物件購入時の媒介契約書とは?チェックすべきポイント、トラブル回避法を解説

中古マンションを買う時、最初に交わす「媒介契約書」の重要性をご存じでしょうか。

「仲介会社が用意した書類だから」「国の様式に沿っているらしいから」——そう考えて、内容を確認しないままサインしてしまう人も少なくありません。

ところが媒介契約書には、仲介会社の義務だけでなく、買主自身が負う義務もはっきりと書かれています。他社に重ねて依頼する時の通知義務、直接取引の禁止、費用の負担などです。知らずに違反すれば、後から仲介手数料や違約金を請求されることもあります。

ここでは、国土交通省の資料をもとに、媒介契約の基礎知識から、3つの契約の違い、買主がチェックすべきポイントを解説します。よくあるトラブルと防止対策も紹介しますので参考にしてください。

執筆者プロフィール
遠藤 秋乃
行政書士/司法書士/宅地建物取引主任士

大学卒業後、メガバンクの融資部門での勤務2年を経て不動産会社へ転職。転職後、2015年~2016年にかけて、司法書士試験・行政書士試験に合格。知識を活かして相続準備に悩む顧客の相談に200件以上対応し、2017年に退社後フリーライターへ転身。

本記事の内容は2026年9月18日時点の情報に基づいており、不動産市場の状況や関連法規、税制などは将来変更される可能性があります。最新の情報については、公式の情報源をご確認ください。

目次

物件購入時に知るべき媒介契約書とは

媒介契約書とは、宅地建物取引業者(以下、仲介会社)に買いたい物件や買主を探してもらうよう依頼する時に交わす契約書です。

宅地建物取引業法第34条の2では、宅建業者は売買・交換の媒介契約を締結する際には、すぐに必要事項を記載した書面を作成し、署名・押印のうえ、依頼者に交付しなければならないと定められています。つまり、媒介契約書は、法律で交付が義務付けられた書面であり、条文番号から「34条書面」と呼ばれる場合もあります。

参考:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ

媒介契約は3種類

媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。それぞれの違いは、他社に重ねて依頼できるか、自分で見つけた相手と直接契約できるかなどといった点です。契約の種類は、依頼者の判断で選択できます。

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種類他社への重複依頼自己発見取引有効期間
一般媒介契約できるできる法律上の制限なし(標準約款では3カ月以内)
専任媒介契約できないできる3カ月以内
専属専任媒介契約できないできない(必ず業者を通す)3カ月以内

専任媒介契約・専属専任媒介契約は、他社への重複依頼ができない代わりに、宅建業者側に重い義務が課されます。

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なお、有効期間の上限3カ月も、専任・専属専任について宅建業法によって定められたルールです。したがって、これを超える期間が契約文中に定められていても、法律上の有効期間は3カ月になります。

買主の場合は「一般媒介契約」が多い

物件を探している買主の場合、一般媒介契約を締結するのが普通です。依頼先が1社に限定されないので、他社が扱う物件情報にアクセスしやすいという理由が大きいでしょう。

また、仲介会社や担当者によって対応に違いがあるので、契約前に比較しておいた方が良いことも理由の1つです。

物件情報の多くは不動産業者間の情報ネットワークである「レインズ(指定流通機構)」を通じて共有されていますが、どの物件をどう見極め、どう交渉するかは会社や担当者によって違いがあります。特に物件調査の深さや、管理状況、修繕積立金の読み解きなど、住宅ローンの提案力は、担当者個人の知識と誠実さによるところが大きいものです。

媒介契約書で買主がチェックすべきポイント

中古マンションなどの購入で仲介会社に依頼する際の媒介契約書は、国土交通省の標準媒介契約約款に準ずる書式で作成されるのが一般的です。もっとも「国の様式を使っているから安心」という訳ではありません。契約書には、仲介会社と買主それぞれが守るべき条件や義務が定められています。契約書の内容はしっかりチェックするようにしましょう。

