伝え方の案を出してもらえることもあります。
瑕疵に当てはまるのか微妙なラインの場合も、不動産会社に判断を仰ぎましょう。
5-3.内覧時に聞かれたら考えたとおりに答える
内覧時に売却理由を聞かれたら、考えていたとおりに答えましょう。
売却理由以外のネガティブなポイントを話すのであれば、先に伝えてしまうのがおすすめです。
最後の印象が強く残る「親近効果」という心理効果があるため、良くないポイントを先に伝えてからアピールポイントを伝えた方が、いい印象を持ってもらえる可能性が増えます。
6.マンションを売却する際に「売却理由」が重要になるわけ
マンションを売却する際、内覧などで売却理由を聞かれることがありますが、この売却理由が買主のマンションに対する印象を左右することもあります。
売却理由の重要性を理解していないと、買主に悪印象を持たれるような伝え方をしてしまい、売却できないという事態になりかねません。
まず、「なぜ売却理由が重要視されるのか」についてですが、下記の理由が挙げられます。
- 購入する側は「何か問題があるのでは」と考えるから
- 特に築浅マンションの売却理由が重要になる
説明していきます。
6-1.購入する側は「何か問題があるのでは」と考えるから
中古と言えど、マンションの購入は人生においてそう何度もあることがない大きな買い物です。
その分、買主も購入に失敗はできないと考えているため、少しでも多くの判断材料が欲しいことからマンションを売却する理由を聞いてくることがあります。
まだ住めるマンションを売却する理由として、下記のようなネガティブな理由があるのではと心配するからです。
- マンション自体に何か問題があるのではないか
- 騒音など生活に支障をきたす問題があるのではないか
また、ネガティブな理由や早期売却が望ましい理由であれば、価格の交渉をしたいと考える買主もいるでしょう。
重要なのは、売却理由を聞かれた場合の答えを事前に用意しておくことです。
ネガティブな理由であっても、事前に悪印象を持たれにくい伝え方を考えておけば焦ることなく伝えることができます。
6-2.特に築浅マンションの場合は売却理由が重要になる
築浅のマンションで、明らかに購入して数年で売却しようとしていることがわかる場合、より売却理由は重要になります。
例えば、築3年のマンションが売りに出されていたら「せっかく購入したマンションをなぜそんな短期間で売りに出すのか」と多くの人が疑問を持つでしょう。
そして「マンションに問題があるのでは?」と感じるはずです。
築浅マンションの売却であっても、下記の通り必ずしもマンション自体に問題があって売却するわけではないことが多いのです。
- 転勤
- 離婚
- 住宅ローンの返済が厳しい
しかし、築年数が経過しているマンションよりも売却理由を聞かれる可能性が高くなるため、聞かれた場合に備えてどう答えるかを準備しておきましょう。
7.まとめ
マンションの売却理由には、大きく分けて説明義務が伴うものとそうでないものの2種類があります。
売主はマンションを売却する際に「契約不適合責任」という責任を負うため、伝えなければいけない売却理由を隠した場合、以下のような状況に陥ってしまう可能性があります。
- 追完請求(修理・代替物の請求)
- 代金減額請求
- 損害賠償請求
- 契約解除請求
しかし、瑕疵と感じるかどうかは個人差が大きく、基準がまだ詳しく決められていないものも多いため、判断に困った場合は不動産会社に相談しましょう。
瑕疵がなくてもネガティブで伝えづらい売却理由の場合、正直に伝える必要はありません。
だからといって安易に嘘をついてしまうと質問を返された時に困ってしまう可能性があるため、無難に「住み替え」などを理由として答えておくのがおすすめです。
マンション売却においては信頼できる不動産会社を味方につけられるかどうかが重要です。
不動産売却におすすめの会社について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。