媒介契約書に記載されているのは以下の項目です。

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確認項目見るべきポイント
標準媒介契約約款に基づくか否かの別国土交通大臣が定めたひな型に基づくか(基づかない」場合は理由を確認)
媒介契約の種類一般・専任・専属専任の別(買主は一般媒介が基本)
目的物件の表示物件の種類・所在地・規模・価格帯などの希望条件が正確に反映されているか
不動産会社の義務と業務提供される業務の具体的な内容(追記・調整も可能)
有効期間と更新期間の長さ、更新方法(自動更新は不可、依頼者からの申出が必要)
媒介価額(購入希望価額)購入希望価額、業者の意見には根拠が明示されているか
仲介手数料(報酬)金額または算定方法、支払い時期、上限の範囲内か
依頼者の義務通知義務、直接取引の禁止、費用負担などが明記されているか
媒介契約の解除解除できる事由と手続き、費用償還の条件
反社会的勢力の排除双方の確約事項、違反時の無催告解除・違約金
建物状況調査を実施する者のあっせんあっせんの有無(中古では特に重要)

これらの記載項目のなかでも、以下の5項目は特に重要です。

  • 媒介契約の種類、有効期間と更新
  • 仲介手数料(報酬)
  • 目的物件の表示、媒介価額
  • 建物状況調査(インスペクション)のあっせんに関する事項
  • 依頼者(買主)の義務

媒介契約の種類、有効期間と更新

媒介契約書で最初にチェックしたいのは、契約の種類です。

よくあるのは、買主は一般媒介契約を希望しているにも関わらず、2社目以降の媒介契約ができない「専任媒介契約」の締結を求められ、書面を作成されるケースです。書面に専任媒介契約と書いてある場合は、合意する前に「なぜ専任なのか」「専任にすることで買主にどんなメリットがあるのか」を確認した方がいいでしょう。

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あわせて、有効期間と解除に関する事項も確認しておきましょう。両項目とも、宅建業法で書面への記載が義務づけられており、通常は媒介契約書を見れば判断できます。契約期間が自動更新になっていないか、途中で解約したい場合にどのような手続きや費用が発生するのかを、契約前に把握しておきましょう。

仲介手数料(報酬)

買主にとって影響が大きいのは、仲介手数料(報酬)に関する事項です。報酬の金額や支払い時期は、必ず確認しておきましょう。

報酬についてチェックしたいのは、次の3点です。

  • 記載された報酬額(または算定方法)
  • 支払いのタイミング
  • 媒介報酬以外の名目で費用が請求されていないか

記載された報酬額(または算定方法)

仲介手数料の上限額は売買代金によって異なりますが、いずれも法律で定められています。具体的な上限額は、以下のとおりです。

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売買代金(消費税抜き)報酬額の上限(一方の依頼者から)
200万円以下の部分売買代金×5%+消費税
200万円超400万円以下の部分売買代金×4%+消費税
400万円を超える部分売買代金×3%+消費税
※400万円超の物件の速算式(売買代金×3%+6万円)+消費税

なお「低廉な空家等」にあてはまる物件の仲介は、仲介手数料の定めが別に設けられています。これは、2024年7月1日施行の報酬告示改正(令和6年国土交通省告示第949号)で拡充されました。

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現在は売買代金800万円以下の宅地・建物については、通常の計算式ではなく、売主・買主それぞれから30万円+消費税(税込33万円)を上限として報酬を受領できるとされています。ただし、依頼者から合意を得ることが条件です。

支払いのタイミング

支払いのタイミングは、契約時に半額、決済時に残りの半額とするのが一般的です。契約書に記載されたタイミングを、確認しておきましょう。

媒介報酬以外の名目で費用が請求されていないか

媒介報酬外の費用については、法律上、原則として媒介報酬以外の金銭を受け取ることは認められていません。ただし、依頼者の依頼に基づく特別な広告費用や、媒介業務とは別に契約した関連業務の対価は例外となる場合があります。費用の中に「調査費」「事務手数料」があれば、その根拠を必ず確認しましょう。

目的物件の表示、媒介価額

媒介契約書には、依頼する物件の種類・所在地・規模・購入価格帯などを「希望する条件」として記載する欄があります。

ここに「東京23区・中古マンション」など、エリアや物件種別程度の情報しか記載されていないのなら注意が必要です。予算や築年数、広さといった具体的な条件が書かれていないと、実際の物件探しをする際に、希望に合わない物件ばかり紹介されかねません。

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築年数、管理形態、耐震基準、住宅ローン控除の適用可否、将来の住み替えを見据えた資産性など、買主の立場になれば、希望はたくさん出てくるはずです。契約書に自分の希望している条件が反映されているかを確認し、違和感があればその場で修正を求めましょう。

建物状況調査(インスペクション)のあっせんに関する事項

建物状況調査(インスペクション)とは、専門の資格者が建物の状態を調査する制度です。建物の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分の状況を、国土交通省令で定める資格者が確認します。新築と違い、中古マンションには経年による劣化や、目に見えない不具合が潜んでいる可能性があります。この調査は、購入前にリスクを把握するために欠かせません。

媒介契約書には「あっせんする/あっせんしない」の欄があります。2018年4月施行の改正宅建業法によって、既存建物が対象の場合には媒介契約書に「あっせんに関する事項」を記載することが義務づけられました。

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建物状況調査を「あっせんしない」とすること自体は、法律違反ではありませんが、理由が明確でない場合は、仲介会社に確認しておきましょう。あっせんしない理由として多いのは「買主が希望しない」「所有者の同意が得られない」「すでに調査が実施されている」などです。

依頼者(買主)の義務

媒介契約書には、仲介会社の義務だけでなく、依頼者(買主)側が負う義務も定められています。ここを理解せずにサインすると、後から違約金や報酬を請求されることがあります。標準一般媒介契約約款をもとに、買主が知っておくべき4つの義務を整理します。

他社に重ねて依頼する時の通知義務

一般媒介契約には「明示型」と「非明示型」があります。明示型の場合、有効期間内に他の宅建業者に重ねて媒介・代理を依頼したいなら、その旨を通知しなければなりません。この通知を怠った場合、業者は依頼者に対し、媒介に要した費用の償還を請求できます。

自ら発見した相手方と契約した時などの通知義務

有効期間内に、自分で見つけた売主と直接契約を結んだ時、あるいは他社の媒介で契約を成立させた時は、遅滞なくその旨を仲介会社に通知する義務があります。契約したことばかりに注意が向いて、他に媒介をお願いしていた仲介会社への通知を怠ると、仲介手数料相当の違約金を請求される可能性があります。

直接取引の禁止(専属専任媒介契約の場合)

専属専任媒介契約では、売主と買主が直接取引することが禁じられます。違反した場合はペナルティを科す旨の記載があります。契約終了後に、紹介を受けた物件を後から直接買う、あるいは別の会社を通して買うといった行為は、禁止事項に該当します。

費用の負担

通常、媒介業務に必要な費用は報酬に含まれます。依頼者が特別に依頼した広告や、遠隔地への出張など特別費用については、依頼者の負担となる場合があります。

国土交通省が定めた契約書のひな形である標準約款では、依頼者の落ち度によって契約が解除された場合には、仲介会社が媒介に要した費用の償還を請求できる旨も定められています。

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こうした費用の扱いは契約解除時などにトラブルの原因になりやすいため「何が報酬に含まれ、何が別途負担になるのか」を、契約時に線引きしておきましょう。

参考:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
参考:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方
参考:国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款

媒介契約でよくあるトラブルと対策

媒介契約をめぐるトラブルの多くは契約前のわずかな確認で防げます。「契約したつもりがなかった」「聞いていた話と違った」とならないよう、買主が実際に巻き込まれやすい3つのケースと、その対策を整理します。

「いつの間にか契約していた」など契約をめぐる認識のずれ

もっとも多いトラブルの原因は、媒介契約は書面がなければ成立しないという思い込みです。この認識のずれが原因で、「内見しただけなのに、いつの間にか媒介契約を締結したことになっていて、契約違反でトラブルになった」というケースが実際に起きています。

媒介契約は書面を交わしていなくても、口頭やメール・チャットのやり取りで「この物件の購入をお願いします」と依頼し、業者が引き受けたことになるのです。

ちなみに、宅建業法第34条の2では「成立した媒介契約について、宅建業者が遅滞なく書面を作成・交付しなければならない」という義務が定められています。書面が契約の成立要件になっている訳ではありません。

こうしたトラブルを防ぐには、次の2点がポイントになります。

  • 相談段階と媒介契約後、それぞれで対応してもらえる範囲を最初に聞いておく
  • 契約に進む前に、媒介契約書のドラフト(下書き)を見せてもらう

仲介手数料をめぐる「聞いていない請求」

次に多いのが、仲介手数料(報酬)に関するトラブルです。よくあるのは、契約時に説明されていない費用を請求されたり、仲介手数料が実質的に交渉なしで決められてしまったりするケースです。

すでに触れたとおり、宅建業法に基づく告示が定めているのは仲介手数料の上限であり、固定額ではありません。また、仲介会社が受け取れるのは原則として媒介報酬のみで、それ以外の名目で金銭を受領することは認められていません(依頼者の依頼に基づく特別な広告費用など、限られた例外を除きます)。

トラブル回避のためにできるのは、媒介契約書の報酬欄を締結時に必ず読み合わせることです。特に、以下の項目については、口頭でも確認しておきましょう。

  • 報酬の総額(または算定式)と消費税の扱い
  • 支払いのタイミングと分割の有無
  • 報酬以外に請求される可能性のある費用の有無と、その根拠

トラブルになりやすいのが、「低廉な空家等の媒介の特例」です。2024年7月から、売買代金800万円以下の物件では、仲介会社は買主からも税込33万円を上限に報酬を受領できるようになりました。

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ただしこの特例を適用する場合、業者は媒介契約の締結に際してあらかじめ報酬額を説明し、依頼者の合意を得る必要があるとされています。事後に持ち出された場合は、その旨を指摘できます。

媒介契約の解除・乗り換えでもめる

「担当者と合わない」「一向に希望に合う物件が出てこない」などの理由で途中で仲介会社を変えたくなることは、珍しくありません。この時、解除の条件を巡って仲介会社と意見が折り合わないトラブルが起きることがあります。

一般媒介契約であれば他社への依頼は自由なので比較的スムーズですが、専任媒介・専属専任媒介を締結していた場合は注意が必要です。

国土交通省が定めた契約書のひな形である標準約款では、依頼者が契約に違反して他社に依頼した場合などには、業者がそれまでに要した費用の償還を請求できる旨が定められています。これは、有効期間内に契約を一方的に解除すると、費用請求の根拠を与えてしまう可能性があるということです。

こうしたトラブルは「よく分からないまま、勧められるままに契約した」場合に起こりがちです。媒介契約や物件紹介の際には、あらためて下記のようなポイントを意識すると良いでしょう。

  • 契約時に有効期間と自動更新の有無
  • 解除の手続き(申出方法、書面の要否、費用償還の条件)
  • どの仲介会社から、どの物件の紹介を受けたか(日付とあわせて記録)

まとめ

中古マンション探しを始めると、売買契約書など最終段階の書面が気になるものです。しかし、実際に買主を守るのも、思わぬ負担を生むのも、その手前で交わす媒介契約書です。書面が交付された時は、以下の点にしっかりと注意を払いましょう。

  • どの段階で媒介契約が成立するのか(どこまで相談段階でやってくれるのか)
  • 媒介契約の種類、有効期間と更新
  • 仲介手数料(報酬)に関すること
  • 希望する条件(目的物件の表示、媒介価額)
  • 依頼者の義務(他社との契約を制限する内容など)

もっとも「これらをすべて頭に入れてからでないと安心して買えない」となると、どうしても身構えてしまうものです。中古マンションの購入は、物件そのものの見極め、住宅ローン、税制上の特例、管理状況の読み解き、将来の住み替えまで、幅広い知識を要する取引です。経験を積んだプロに相談することも考えてみてください。

特に媒介契約書の一文一文について「これはどういう意味ですか」と聞いた時、その場で正確に答えられる担当者に出会えることは、良い物件とめぐり会う1つの目安になります。

スムナラでは、媒介契約に入る前の段階から、買主が負う義務や手数料の考え方を、包み隠さずご説明します。あわせて、マンションの管理状況や修繕積立金の積立状況といった「建物全体の健康寿命」を読み解くノウハウ、住宅ローンや税制上の特例を踏まえた資金計画のご提案も得意としています。

契約書の文言でわからないところがある、進めている話が適切なのか不安がある——そうした段階でのご相談も大歓迎です。中古マンション選びで後悔したくない方は、ぜひお気軽にスムナラにお問い合わせください。

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